2020年10月7日水曜日

近況1007:大学のコロナ対応、博論テーマ、R&Rなどなど

昨日(米国では本日)で29歳になりました。メールやFBでメッセージを下さった方々ありがとうございます。最近はブログを書くのが億劫になって更新していませんでしたが、読んで下さっている方もいるようで久々に更新したいと思います。ちなみに、夏は1.5ヶ月ほど日本に帰国していましたが、現在は再びアメリカに戻ってきています。以下、(1)大学のコロナ対応、(2)研究、(3)ウィズコロナライフについて書きます。

(1)ブラウン大のコロナ対応

コロナ検査

コロナは大丈夫か?という質問をよくいただきます。日本のように落ち着いてはおらず、国レベルでみると毎日4万人ほどの感染者が出ていますが、僕が住んでいるプロビデンスは比較的落ち着いております。ちなみに、私の所属するブラウン大学では、普段大学に来る全教員・職員・大学院生・学部生に対して、毎日アプリで大学に健康を報告し、さらには最低週2回コロナの検査をすることを義務付けており、3日に1度大学の体育館でコロナ検査を受けています。綿棒で鼻の粘膜をとる簡易なもので2分程度で終わり、検査キャパはかなりあるので、並んだりする必要もありません。検査会場入場から退出までだいたい5分くらいです。

以下の写真は私のiPhoneのスクショですが、このような感じで検査結果は12時間後くらいに出て、今後半年ほどは検査結果をスタンプのように集める日々が続きそうです。ちなみに検査していないと大学から個別メールがきて、場合によっては処分されます。大学のコロナ対策ホームページでは日々の検査結果がアップデートされており、情報収集と情報公開のあり方には関心させられます。ちなみにホームページによると、大学では8月24日から無症状者延べ51851人の検査を行い、陽性は26件(陽性率は0.4%)、ここ1週間に限ると延べ9363人の検査を行い、陽性は9件(陽性率は0.1%)だそうです。



博士課程の新規募集一時停止

仕方ないことなのですが、大学のコロナ対応で悲しかったのは、ブラウンの人文・社会科学系の大多数の博士課程プログラムの来年9月に入学する新入生の募集が全面的に停止され、社会学部でも募集が停止されたことです(恒久的なものではなく、再来年再開予定)。なお、これはブラウンだけでなく、全米の博士課程で同じような対応をとるところがチラホラみられます(社会学だと、プリンストン、ペンシルヴァニア、コロンビア大など)。

アメリカの人文・社会科学系の博士課程は基本的に大学院が学費と給料を支給するのですが、コロナで大学の財政が圧迫されていることと、博論の研究(特にフィールドワークをしている人に多大な影響が出ています)がコロナで中断してしまった院生に博士課程7年目への延長を認める動きがあり、「既に在学している院生にお金を回す」という大学経営側の判断のようです。理工系に関しては、教授や学部が外部資金を獲得し、その外部資金で博士課程の院生に給料を払っているところが多いこともあり、人文・社会科学系ほどには影響は出ていないようです。

なお、体系的に調べたわけではないですが、一時募集停止措置をとっているのはお金に余裕があるはずの私立大学に多い気がします(特にアイビーリーグ)。私の予想ですが、有力私立大学の人文・社会科学系は博士課程の院生の労働力への依存度が低く(例えば、私は6年間で1年だけTAをすれば良い契約で、中には1度もTAをせずに修了する人もいます)、自分の研究だけしながらフェローシップの形で給料を支給される人が多いことに起因すると思います。逆にいうと、大学側からすると、人文・社会科学系の院生は金銭面では最も負担が大きい存在で、不況時には切りたくなる存在なのかもしれません。

(2)研究

日系アメリカ人の社会移動:多分、博論

博論プロポーザルディフェンスの日程が決まり、2021年4月6日(火)EST12:00になりました。これにパスすると、晴れて博士候補(Ph.D. Candidate)になれ、博士5年目への進級(?)が認められます。まだ正式なOKは出ていないのですが、博論は19世紀末から20世紀初頭に米国に移住した日本人(aka 日系アメリカ人)と世代内&世代間社会移動について3ペーパーを組み合わせる形で書きたいと思っています。このテーマに関する研究は歴史学では多いのですが、社会人口学的な視点からのものは少なく、また学部生の頃から関心のあったことなので今のところは博論のテーマとしてしっくりきています。

