2018年2月24日土曜日

米社会学PhD出願の記録(8):出願に参考になるリンク集

1.はじめに

コロンビア大学の図書館
(先月、コロンビア大教育大学院に
留学している友人のK.Iくんを訪ねて
NYCを訪れた時の写真)
米社会学PhDコース(=博士課程)出願に参考になるリンクを以下にまとめておく。なお私の記事の参照にあたっての説明やdisclaimerはこの投稿シリーズの最初の記事を参考にしていただきたい。アメリカの主要な社会学PhD課程(USNewsRankで上位30位くらいまで)はここ10-20年ほどで、たくさん入学させ(=合格後に内部で競わせ)、一部の学生に奨学金を出すモデルから、最初の時点で少数を入学させて全員に授業料全額と生活費を5年間支給するモデルへと徐々に変化してきているということを聞いた(ソース:ブラウンの社会学の教授&准教授2人)。よって、できるだけ2010年以降の出願情報を中心に載せている。参考になると思うので、政治学や文化人類学など関連の深い分野の情報(注1)も一部載せている。なお、一部友人のF.Uさんよりいただいた情報も入っている。

注1:経済学は参考程度に二つだけ載せている。というのも、経済学とその他の社会科学(政治学、社会学、文化人類学)の日本からの出願では経験する障壁に量的・質的な違い(学問としての標準化の度合い、日米のネットワークの強さ、毎年の日本からの出願者の数 etc.)があり、経済学PhD出願の情報は政治学や文化人類学ほどには参考にならないと考えているからだ。ただ、私の1年目の経験からだけだが、アメリカでは日本よりも経済学と社会学の壁は低く、日本にいた時よりも交流の機会が多い(来年は経済学のコースワークをいくつか履修する予定)。

2. 出願に関する情報サイトへのリンク(英語)

コーネル大学社会学研究科の選考方法を具体的に説明したページ
ここまで詳細に選考方法を公式HPで明らかにしているプログラムは少ない。大学によってやり方はある程度違うだろうが、参考になる。

ミシガン大学社会学研究科のPhDアドミッションの統計
友人のF.Uさんより教えてもらったページ。ミシガン大学社会学研究科の統計ページ。選抜の厳しさをイメージするのに有効。性別やRaceなど社会的属性別にここまで具体的に公開している大学は少ないだろう。2012-2017の5年間の平均で毎年260人が応募し、12人が入学しているとのことである。ミシガンはトップスクールの一つだが、もちろん蹴る人もいると思うので毎年15-25人程度に合格を出しているのではないかと推測する。つまり、倍率は10-15倍程度ではなかろうか。なお、全在籍者の中で"International"は10%で、これには高校や学部からアメリカへ来ている留学生も含まれると思うので、米国外の大学からの出願にはさらに厳しい戦いだろう(海外の大学からミシガンの社会学博士課程に合格できるのは毎年1-2人以下だろうか)。給与等の経済条件の良い私立のトップ校(特にハーバード、プリンストン、スタンフォード)はさらに倍率が高いだろう(ソース:このリンク)。

インディアナ大学社会学研究科ファビオ・ロジャーズ教授によるPhDの選考委員の視点
これはインディアナ大学の先生がPhDの選考委員になったらどういう視点でアプリケーション書類を読むかを個人的に書いているページである。注意していただきたいのは、選考委員によるばらつきは大きいので、全ての先生がこのようにアプリケーション書類を読むわけではないということである。例えばここでは推薦状が軽視されているが、推薦状をとても大切にする先生はたくさんいるらしい。

・X大学社会学研究科の選考委員を務めた院生が事後的に匿名で選考プロセスを公開したスレ
アメリカの大学院では大学院生もPhDの選考に関わることがある。ここではその選考に関わった院生が赤裸々に内部で何が行われているかを彼女or彼の視点から書いて、質問にも答えていた(もう答えなくなっている)。なお、この院生の書き方から守秘義務には違反していないという認識のようではある。

The Grad Cafe Forum-Sociology
これは全米の大学院出願者が合否情報や出願情報を交換しあうサイトである。虚偽情報や真実か怪しい情報も流れているのでご利用は計画的に。毎年合格が出る頃になると、このResultsのページの中毒になる人が出てくる(出願を経験された方なら意味がわかると思う)。

