2022年12月27日火曜日

近況報告:口頭ディフェンス日程決定、ウィリアムズバーグ訪問

前回の更新からまたまたとても長い時間が経ってしまった。博士論文はほぼ完成し、現在は体裁等を整えると共に、1月31日午前の口頭審査(いわゆるオーラルディフェンス)の準備をしている。審査員は主査の指導教員含めて4人で、形式上3時間ある。こればかりは対面なので、DCからプロビデンスまで飛ぶ予定である。吹雪での飛行機の遅延等の可能性を考えると、1月29日にはプロビデンス入りを考えた方が良いのかもしれない。

昨日までのクリスマス休暇は息抜きにコロニアルウィリアムズバーグ(バージニア州ウィリアムズバーグ)で過ごした。地区全体が植民地時代を再現する生きた博物館になっていてとても刺激的な良い経験だった。昔から行きたかった場所だったので今回行けて本当によかった。

ちなみに、ウィリアムズバーグはワシントンDCからは南に180kmほどで、高速バスで向かったのだが、DCの駅で運転手が見つからずに高速バスの出発が5時間遅れた上に、途中のバス停(リッチモンド)でその運転手もいなくなってしまい、交代運転手も現れず、乗客全員がバスごと夜のリッチモンドに取り残されるというハプニングも良い思い出になった。バス停にいたバス会社の係員は「会社の本部に連絡が取れないし、自分に返金する権限もない。俺のせいではない」(意訳)という態度で何もしてくれなかった。こういうことに特に動揺しなくなったのも、5年間でアメリカの経験値が高まった証だと思う。仕方なくUberに課金をすることで問題を解決をし、現在はバスのチケットの返金を請求中である。

なお、毎年、面白かった社会学論文のまとめ(例:2021年)を書いてきたが、今年はそれより自分の博論をできるだけ仕上げること(校正)に時間を使った方が良さそうなので、スキップすることにする。


2022年9月9日金曜日

"Gilead" by Marilynne Robinson (マリリン・ロビンソン著『ギレアド』)

博論用の9GBのデータのダウンロードを待っている間に、Marilynne Robinson著の"Gilead"という小説の紹介を書いておく。2004年にピューリッツアー賞(フィクション部門)と全米批評家協会賞を受賞しており、ミチコ・カクタニ氏のNYTでの分析によれば大統領就任前のオバマ大統領の人間観に影響を与えた本の一つらしい。日本語でも翻訳が出ているとのこと。

いわゆる"Epistolary novel"(書簡体小説)で、老牧師John Ames(70代)が心臓の病気で余命宣告を受け、後妻との間にできた幼い子ども(が大人になった時に読むために)に書き残す何十通もの手紙という形式をとっている。時代設定は1950年代の米国中西部アイオワ州にある架空の町Gilead。

手紙をまとめた設定のため明確な章区分はなく、順序だって書かれていないので、ストーリーの展開を説明するのはかなり難しい。テーマとしては、家族の信仰継承と挫折、親友との友情(と親友の息子がもたらした悲しみ)が軸だが、それに加えて、寂れゆく中西部の田舎町Gileadでの日常がAmesの視点から断続的に描かれていく。老牧師John Amesは代々続く牧師の家系であるという設定がとても重要であり、牧師だった祖父(19世紀初頭生まれ)と父(19世半ば生まれ)の話を息子に書き残すことで、アンテベラム(南北戦争に至る時代)から冷戦に至るまでのアメリカの近現代史が背景としてうまく織り込まれている。手紙にはAmesを取り巻く様々な人物の話も登場するのだが、父から息子への手紙という一方向の書き方ながら、それぞれの人物の設定がとてもリアルに、細緻に、描写されている。

読後に調べたところ、アメリカにおけるカルヴィニズムへの肯定的な再解釈を試みている宗教的小説という評価があるようで、実際に文学系の学術論文でも既にそういう議論がなされているようであった。確かに老牧師John Amesは会衆派の牧師、親友のBoughtonも長老派の設定であり、本の中でも度々"Institutions"(『キリスト教綱要』)が言及されている。私がこの本を読むきっかけになったのもブラウン大のプロテスタントの大学院生のグループの読書会で取り上げられたからで、夏に週1でZoomであってみんなで感想を話し合うのは楽しかった。ただ、ピューリッツアー賞受賞していることからもわかる通り、宗教的背景が一切なくても、凝った小説として楽しめるように思う。

