2019年9月29日日曜日

近況0929:色々

今学期は想像以上に忙しい。コースワークの他に、TA、TAトレーニング(全大学院博士課程の院生が3年生までに必修の教授法に関するトレーニング)等々がある。近況を簡単にまとめる。

コースワーク
今学期のコースワークは全て自分の関心に直結しており、とても楽しい。特にMigrationのコースを履修できたのはよかった。まだ3週目が終わったところだが、かなり勉強になっているし、最終課題はliterature reviewなので、博論プロポーザルを始めようと思っている。Hierachical/Panel Data Analysisコースも既に知っていることは多いが、知らないことも結構あり、知識を埋めるのにとても役立っている。今週も、ランダム係数モデルについての自分の誤理解が訂正できた。Spatial Thinkingもとても面白い。今週はneighborhood effectsについて読んでいる。

TA&TAトレーニング
先週書いた通り、急遽仕事が変更になり、社会統計学(学部1-2年生中心)入門を教えている。グレーディング中心なので、体系化されたレクチャーはする必要ないが、毎週火曜に1時間学生の前に立って質問に答える+1時間オフィスアワーをする必要がある。

ブラウンは博士課程の院生全員にTAトレーニングを実施している。修了までにonlineでのレクチャー&学期に5回程度のin classの演習があるのだが、課題をこなしているうちに、教員の観点から、効果的な教え方や、学生がつまずくポイントをよく考えるようになった。

例えば、社会統計学の入り口で学生がつまずく初歩的ポイントの一つに、"population distribution"、"sample distribution"、"sampling distribution"の違いがあるのではないかと思う。この違いを理解していない学生が多い。"sampling distribution"という理論的な分布を仮定する必要性を「体感」してもらう(=レクチャーじゃなくて、実際にコンピュータ等で自ら実験させてみる)ことが重要だと思った。これがしっかりわかっていると標準誤差とか検定とかもかなりスムーズに頭に入ってくるんだと思う。

研究
博論:また来年詳しく書くが、博論計画書を来年の9月から再来年の5月(学部の期限)の間に提出&公開ディフェンドせねばならない。とりあえずMigrationのコースで具体化させて行こうと考えている。

学会:日本における移民の労働市場への統合について研究(共著)をPAAのAnnual Meetingにサブミットした(今日の午前3時くらいまでかかった)。ちょっと色々手続きがあって見送ろうと思っていたのだが、アメリカの移民の研究を単著でもサブミットした。流石にどちらかはポスターには通ると思うのだが、もしかしたら新しく博論用に始めた研究も出した方が良かったかもしれない。

論文:M論を基にしたアメリカの移民二世の子どもに関する研究を某トップジャーナル(掲載率7%程度) に投稿して1ヶ月以上経った。まだAwaiting Reviewer Scoresになっているので、デスクリジェクト(全投稿の25%ほど)にはならなかったということだと思う(←喜ぶところが違う)。指導教員のすすめで「回転が速い方」に出しているので、あと2-3週間以内には結果がくると思われる。レビュワーに徹底的に論文を壊されたら諦めるのも考えるが、レビュワーコメントの建設的な部分を取り入れて大幅修正して1月半ばまでには別のところに再投稿するのが目標だ。論文執筆法のクラスを教えてくれている先生は、「はっきり言って、この論文は某サブフィールドに対して害悪である」というレビュワーコメントを最近もらったと言って学生に見せてくれた。気にせず別のところに再投稿するらしかった。こういう不屈の精神が必要なのかもしれない。

昨年調査に関わった日本のデータを使って、1月末までに永住・帰化に関する論文を書き上げることを目標としている。資料がこちらでは手に入らないものも多いので、12月は早めに帰国して少し執筆に時間を割きたい。

節約と節制
かなりうまくいっている。昼はセミナーのランチを食べるか、チャイニーズスーパーマーケットで安く仕入れた豚バラ肉/牛スライスを使った料理(もやし塩豚、キムチ豚、牛丼、肉うどん)を弁当として持参、夜はズッキーニ、ナス、ミニトマト、ホワイトマッシュルームをお椀にもり、そこにモッツェレラチーズ、塩、トリュフオイルをかけた上で圧力鍋で蒸してそれを食べている(下の写真)。

圧力鍋で蒸す前

圧力鍋で蒸した後

運動(=水泳)は学期が始まる前は毎日できていたが、忙しくなってまた全然行けなくなった。なんとか時間を作りたい。家と大学の中間地点(どちらからも徒歩7.5分ほど)に大学のジムがあり、その地下に温水プールがある。