Sociology Job Market Rumor
こちらは米の社会学界隈の2chみたいなサイト。時に虚偽情報が含まれているので閲覧には注意が必要だが、ためになる情報が載っていることもある。特に教員の異動のような日本では手に入れにくい「噂」が掲載されていることがある。このサイトはアメリカに来てから知ったのだが、出願の時に知っていれば、出願の志望理由書に「(既に異動する可能性が濃厚の)X先生と研究したいのが貴校を志望した主たる理由です・・・」みたいな愚かなことを書くのを回避して合格のチャンスをあげれたかもしれないし、出願校も変わっていたかもしれない。

3. 出願に関する情報サイトへのリンク(日本語)-個人体験記を中心に-

米国大学院生会のHP
この団体は日本全国の大学で毎年夏冬に海外大学院留学説明会を開いている。またニュースレターも発行している。ニュースレターや、各年に各大学の発表の際に配られた資料はこのHPに上がっている。ちなみに私も昨年クリスマスに東大での説明会に出たのだが、その時の資料はここから入手できる。

ブラウン大学社会学研究科博士課程のブログ管理人の出願記録
このブログの管理人(私)がまとめた9つの記事。米PhD課程の出願に関してはいろんな意見があるので差し引いて参考にしていただきたい。出願は2017年冬。

オックスフォード大学政治学研究科博士課程在学中の友人の出願記録
学部の頃からの友人のN.Mさんのブログ。同じ年(2017年冬)に彼は米英の政治学PhD課程に、僕は米英加の社会学PhD課程に出願した。政治学のPhD出願について米英の違いを念頭に13のテーマに分けて詳しく書いてある。とても参考になると思う。

アメリカの大学の文化人類学研究科博士課程在学中?の方の留学指南
オンラインでネットサーフィン中に見つけた文化人類学のPhD課程在籍中の方のHP。もしかしたらもう修了されているかもしれない。中にある情報を総合すると少なくとも2010年前の出願だと思われるが、匿名HPのために詳しいことはわからない。

ミシガン大学でアジア言語・文化研究科博士課程に在学中の方のHP
オンラインで見つけたHP。ディシプリンは文化人類学とのこと。HPの記述によると、2010年代前半に何度か出願を経験されたようだ。文化人類学での渡米はあまり聞かないので、上のブログと一緒に、貴重な情報ソースなのではないかと思う。

ラトガース大学公共政策学博士課程を修了された方のブログ
オンラインで見つけて、出願中に何度か読んで参考にしていたブログ。ブログの記述によると7年の間、合計5回出願にトライされて5回目に合格されたとのこと。現在は無事博士号を取得されて仕事を探されているらしい。正確にはわからないが、最近修了されたということは、出願は2010年ごろだと思われる。諦めずに困難に立ち向かおうとされているところが格好良くて、お会いしたことはないが、とても尊敬している。見習いたい。

ライス大学政治学博士課程を修了された方の出願記録
こちらも、オンラインで見つけたブログ。出願中に何度か読んで参考にしていた。ブログの記述を読む限り、2005年冬に出願されて、修了後にイギリスの大学に無事に就職されたらしい。すごい。

追記(2018.9.08):ウィスコンシン大学社会学部博士課程在学中の友人の出願記録
全米社会学ランキングTop5スクールの一つに2018年から留学される友人のF.U.さんのブログ。あのウィスコンシンモデルのウィスコンシン。2017年全落ちから諦めずに翌年にウィスコンシン社会学部合格はさすがで、その経緯も含め詳しく書いてあるのでとても勉強になる。Statement of Purposeの項目が特に参考になると思う。

-参考(経済学)-
・UCLAのマネジメントスクールで博士課程を修了されたI先生のHP
現在イェールの経済学部の准教授をされているようだ。著者の先生は2008年冬の出願だと思われる。

プリンストン大学経済学研究科博士課程修了されたY先生のブログ
ここの記述は博士課程に出願する方一般の心構えになると思う。著者の先生は2002年冬の出願だと思われる。