メインのデータは強制収容所に収容された日系人全員の行政データと1960年代に行われた日系アメリカ人のサーベイで、特に前者を氏名と年齢と性別と居住地などを使って1910、1920、1930、1940年の米国国勢調査個票にリンクし、数万から十万人のパネルデータを構築しようとしています。いわゆる"Historical Census Linking"で、この夏にRAとしてやっていたことなので理論上はできるはずなのですが、当時の日系人の国勢調査上のスペリングはかなりいい加減で、これをアルファベット文字列の順番の近さ、発音した時の音声などでマッチングして、(1)どれだけのマッチング率が得られるか、(2)マッチングはどれだけ正確か?ということを丁寧に検証する作業をする必要があります。これがあまりにも残念な結果であれば、博論のメインデータ(=ジョブマーケットペーパー)には使えないことになります。

ここにさらっと書くと簡単に思えるのですが、Census Linkingは少しだけ高度なプログラミングや機械学習の知識が要求され、「伝統的な」社会人口学のトレーニングを受けていた身としては少し辛いです。現在以下のR&Rに対応中で、まだ手をつけられていません。。

なお、博論に入れるかはわからないですが、日本のデータとも組み合わせる形で、20世紀初頭にアメリカに渡った日本人の選抜性(セレクティビティ)に関しても論文を書いています。これは先日プリンストン大を中心にした若手の某研究会で発表させていただいたのですが、来年1月末までには人口学系の雑誌に投稿したいと考えています。


現代米国移民の社会移動研究:R&R対応中

現代米国の移民二世の子どもの間の学力格差をライフコース論と社会移動の観点から扱っている論文(昨年提出した修士論文)、トップジャーナル2誌(ASRとD)にリジェクトされた後、某トップフィールドジャーナルに投稿していました。投稿から半年ほど経って忘れかけていた頃、査読結果が届き、R&R(=査読者の要求にあわせて修正したら掲載できるかもしれない、というお知らせ)がもらえました。このジャーナルの掲載率は10%程度なのですが、おそらくR&Rがもらえた時点でこれを50%前後にできているという認識です。このジャーナルはフィールドジャーナルにしては査読が丁寧なことで特に有名で、エディターコメントとレビューワーコメントあわせると3600単語あり、コメントを25に細分化して対応しています。コメントの質も高く、特にエディターと副エディターには感心しました。エディターはどういうモチベーションでやるのか気になりますが、他の人の研究のための無償労働にとても感謝してます。

一応、再分析と原稿の修正は終わり、査読者へのレスポンスレターを書いています。レスポンスレターだけでシングルスペース13ページを越えていて、新しい別の論文を書いている感覚を覚えます。もちろん、どんなに頑張っても、掲載される保証はないわけで、小手先な対策ではなく(もちろん小手先の対応もしますが)、落とされて別のところに投稿しても掲載されるようにペーパーをよりよくするつもりで頑張っています。ただ、少しこの研究には「飽き」がきていて、早く手放したいです。

なお、おそらく次に来る連絡も、リジェクトか、2nd R&R(=2回目のR&Rが貰えると、掲載確率は80%くらいに上がる印象です)だと思います。ここによく載せる教員によるとR&Rが連続3回以上あることもあるらしく、今の目標では2021年12月までのアクセプトを目指したいと思います。


現代日本の移民の研究

こちらは細々と続けていて、もし将来日本に(研究者として)戻れることになったらメインの研究になるのではないかと考えています。現在は主に3年前からメンバーとして関わっている「くらしと仕事に関する外国籍調査」を基にいくつかの論文を書いています。今のところは移民研究の中でも古典的(だけど最近はあまりされていないテーマ)の(1)永住意図、(2)帰化希望に関する論文と、共著で(3)職業達成に関する論文を書いています。ほとんど英語で書いているのですが、永住意図に関しては日本語で書いており、来年中には世に出てくれるのではないかと期待しています。


(3)ウィズコロナライフ

今年のルームメイトは全員ブラウンの院生で、中国(比較文学)、韓国(経済学)、インド(計算機科学)、ペルー(生物学)、日本(社会学)とアジアからの留学生中心になっています。コロナで家にいる時間は長いので、ルームメイトは大事です。比較的仲がよく、テニスをしに行ったり、日曜の午後は毎週3時間の散歩をしてコロナ太りを抑制しようとしていて、大変ながらも、楽しいです。あと、時々一緒に天体観測をしています。