その他
予定では2020年1月に2つ目のプレリム試験を受験予定だったのを、2020年6月に回すことを検討し始めた。これは自分の当初の計画からは遅れてしまうのだが、博士課程の標準からは遅れているわけではなく、2つ目のプレリム試験は6月に受験する設定になっている。社会階層論のプレリム試験を受けようと思うのだが、プレリム試験の前提となる社会階層論のコースワークが来学期あるので、それと一緒に勉強するのが効率が良いと感じているためだ。

冬は1ヶ月くらい帰省しようと思い始めた。来年の3月で高校を卒業して10年になるにあたり、クラス同窓会が開かれるらしい。とりあえず冬休みを楽しみにして駆け抜ける。

2019年9月22日日曜日

頑張ってイベントに参加するべし

今年度は学部やセンターで開催されるトークやソーシャルイベントに積極的に顔を出することを心がけいる。またプロセミランチの委員にも就任した。5月に、院生として渡米して今に至るとある教授に、留学生として米で成功するアドバイスを求めにいったところ、ソーシャルイベント、各種トーク、勉強会にあまり顔を出していないのを指摘されて、もっと積極的に参加する必要を指摘されたことがきっかけだ。

思い返せば、昨年は、毎週木曜昼の人口学センターのコロキアム(他大学の教授を招いて講演)には毎週参加していたが、社会学部のコロキアム(火曜昼)、ジョブトーク(不定期)、ワトソン研究所(開発学センター)のコロキアム(木曜夕方)には時々しか参加していなかった。入学した頃は何もかもが新しくてどのイベントも律儀に参加していたのだが、だんだん疲れてきて参加しなくなってしまったというのが正しいかもしれない。

今学期から再び全イベントに参加していて改めて驚くのは、各センターのコロキアムや各種イベントへの教授陣の出席率の高さだ。週に何度もあるのに、社会学部の教授陣はほぼみんな出席して、発表が終わると一斉に手をあげて質問したり、意見を述べている。そもそも、アドバイスを下さった教授も、全てに参加しているからこそ私があまり出席しなくなったのを把握できているのだ。

土曜は社会学部の恒例のピクニックがあり、1時間半かけてロードアイランド州南のColt State Parkという国立公園まで教員・職員・院生等々とサイクリングをして、そこでBBQをした。East Bay Bike Pathというロードアイランド州のプロビデンスからブリストルまでを走る25kmほどのサイクリングロードがあり、海岸線沿いなので、とても気持ちよかった。道路沿いにはレモネードのスタンドが時々あり、それも美味しかった。新品で買ったのに100ドルだった安物のマウンテンバイクで出かけたのでスピードが出ず、周りに少し迷惑をかけてしまった。次は間違いなくもっと良いのを買う。


East Bay Bike Path

East Bay Bike Path

East Bay Bike Path

2019年9月18日水曜日

ティーチングアシスタントが足りない問題

今学期は大学院の多変量解析のコースのティーチングアシスタント(TA)に割り当てられ、レクチャーを火曜にしたことを先週の投稿で記したが、なんと2回目のレクチャーの昨日がそのコースのTAとしての最後の日になった。明日からは学部の社会統計学のコースのTAになる。大学院の多変量解析のコースはTAがいなくなるらしい。

突然変更になった理由は、TAを雇う予算がないということではなく、社会学部の提供する学部向けの諸々のコースの履修者数の当初の予想が外れ、一部の授業でTA不足が発生しているからだ。TA不足の背景には、ブラウンの社会学部の関連センターのFellowshipが毎年充実してきており、社会学部の院生がそれを獲得してTAを避けてしまうという問題がある(研究に集中できるということなので、良いことなのだが)(注)。ちなみに、今年は大学院1-6年生60余名中、TAとして生活している人は11名しかいない。

変更になったTAの講義のための資料等を一学期分、全て用意していなくて良かった、、というのが正直な感想だ。全部用意していて、学期途中で突然変更になったら、ショックだった。明日からの学部の授業は履修人数が50名と大学院の講義の3倍の数で、さらには学部生は成績を気にすると思うので、より大変かもしれないが、とりあえず臨機応変に頑張りたい。