4. 社会学の大学院の評価サイトへのリンク


以下で、社会学の大学院プログラムのランキングを紹介する。出願の際には10校前後出される方が多いと思うが、ランキングは出願校を絞る際の参考材料として使うのが良いと思う。特にUSNewsランキングは有名で入学してからも学部内で言及されることがあるだろう。もちろん、あまり細かいランクの違いにとらわれるのは馬鹿らしいが、日本で想像されるよりもランキングは重要で、アカデミアでの就職に大きな影響がある(ソース:このリンク)。目安としては順位で10位、またはスコアで0.4ポイント以上の違いから「実際に意味がある」と捉えたら良いのではなかろうか(1位と7位に有意味な違いはないだろうが、5位と17位には有意味な違いがあるのではないかという個人的な感覚)。

もちろん、どんなランキングにも批判はつきもので、USNewsのランキングもNRCのランキングも色々なところで痛烈に批判されている(ソース:批判の具体例はこちら)。ただし、マートンの「予言の自己成就」のような形でランキング自体が序列をつくるというのも事実で、出願するプログラムがどうランクされているかは一応知っておいた方がいい。ちなみに、日本で報道されるTimes社やQS社などのイギリスのランキングはアメリカの大学院レベルではそんなに気にされていない印象である。

USNewsの全米の社会学大学院のランキング
4年おきに公開されるUSNews社による全米の社会学大学院の格付け。最新のランキングは2017年。全米の大学の社会学学部長と大学院DGSに自分の大学以外の社会学大学院を1から5まで格付けしてもらい、その平均を取った単純な専門家評価だが(詳しい計算手法:このリンク)、とても強い影響力をもっている。このランキングで上位40位以内くらいに入っていたら大方の日本の大学院よりは良い経済的サポートを受けられる可能性が高いとだろうし、教育レベルもどこもある程度は体系化・標準化されているのではないだろうか。

もう一つ重要なのはUSNewsの社会学の下位分野のランキングである。例えば社会階層論社会人口学歴史社会学など分野ごとにランキングがあり、こちらも参考になる。各大学の社会学部長と大学院DGSが「この分野はこの大学が強い」と考えた大学の名前を自主的に記入して、一定回数以上名前が挙げられた大学しか載らないので、下位分野ランキングに大学名が載っている=その大学はその特定分野ではアメリカの専門家の間で評価されている、と考えて良いと思う。

NRCの作成した全米社会学部のランキング
USNewsのオルタナティブとして参考にされるランキングである。NRCとはNational Research Councilという日本でいう日本学術会議のような組織で、そこが主導して作成したランキングである。USNewsRankほど言及されているのをみないが、もう一つの指標として参考にされたい。

トッププログラムへの就職者数等のランキング
全米各大学の社会学PhDプログラム修了者の、USNewsランキング上位10校への就職者の絶対数や卒業生の数に対する比率などを計算したブログ。院生の就職に対する態度に影響する気がする。例えば私がいるブラウンはご覧の通りこのリストにランクインはできている(fig1やfig2を参照)ものの(言い訳だが、このリストに載るだけでかなり良い方)、ハーバード、ミシガン、シカゴみたいな大学に比べると圧倒的に弱いのがわかる。先輩をみていてもR1(注2)ではない大学や民間への就職を目指す人も多い。ハーバードやミシガンのような大学に行くとR1大学での就職一直線という雰囲気が形成されており、実際の能力や業績が高いのとともに、それらをコントロールした上でも残る威信や周囲から得られる期待など「R1大学就職に有利になる何か」があるのではないかと思う(勝手な推測)。アメリカのトップ大学に教員として残ってやろうという野望があるなら、このランキングは特に参考になるだろう(僕もちょっとはあったが、最近は「とりあえず生き残ってPhDを取ろう」と思うようになってきてしまった)。

注2:カーネギー財団はアメリカの大学をいくつかに分類(カーネギー分類)しており、R1大学とは博士課程を授与する大学の中でも特に研究活動が盛んな100校程度を指す。リベラルアーツカレッジを除いて、日本で知られているアメリカの大学はほとんどこのR1大学である。USNewsの社会学ランキングで上位100位以内に入っているのもほとんどこのR1大学で、研究者としてはR1大学に就職することができたらいいのだろうが、皆がR1大学に就職できるとは限らず、R2、R3大学や博士課程を授与しない無数の大学へ行く人々がほとんどのようだ。

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