ちなみに私はAmazon Audibleを使って全て散歩中に耳でこの本を「読んだ」。特にこの本は手紙調なので適していると思う。英語に抵抗がない方にはおすすめの楽しみ方である。耳にも心にも頭にも響いた小説であった。シリーズとして続編も出ており、先週から"Home"をAudibleで散歩中に「読んで」いるところである。

2022年8月13日土曜日

博士留学中にI-20を延長した際のトラップ

毎度のように、かなり久しぶりの更新になってしまった。ワシントンDCに引っ越してきて3ヶ月近く経ち、ようやく生活が落ち着いてきた。最近は「主夫」兼院生という感じで、家事をしつつ、専ら博論をやっている。あと、毎日東海岸時間午前11時にJ-RECINも眺めている。

今日は大学からの給料が突然振り込まれなくなるトラブルについて、同じようなトラブルに遭う人がいないように記しておく。なお、幸いなことに、このトラブルは解決済みである。

昨年末に、今年5月末に失効する予定だったI-20の延長手続き(来年5月までに延長)を行なったのだが、更新されたI-20を大学の人事課(Human Resources)に再登録する手続きを失念していた。私が失念していたこの手続きは、非米国籍の大学院生が米国の大学から給与(fellowshipも含む)の支払いを受けるために必須の手続きであった。

大学からの給料は毎月の月末に振り込まれるのだが、6月末になっても振り込まれず、大学に確認したところ、「就労許可手続きができていない」(大意)という返事が返ってきて、かなり焦ることになった。しかもこの手続きはオンラインでは難しい(=オンラインでは、法的な問題がある)ということで、一度はDCからプロビデンスまで飛ぶことを考えたのだが、一部の州では公証人立会のもとで同手続きができるかもしれないことを知り、最終的にお隣のバージニア州で公証手続きを済ませ、無事に3週間遅れで6月の給与の支払いを受けることができた(注意:この公証人手続きの有効性に関する法律的解釈は雇用主や手続きする州によって分かれるらしいので、同じことをする人は慎重にやってほしい。DCではできなかった)。

完全に自分が悪いのだが、強いて言い訳をすると、通常であれば更新されたI-20を留学生課で物理的に手渡されて、職員から「ちゃんと人事課に出向いてね」と言われるプロセスがコロナで電子化され、メールになったことが原因である。メールは見逃していた。アメリカ博士課程にいる人なら一日に大学から届くメールの量とそれを見逃すミスに共感してもらえる気がする。

博士課程留学でI-20を更新されたみなさんは是非、人事課にI-20の登録手続きを忘れないようにすることをおすすめする。

2022年5月4日水曜日

生存報告0504

2022年に入って初めての投稿になってしまった。もう5月ということでとても焦っていてブログを更新しているわけではないのだが、一応、生存報告をしておく。

1月はハワイで1週間ほどのんびりしていたのだが、その後から現在に至るまで怒涛の忙しさだった。全て思い出しきれないのだが、主要イベントしては終始博論執筆のプレッシャーに加え、共著論文投稿(2月)、イェールでの招待レクチャー(2月)、DCでのアパート探しと契約(3月)、アメリカ人口学会(@アトランタ)(4月上旬)、RC28学会(@ロンドン)(4月下旬)、公募へ出願(定期)などがあった。

特にワシントンDCでのアパート探しと契約は本当に色々と大変で、2-3週間ほど、ほぼそれに時間を使ってしまった。いつかまとめて書くかもしれないが、外国人ということで差別されているのではないかという経験もした。もちろん、僕の主観であり、証明しようがないのだが、基本的に現代民主主義社会で移民が経験する差別経験というものは客観的証拠を示しにくい類のものの積み重ねではないかと思う。現在、妻は既にDCに住んでいて、私も今月末にDCに移る予定である。

今年に入って、少し嬉しかったのはいくつか外部機関から賞をいただけたことや、これまで出した研究成果に対してポジティブな問い合わせが来始めたこと。ただ、まだ満足のいく研究成果は出せておらず、なんとかあと2−3年以内に自分でも誇りに思える研究成果を出したいところである。

疲れが出たのか、ロンドンでのRC28学会参加後、大幅に体調を崩してしまい1週間ほど寝込んでいた。ここまで体調を崩したのは2年ぶりくらい。昨日くらいからようやくフルに復活して、再開している。