注)アメリカの大学院の人文・社会科学系の大学院生はTeaching Assistantship (TA)、Research Assitantship (RA)、Fellowshipのいずれかの形で生活費を支給されてサバイバルしている。Fellowというのは要するに何もしなくても自分の研究だけしていればお金をもらえる状態で、一番理想なので、みんなこの状態になりたがる。大抵の場合、学年(または学期)ごとにステータスが推移するのが普通である。例えば、1年目(Fellow)→2年目(RA)→3年目(Fellow)→4年目(TA)→5年目(Fellow)→6年目(Fellow)という具合だ。なお、社会学部では1年生と5年生はデフォルトで全員Fellowshipが確約されている。Fellowshipには外部の財団から支給を受けるExternal(外部)と、大学内のリサーチセンターや所属する学部から支給を受けるInternal(内部)の二種類がある。日本の例でいうと学振が前者で、リーディング大学院が後者だ。同期で一度も教えずに6年間全部フェローで過ごそうとしている人もチラホラいるが、教育経験を積むために最低1年はTAをすることが推奨されている。


2019年9月12日木曜日

近況0912: "Fun is mandatory, you know."

大学のブックストアで用事を済ませて出て行こうとしたところ、入口にいた警備員のおじさんに"Fun is mandatory, you know."と声をかけられた。月火水と忙しかったので、相当疲れた顔をしていたんだと思う。

以下、簡単に近況を記す。最初の週のティーチングアシスタント業務が終わった。ティーチングアシスタント業務は様々な種類があるが、私は多変量解析のコース担当で、水曜の教授のレクチャーとは別に、補完的なレクチャーを火曜に2時間し、さらに2時間オフィスアワーをもって学生への質問対応することが主な業務内容(+テスト採点)。初回のレクチャーは自分で話している途中で自信をなくしてしまい、英語がしどろもどろになってしまって、主観的には落第。前向きに自分の講義で修正すべきところを探して毎回改善していきたい。特に講義資料(スライド)を学生にあわせてもっと入念に準備する必要を感じた。

今学期、履修しているコースワークは月火水に集中していて結構忙しくて大変。ただ、興味を持てる組み合わせになったと思っている。特に移住のコースはエスニシティ学派とレース学派の人が両方いて、相手の視点から学び、かつ自分の立場も深められるコースだと思う。来学期はエスニシティ・レースのコースもあるので、できればそれもとりたい。

ブラウン大学の中心部のメイングリーン。奥のSayles Hallは、1911年に新渡戸稲造が日米交換教授として集中講義したこともある歴史ある建物。
警備員のおじさんに"mandatory"と言われた"fun"は持てているか?正直、Netflixと食べること以外は楽しみがなく、全く持てていない。学部生が楽しそうに芝生の上に座って雑談しているのを見ると、少し羨ましく感じる。

最後に。渡米してすぐの頃は、街中でよくある赤の他人からのユーモアを効かせた唐突な「声かけ」によく戸惑ったが、慣れて来た気がする。次のステップはこの「声かけ」をする側になることだと思っている。アメリカのユーモア感覚をもっとちゃんと身につけて滑らない会話を見知らぬ人とできるようにもなりたい。


2019年9月9日月曜日

今学期のコースワーク(博士課程3年目前半)

他の大学では2年目までのところもあるらしいのだが、私の所属する学部はカリキュラム設計上、博士の3年目の春までコースワークの単位を一定の範囲で取り続ける必要がある。今学期は以下のラインアップになることがほぼ確定した。全て大学院レベルのセミナー形式。

SOC 2460 Sociology Paper Writing Seminar/論文執筆セミナー [通年]

博士課程3年生向けに開講されている論文執筆のコース。修論を相互にフィードバックしながら改稿して、ジャーナル投稿までするのが目標とのこと。論文の書き方とともに、査読の仕方、査読対応の仕方等も学ぶらしい。担当教員はEmily Rauscher准教授。昨年度から院生の要望に応じて設置されたコース。

SOC 2320 Migration/移住

人口学トラックのオプションとして2年に1回程度の頻度で開講されるコース。このコースでは国内移住(Internal Migration)と国際移住(International Migration)の主要先行研究をテーマ別にサーベイする。履修者は社会学と人類学の院生7人で、ブラウン社会学らしく?、アメリカへの移民を研究している社会学徒は私だけだった。このコースは課題がかなり自由に設計できるので、博論プロポーザルの先行研究レビューに使うつもり。

ちなみに、人口学の基本原則として、任意の地域における人口変動の要因は出生(+)、死亡(−)、移住(+ or −)の3つしかあり得ないので、移住は人口研究のコアの一つである。しかしながら、出生や死亡と違って生物学的プロセスと切り離されており、「何が移住とみなされるか?」という定義問題から始まり、出生、死亡研究にはない難しさもある。担当教員はMichael White教授。

