2018年7月31日火曜日

ベルハール信仰告白(Belhar Confession of Faith)

今日は最近知った「ベルハール信仰告白(Belhar Confession of Faith)」について以下書き残しておく。

4月ごろから米トランプ政権の方針で、米に不法入国した家族の親と子供を別々に収容する家族分離政策(Family Seperation Policy=Zero Tolarence Policy)が実施されていた。法を厳格に適用して、大人は国境で逮捕して刑事訴追し、子どもは収容所で保護するという措置だ。もちろん、米から強制送還される親もいるかもしれず、親子が再会できる保証はない。「非人道的」だとして政権は連日批判にさらされ、さすがのトランプ大統領も政策を撤回した。しかし、事務手続きの不備のために今でも親と再会できていない子どもが多く、さらにはトランプ大統領によって任命された保守強硬派のジョフ・セッションズ司法長官が聖書(ローマ書13章)を根拠に家族分離政策を擁護し、各方面から批判を招いた(注1)。

プロビデンスに住み始めてからは家から徒歩3分ほどのところにある長老教会に行っているのだが、ちょうどこの家族分離政策が問題になっていた時期から毎週礼拝中に皆で一斉に告白する「信仰告白」が以下のような告白になった。

教会の式次第の一ページ

We believe that any teaching which attempts to legitimate 
such forced separation by appeal to the gospel, and is not prepared to venture on the road of obedience and reconciliation, but rather, out of prejudice, fear, selfishness and unbelief, denies in advance the reconciling power of the gospel, must be considered ideology and false doctrine. (引用:教会の礼拝の式次第 2018年7月29日)

上記を読んでいただければ明らかに家族分離政策とその擁護に対して反対していることがわかるだろう。私は家族分離政策には反対なものの、何人も神学者を集めて月日をかけて慎重に検討を重ねなければならない信仰告白を、こんなにも早急に時事問題に対して用意したことを当初は少し困惑していた。しかし、先週、実はこれは「ベルハール信仰告白(Belhar Confession of Faith)」という南アフリカの教会がアパルトヘイトを擁護する当時の南アの白人教会の教えに対して1986年に出した信仰告白の一部抜粋で、2年前にUSA長老教会に正式に導入されたものだと知った。

日本でも教会が政治とどう向き合うかは常に議論になっているが、アメリカでも同じだ。アメリカの長老教会は大きく分けて福音派(保守)のPresbyterian Church in America (通称:PCA/アメリカ長老教会)とメインライン(リベラル)のPresbyterian Church USA (通称:PCUSA/USA長老教会)に分裂している状態である。前者は共和党の支持者も多く、後者は民主党の支持者が多い。現在行っている家の近くにある教会は後者のメインラインの方であり、また黒人の方が過半数を占めることもあって、今回紹介した信仰告白に限らず、普段の説教からも現政権にアクティブに対抗する姿勢が伝わってくる。ただ、福音派の教会でも私が住んでいるプロビデンスのような場所にあれば政治的には民主党を支持しているという人が一定数いるだろうし、トランプ大統領の政策には反対という人が多いだろう。両者でどの程度雰囲気が違うのだろうか?来週、こちらで仲が良くなった友人の誘いでダウンタウンにある福音派(保守派)の長老教会(PCA)にお邪魔するつもりであるので、牧師さんや教会役員の方々と話す機会があればそれとなく聞いてみたい(外国人であることの利点はこういう質問に割と素直に答えてもらえることだ)。

注1:なお、私の理解では、同性婚や妊娠中絶の問題では共和党と歩調をあわせることの多いカトリック教会が不法移民問題においては共和党保守派に反対する最大勢力の一つである。


2018年7月21日土曜日

手作りクロワッサンたい焼き作り@アメリカ

5月から始まった夏休みもあと1ヶ月半で終わる。短い6月末の一時帰国では梅雨のはずの東京で雨が降らずに梅雨明けしたかと思いきや、京都の実家(嵐山の近く)に戻った途端に「西日本豪雨」に巻き込まれて大変だった。今は実家は猛暑で大変のようだが、プロビデンスはとても涼しくて、逆に夜は掛け布団がないと寒い。

最近は指導教員との共著論文の補完的な分析と指導教員とのミーティング、そして自分の2年目の論文(アメリカで書く2回目の修士論文)(注1)の文献レビュー、微積分と線形代数のコースをオンラインで聴講している(注2)。また夏休み中にアメリカに残って研究している友人と毎週1度ミーティングをして、一週間の進捗を報告しあう軽い勉強会もしている(自分が呼びかけ人でうまく行くか不安だったのだが、今のところうまく行っている)。

さて、日本に帰った時には「銀だこ」の一部店舗で販売しているクロワッサンたい焼きを食べるのが楽しみで、今回の一時帰国時にも結構たくさん食べた(6つくらい)。実は実家のある京都にはクロワッサンたい焼きが売っている店がなく、東京にいる短い間しか食べることができないと悲しんでいたら、大阪の伊丹空港から帰国のための飛行機に乗る直前に、不思議なご縁で親しくなった阪大の先輩が大阪でで朝一番に買ったクロワッサンたい焼きを空港まで届けてくださって感動した。

空港で食べた銀だこのクロワッサンたい焼き

そして、今日は土曜日で研究室に行く必要もないので気晴らしにクロワッサンたい焼きを自作してみることにした。Amazonでたい焼き焼き器、Whole Foodsで購入したパイ生地と砂糖、日本から持って帰ってきたあんこを使った。成果物は以下の写真の通り。

自作クロワッサンたい焼き側面図

自作クロワッサンたい焼き断面図
たい焼き器

見た目や、さっくり感でクロワッサンたい焼きらしさは出ているものの、やはり生地がクロワッサン用ではないからか味はそこまでだった。少しバターが重すぎる感じが減点ポイントで、点数をつけるとしたら60点前後だろうか。自分用のお菓子にはできるが、まだ人様に出せるものではない。実は渡米する直前の半年間はABCクッキングでケーキコースを受講していたのだが、そろそろ本格的に再開してクロワッサンの生地作り作成に励んでみるつもり。


注1・・・アメリカの社会学Ph.D.課程(5年制)では修士を持って入学しても、2年目か3年目に博士課程の途中経過としての論文を書かせるところが多く、これを書くことによって形式的に修士号が授与される。僕の場合、頑張れば(=東大に提出した修士論文を全訳して審査を受ける)免除できるかもしれないのだが、今の指導教員を博論の指導教員にしても大丈夫か修論についてのコミュニケーションをとる中で確かめたかったり(相性合わないと思ったら3年生で変えれる)、3年目のプレリム試験に落ちてPh.D.課程の途中で退学にさせられた時に留学した「証」が欲しかったり、行き詰まりを見せている日本での研究テーマの方向性をより「アメリカ的なもの」に修正しようと思っていたり、そうした色々なポジティブ&ネガティブな理由が重なって修士論文を書くことにした。

注2・・・駒場時代に数学の授業を受けていなかったことが響いている気がして、MITがオンライン学習用にオンラインあげている10年前の学部生用の授業の録画で大学1-2年生用の微積分と線形代数を1.5倍再生して聞いて、問題を解いている。僕のように後から苦労しないためにも学部時代に数学はみんなやっておこう。