4月ごろから米トランプ政権の方針で、米に不法入国した家族の親と子供を別々に収容する家族分離政策(Family Seperation Policy=Zero Tolarence Policy)が実施されていた。法を厳格に適用して、大人は国境で逮捕して刑事訴追し、子どもは収容所で保護するという措置だ。もちろん、米から強制送還される親もいるかもしれず、親子が再会できる保証はない。「非人道的」だとして政権は連日批判にさらされ、さすがのトランプ大統領も政策を撤回した。しかし、事務手続きの不備のために今でも親と再会できていない子どもが多く、さらにはトランプ大統領によって任命された保守強硬派のジョフ・セッションズ司法長官が聖書(ローマ書13章)を根拠に家族分離政策を擁護し、各方面から批判を招いた(注1)。
プロビデンスに住み始めてからは家から徒歩3分ほどのところにある長老教会に行っているのだが、ちょうどこの家族分離政策が問題になっていた時期から毎週礼拝中に皆で一斉に告白する「信仰告白」が以下のような告白になった。
教会の式次第の一ページ |
We believe that any teaching which attempts to legitimate such forced separation by appeal to the gospel, and is not prepared to venture on the road of obedience and reconciliation, but rather, out of prejudice, fear, selfishness and unbelief, denies in advance the reconciling power of the gospel, must be considered ideology and false doctrine. (引用:教会の礼拝の式次第 2018年7月29日)
上記を読んでいただければ明らかに家族分離政策とその擁護に対して反対していることがわかるだろう。私は家族分離政策には反対なものの、何人も神学者を集めて月日をかけて慎重に検討を重ねなければならない信仰告白を、こんなにも早急に時事問題に対して用意したことを当初は少し困惑していた。しかし、先週、実はこれは「ベルハール信仰告白(Belhar Confession of Faith)」という南アフリカの教会がアパルトヘイトを擁護する当時の南アの白人教会の教えに対して1986年に出した信仰告白の一部抜粋で、2年前にUSA長老教会に正式に導入されたものだと知った。
日本でも教会が政治とどう向き合うかは常に議論になっているが、アメリカでも同じだ。アメリカの長老教会は大きく分けて福音派(保守)のPresbyterian Church in America (通称:PCA/アメリカ長老教会)とメインライン(リベラル)のPresbyterian Church USA (通称:PCUSA/USA長老教会)に分裂している状態である。前者は共和党の支持者も多く、後者は民主党の支持者が多い。現在行っている家の近くにある教会は後者のメインラインの方であり、また黒人の方が過半数を占めることもあって、今回紹介した信仰告白に限らず、普段の説教からも現政権にアクティブに対抗する姿勢が伝わってくる。ただ、福音派の教会でも私が住んでいるプロビデンスのような場所にあれば政治的には民主党を支持しているという人が一定数いるだろうし、トランプ大統領の政策には反対という人が多いだろう。両者でどの程度雰囲気が違うのだろうか?来週、こちらで仲が良くなった友人の誘いでダウンタウンにある福音派(保守派)の長老教会(PCA)にお邪魔するつもりであるので、牧師さんや教会役員の方々と話す機会があればそれとなく聞いてみたい(外国人であることの利点はこういう質問に割と素直に答えてもらえることだ)。
注1:なお、私の理解では、同性婚や妊娠中絶の問題では共和党と歩調をあわせることの多いカトリック教会が不法移民問題においては共和党保守派に反対する最大勢力の一つである。
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