SOC 2610 Spatial Thinking in Social Science/社会科学における地理空間的思考法

このコースは研究テーマに地理空間的視点を持ち込むことを目的としてデザインされたコース。セグリゲーション、近隣効果、空間的拡散等、テーマに分けて社会学、人口学、経済学、政治学のレビューをする。なお、これはメソッドのコースではなく、それは別にある。担当教員はJohn Logan教授。ちなみに、エスニックエンクレーブやセグリゲーションの研究ではかなり有名な大御所で、Google総引用件数は3万近い。

ブラウンには人口学センターを筆頭に社会学部と強い繋がりをもつ研究センターがいくつかあり、その一つにSpatial Structures in Social Sciences(S4)という組織がある。これは20年近く前に作られた組織で、この組織を中心に社会学&人口学に地理空間分析を取り入れる研究がなされ、地理空間分析のメソッドコースも本当にたくさん開講されている。毎年新学期になる度に思うのだが、特にメソッドのコースは本家の社会学部からは履修者が少なく勿体無い気がするので、地理空間分析を勉強したい日本の学部生/院生はブラウン社会学部に出願するのは考えてみるのをオススメする。

SOC 2960S Statistical Methods for Hierarchical and Panel Data/マルチレベル・パネルデータ分析法

タイトル通りマルチレベル・パネルデータ分析法を学ぶ。特にランダム効果モデルとその発展系(e.g., 成長曲線モデル)に重きがおかれるようだ。教科書はHox (2010)。最初の授業のイントロで「今学期は色々学ぶけど、実践ではクラスタロバスト標準誤差を事後的に計算するだけで事足りることが多い」と担当教員が言っていた。確かに大抵のRQではランダム効果自体に関心がない場合が多く、その通りだと思った。担当教員はMargot Jackson准教授。

フルブライトでvisitingしている院生の方をあわせると、履修者9人のうち4人が中国人民大出身者でとても興味深い。社会科学に強い大学らしく、日本でいう一橋大だと思われる。

ちなみにこのコースは社会学部の計量メソッドシークエンスの一貫。地理空間分析の諸々のメソッドコースと、来年から新設される計算社会科学のコースを除くと、常設されている計量メソッドのコースは多変量解析Ⅰ・Ⅱ(必修)、人口学的分析法、因果推論、マルチレベル/パネルデータ分析法、イベントヒストリー分析法の6つである。私の場合、イベントヒストリー分析のコースを履修すると社会学部のメソッドシークエンスは全てとり終わる。



2019年9月7日土曜日

夏季休暇中の生活費確保の方法

以下、いつか誰かのためになればと思い、米国博士課程の夏休みの生活費を確保する方法を記す。ただし、これは私が在籍するプログラムの事例である。人文社会科学系のPhD課程では、基本的には似ているだろうが、大学や所属学部によって違うところも多々あると思う。また、私は私立大学に所属しており、州立大学に所属している方に比べると、経済的には恵まれていると思われる。さらに、理工系の方とは大きく状況が異なるとも思う。

基本的に、アメリカの大学のアカデミックイヤーは9ヶ月(9月-5月)であるので、給料も9ヶ月分で計算されている。これは院生も教員も同じである。よって、教員は6-8月の3ヶ月は別の大学で勤務しても、企業で働いても、問題ないことになる(たぶん。詳しくは経験者のせんせ)。ちょっとよくわかっていないところもあるが、中国人のスーパースター教授が夏に長期で中国の大学で教えていることがあるのはこういうことだと思う。

さて、院生はどうなるか?もちろん、院生は教員のように高給取りではないので、夏に給料がなくなると困る。よって、入学前のオファーレターで夏季休暇の間のフェローシップ(=TAやRAとは関係なく貰えるお金)が保障されている。また、医療保険と歯科保険に関しては、最初から9ヶ月ではなく、1年分保証してくれている。とはいっても、給料は学期中は最低毎月3000ドル程度(2018年度)なのに対して、夏はその5割強程度の毎月1700ドル程度(2018年度)であり、家族構成やハウジングコストによっては夏の間の収支がマイナスになりかねない(日本の感覚だと院生にしては給与高く思われるかもしれないが、米の都市部は物価が高い!)。また、例えばエスノグラファーが夏にフィールドワークに行く(日本の博士課程と違い、学期中はコースワークで忙しいのでフィールドにいけない)には全く足りない。どうやって夏を乗り切るか?以下の解決策が考えられる。

