2017年1月28日土曜日

富永健一著『社会学講義』の紹介

二週間ほど前に修論を提出し、好きなドラマを見ながら、積ん読してあった本を消化している。これからまたブログも頻繁に更新していけたらと思う。

初心にかえるつもりで富永健一先生が執筆された『社会学特殊講義』(1995)中公新書を読んだ(以前部分的には読んだことあったが今回すべて読んだ)。細部まで紹介するつもりはないが、これまで読んだ社会学の入門書の中では最も良い本なのではないかと改めて思った。分量的にも新書1冊分なので誰にでも気軽にすすめることができる。進振りが終わった学部2年の冬に出会いたかった一冊である。


章立ては以下の通り。

1章 社会の学としての社会学
2章 理論社会学
3章 領域社会学と経験社会学
4章 社会学史の主要な流れ

1章では社会学の定義をはっきりさせるために、「社会」を「狭義の社会」と「広義の社会」に区分し、前者を研究対象とする学問が社会学であることを宣言することから始まる。細かい定義は実際に本を読んでいただいたいが、これはしばしば混同される「社会学」と「社会科学」という言葉を明確に区別し、社会学を政治学や経済学と並列される社会科学の下位分野として位置付けることを意味する。なんでもかんでも社会学の研究対象とする「総合社会学」への批判である。2章と3章では社会学理論の概説をした上で、理論社会学と経験社会学の関係、経験社会学と領域社会学の関係が論ぜられる。ここで特に良いと思った点は社会調査や計量社会学についての説明が詳しいこと(1995年に書かれているので記述が古いが逆に味がある)である。4章では社会学史が概観できるが、欧米の入門書ではお目にかかることのない日本の社会学史の展開を欧米の社会学史と関連付けていて大変興味深い。

付け加えておくと、富永先生は1931年生まれで、1992年まで東大の社会学研究室で教えている(その後名誉教授)。社会学理論から経験的研究(SSM調査の代表)までかなり幅広くカバーしており、教え子で活躍されている方も多数おられる。私は直接お会いしたことはないのだが、最も尊敬している社会学者の一人である。

社会学を専門とされている方も、社会学をかじってみたい方も、適当に書かれた入門書よりははるかにおすすめできるので是非手にとっていただきたい。