最近はひたすら6月末のpreliminary exam (プレリム試験)の勉強をしている。プレリム試験は、他大学ではcomprehensive examやqualifying exam等の名称で呼ばれることもある。大学や博士課程のプログラムによって形式は大きく異なるが、ブラウン大学の社会学Ph.D.課程では以下のような特徴を持つものである(今後経験後に訂正する可能性あり)。
(1)社会階層論、社会人口学、都市社会学、人種・エスニシティ・移民の社会学、開発社会学、政治社会学、健康社会学、文化社会学、組織社会学、環境社会学、社会学理論の11分野の中から2分野に合格することが必要。
(2)2分野同時に受けてもいいが、基本的には1分野ずつ、半年の間隔をあけて受ける。
(3)試験形式はオープンブックのテイクホーム試験で、月曜の朝9時に問題がメールで送られてきて、水曜の午後5時までに答案をメールで送信する(但し、これは1分野受験の場合で、2分野を一度にやる場合は金曜まで余裕が与えられる)。
(4)答案で求められているのは設問内容にあった文献レビューの作成。1分野につき2つ設問があり、それぞれ2000-3000 words程度で作成することが求められる(1つの試験につき4000-6000 words)。
(5)事前に読んで、内容をある程度覚えておく必要のある必読論文が100本ほど分野ごとに指定されている(プレリム文献リスト)が、それからだけでは答えられないので、他にも当たる必要がある。
(6)1月と6月の年に2回受験可能であり、標準的には3年生で2分野とも受ける。2分野とも3年生終わりまでの合格が必要である。
(7)評価は当該分野を専門とする教員により構成される2名の委員によってなされ、優等合格、合格、不合格の三段階が存在する。優等合格は稀らしい。優等合格しても自己満足以外に良いことは特になく、とりあえず合格すれば良い。
(8)2度不合格になると退学。これは脅しではなく、去年実際に先輩が退学になっていた。
私は(1)については社会人口学と社会階層論を選択する予定で、6月末に受けるのは社会人口学だ。自分の専門分野が(1)にない場合は、教員と相談して作ることも可能で、同期でジェンダー社会学の試験を受けた人もいる。ただ、基本的には(1)がブラウンの社会学教員が対応できる範囲で、自分だけの試験を作るのはおすすめされない(そもそも文献リストを作るのはかなり大変な作業である)。アメリカの社会学部の中でブラウンがまあまあ強いのは社会人口学、人種・エスニシティ・移民の社会学、開発社会学、環境社会学の4分野であり、これらの科目は特に受験する院生が多い。
本来のタイムラインとしては(6)で述べたとおり、3年生の1月と6月に受けるものなのだが、私は半年早く2年生の6月に最初の試験を受けることにした。これは特に珍しいことではなく、早くコースワークと試験を終わらせて博論にとりかかりたいという考えからのことである。
プレリム文献リスト(6)に掲載される論文は、当該分野のトップジャーナルの論文のうち、これまでその分野に与えた影響力が大きいと判断されたか、教育目的にふさわしい総説的な論文である。例えば社会人口学のリストはほぼ全ての論文がDemographyかPopulation and Development Reviewに掲載されている論文である。最新の研究というよりは、2010年ごろまでの間に影響力をもった論文が多い(教員側の「事情」により、最新の研究が反映されていないのは残念である)。
半年間、この試験への準備をするための個別指導を受けたのだが、「プレリム試験は分野内での共通言語をつくる制度」という趣旨のことを教員が述べていたのが印象的だった。確かに社会人口学のプレリム文献のリストを全部読み終わってある程度内容も頭に入った今は、社会人口学という分野で何がこれまで問題になってきて、ネットで見かけた最新論文Xはどこに位置付けられるか、10-20年前に書かれたどの論文と関連しているか、ということが頭に浮かぶようになってきた。
とりあえず合格したい。。
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