(1)サマーメンタードリサーチ/RAをする
社会学部特有のプログラムで、主に博士課程1-4年生対象である。夏に入る前にアンケートがあり、希望に応じて、教員(メンター)と院生をマッチアップし、夏に10週間程度教員と共同研究をすることで、給与をプラスしてもらえる。場合によるが、学期中の80%くらいにまで給与が回復する。もちろん、RAとして働く人もおり、基本的には同じことである。教員との関係を築く良い機会にもなる。私もこのプログラムにお世話になっている。

(2)大学内部の機関のサマーフェローになる
大学内部には様々なセンターがある。こうした機関で夏のフェローを募集していることがあり、フェローとして採用されることで、学期並み?の給与が手に入る。例えばこれまでにみたものではSwearer Centerというブラウンの学生センターがサマーフェローを募集していた。こうしたセンターのフェローになることによって発生する義務は様々である。

(3)大学内部の機関のサマーグラントを獲得する
ブラウンにはInstitute at Brown for Environment and Society(IBES)、Watson Institute for International and Public Affairs (Watson)、Population Studies and Training Center(PSTC)等の社会学の院生がサブで所属している機関が多数ある。私もこの一つのPSTCの一員である。こうした機関では、院生用に夏の研究グラントを用意している場合が多い。特に海外(=米国外)でフィールドワークをするためのグラントはたくさんある。採用されれば、そのお金で、海外に行き、そこでフィールドワークをできる。もちろん研究グラントなので、直接生活費には当てることはできないだろう。しかし、「海外」と言っても、出身国に帰国することと同義な院生がほとんどで、留学生のエスノグラファーが多い私の同期では一番多い夏の生活費獲得方法である。なお、研究構想が固まっていないPhD一年生向けのフィールドワークグラントもある。

(4)高校生向けサマースクールで教える
アメリカの大学は、(世界中の高額所得者のご子息のお金を吸い取るために)夏にとてつもない学費がかかるサマースクールを実施しているところがある。ブラウンはその一つである。基本的な対象は高校生で、中国や韓国を含め、世界中から生徒が集まる。講師の一定数は大学院PhD課程の院生であり、結構良い給料がもらえるらしい。なお、サマースクールを受講した生徒から学部進学のための推薦状を頼まれることがあるとのこと(by ルームメイト談)。

(5)通年のフェローシップ(e.g., 日本の奨学金)を獲得する
これが一番理想だろう。留学生なら母国からの給付型奨学金がこれに当たるだろうし、アメリカに来てからでも応募できる日本/米国内の財団のフェローシップもある。大学から保証されているサマーフェローシップとの併給やサマーメンタードリサーチ/RAとの併給を許してもらえるかは交渉が必要な場合もある。

(6)大学外部で仕事/インターンを見つける
大学外でインターン等として雇われて過ごして、そこで+αを稼ぐ人もいる。特に非アカデミア就職を考えている場合や、自分自身の研究と関連する研究所で働ける場合にとても有効な手段となるであろう。アメリカ永住権やアメリカ国籍を持っていない場合は、ビザで問題が起こらないようにしなければならない。

2019年9月3日火曜日

夏が終わる(近況)

今日から新学期が始まったが、今日は入学式のため授業はない。明日から授業&TAで、少し気持ちを入れ替える必要がある。近況を項目に分けて記しておく。

・家
今年から家の管理人をやっている。主な仕事としては家のメンテナンスに責任を持つことと、新しいルームメイトを見つけることと、ルームメイトと大家さんの仲介をすることである。もともと去年まではルームメイトのオランダ人夫婦が長らくこの仕事をやっていたのだが、奥さんの方がNYUでテニュアトラックAPポジションを見つけたので引っ越し(おそらく業界のスーパースターなんだと思う)、僕に声がかかった。

ルームメイト四人は全員ブラウンのPhD課程の大学院生だ。エジプト・アッシリア考古学専攻五年生のイタリア人、比較文学専攻の新一年生の中国人、哲学専攻六年生のシンガポール人、生物学専攻新一年生のペルー人、社会学専攻新三年生の私という全員留学生のメンバーである。去年までの二年間一緒に住んだのは私以外ほぼ全員がヨーロッパ(イギリス二人、オランダ一人、イタリア一人、フランス一人)からの留学生かアメリカ出身で、人文系の専攻だったことを考えると大きな変化である。

家の管理は週に一から三時間程度の時間をとられるだけで、時間的な拘束は少ないのだが、ルームメイトと隣に住む大家さんの仲介をするのには、精神的な負担はある。また、今学期は10-1月の間のどこかの3週間で大規模な工事が入る予定で、それの調整が面倒臭い。ただ、東海岸の地方都市の白人中産階級のneighborhoodでの日常を垣間見れるという点ではとても面白い。また家の契約書の書類作成等も手伝っているのだが、意外と勉強になっている。管理人をやることによる家賃の割引も助かっている。

・遊び
息抜きがNetflixだけではよくないと思い、時々アウトドアもやっている。昨日までLabor DayのLong weekendだったので、ロードアイランド州南端のチャールズタウンのラグーンでシーカヤック/カヌー&クラム狩りに行ってきた。


クラムは二枚貝という意味だが、ニューイングランドではほぼ写真のホンビノス貝を指す。ニューイングランドクラムチャウダーに入っているアレだ。ちなみにたくさん獲れたのだが、僕は甲殻類アレルギーで食べられない。一緒にいって食べた友人によると大きいのより、小さい方が美味しかったらしい。

ラグーンでのカヌー:
腰くらいまでの浅瀬が続くので救命具はいらない。

ホンビノス貝(クラム):
計測器を持参し、州法の規定以下の大きさの貝は海に戻している。

最近痛感するのが車の免許の必要性だ。ニューポート、ボストン、ニューヨーク等の近隣都市へは電車やバスで安く&速くいけるが、色々な発見がありそうな田舎町へは車がないといけない(もちろんバスでいけるのだが、とりあえず時間がかかる)。今回の旅も友達が車を持っていたからこそできたわけだが、一人では無理だ。とりあえず来年のこの時点までには免許を取得することを心に固く決めた。

・研究
修論を投稿し終わって、無駄に長引いてしまった改稿も終わった(意味あったか不明)。これから一年かけて博論の「Big Question」(「漠然とした問い」という意味ではない)を生み出す必要がある。来年の12月に博論プロポーザルをディフェンスする予定。アメリカの移民二世のライフコースを出生コホートによって比較するという漠然とした考えはあるのだが、まだ精緻化できていないので、今学期はこれを具体化できるように、なおかつ教員も説得できるようにしたい。日本の研究もサイドで続けており、こちらも今年は少し頑張らねばならない。

博論の審査委員会は最低三人必要。来年のこの時期くらいまでに決める必要がある。既に三人はなんとなく決めているのだが、候補に入っていなかった先生から「私を入れないか?」という連絡がきた。曖昧な返事をしていたら、最近また連絡がきて少し対応に悩んでいる。よくよく考えると、確かにかなり関心は近いのだが、これまであまり関わりのなかった先生なので慎重に検討したいとともに、向こうからアプローチしてきた理由が気になっている。

・コースワーク
コースワークはあと1年分とる必要がある。今学期は社会学大学院の"Statistical Methods for Hierarchical and Panel Data"というマルチレベル/パネルデータの分析法のコース、"Spatial Thinking in Social Science"という居住分離や近隣効果などの先行研究をサーベイするコース、"Migration"という国際&国内移住に関する先行研究を、人口学に重点をおいてサーベイするコースと、経済学大学院の"Applied Methods"という因果推論のコースの中からいくつか履修しようと思って迷っている。TAや社会階層論のプレリム試験を受験する必要があるので、あまりたくさんとるのは絶対にやめた方が良いことはわかっている。とりあえず今週中に決めてしまいたい。

・体調(消化器系)
先月の胃カメラ検査で原因が判明したのち、京都で3ヶ月分の薬を処方してもらっている。油断して薬を飲み忘れるとまだ気持ち悪くなるので、特に良くなってはなさそう。

・節約
来年度、ある程度の出費が予想されており、それを見据えて先月から節約している(目標は月1000ドルを貯め続けること)。巨大なアジア系スーパーが車で10分のところにできたこと、かつアジア系のルームメイトが2人できて一緒にuberをシェアできることで、Whole Foods(日本でいう成城石井)でしか買い物できなかった毎日とは違う生活ができるようになりそうだ。今週はアメリカではなかなか手に入らない豚バラ肉(しかも信じられないほど安い)やゴーヤを使ってゴーヤチャンプルなどを楽しんだ。とりあえず「一人での外食は禁止」というルールを自分に課し、弁当を毎日学校に持っていくようにしたい。