ある日撮った月
ある日撮影した月

散歩中に出会ったカミツキガメ

大学のマスコット(ブラウンベアー)










2020年7月1日水曜日

近況0630:ロックダウン後、初の更新

久々の更新になった。最後にブログに投稿した時にはまだ日本の方がコロナで騒いでいる頃で、シンポジウムでの研究発表のための一時帰国が無期限延期になり、残念がっていた頃だった。その後アメリカがコロナで大変なことになり、さらに黒人男性が警察に殺害された事件を巡って国が混乱し、今に至る。この間、ずっとアメリカにいて、この国の激変・激震を肌で感じることができた。プロビデンスでは、「暴動」を鎮めることを目的とした戒厳令(夜間外出禁止令)までの経験した。この3ヶ月は一生忘れないと思う。ちなみに、現在私が住むロードアイランド州はPhase 3の段階におり、レストランの店内飲食等も制限付きで可能になっている。

更新しようと思っていたのだが、コロナ中にtwitterを再開したことや、TAでのコロナ対応とプレリム試験の準備でとても忙しかったこともあり、更新が止まってしまっていた。今日までに色々としなければならないことを終わらせたので、近況を軽く記しておく。また徐々にtwitterではなく、ブログに戻ろうと思う。

1. 全てのコースワーク&全てのプレリム試験を終えた(博士課程前半戦3年間を終える)
Ph.D.課程修了に必要な24のコースワークを選択科目含めて全て履修し終わった。なお、24科目というのは米国の他の社会学Ph.D.課程と比べても多く、理論上は3年の終わりまでフルにコースワークに費やさなければならない量であるものの、私の場合、東大の修士でとったメソッド系の科目が認定されたため、7科目分は免除になり、最初から17科目をとれば良かったので少し楽だった。

以前も何度か書いたが、博士課程3年の終わりまでに2科目の専門分野の試験(プレリム試験)に合格しなければならず、2つ目の社会的不平等論(Social Inequality)の試験を先週受検した。試験はテイクホームで、月曜朝9時に4問の問題が送付され、そこから2問選んで、水曜の5時までに20-30ページの答案を作って返信しなければならない。落ちたら退学なのでプレッシャーである(1度は再受検できる)。とりあえず時間がなく、3日間休むことなくひたすら書いていた(新たな論文を読む時間的余裕はほぼない)。

勉強は試験3ヶ月くらい前から徐々にした。去年受けた社会人口学は明確なサブフィールドで、必読文献リストは人口学二大雑誌(DemographyPopulation and Development Review)に掲載された150本ほどの論文が中心となっており、勉強もしやすかった。

一方、社会学のほぼどんな研究も何らかの意味で「不平等」に関わるという意味で、社会的不平等論は明確なサブフィールドではなく、結構苦労した。他の大学では社会階層・社会移動論分野(social stratification and mobility)としてこの分野の試験をするところが多数派のようだが、ブラウンの試験は狭義の階層論より意図的に広く浅い範囲設定になっていた。

必読文献リストは120本程度で少なく、ASRAJSSocial Forcesに掲載されたものが中心だったが、本も10冊程度指定されていて、本を読むのに時間がかかった。また、過去問をみたところ、どう考えても文献リストからだけでは対応できそうになかったので、リスト外の重要な論文・本を+150本程度読んで頭に入れた(おかげでかなり勉強にはなった)。まだ結果は発表されていないが、「風の噂」によると合格したらしいのでとりあえず安心している。

コースワークとプレリム試験を無事に終わらせたことで博士課程6年間のうちの前半戦3年間をコンプリートしたことになる。素直に喜びたい。残りは後半戦2.5-3.5年間だ。

2. ティーチングアシスタント業務
コロナ前までは週に1時間、教室で学生の顔を見ながら授業をしており、ある程度うまく行き始めていた矢先(主観)、コロナでオンラインになり、とても苦労した。Zoomでは、学生のほとんどは顔が隠れるので表情が見えず、英語の非ネイティブがいかに顔の表情や身振り手振りなど非言語コミュニケーションに頼っているかということを実感させられた。もちろん、学生にビデオをつけるように頼むこともできるが、経済的な問題からオンライン環境が整っていない学生もいると考えられ、それは控えることとした。

Zoomで授業をするにあたり、iPad Proと高さ調節可能のデスクが役にたった。立っていると気合いを入れて教えられ、i Pad ProはZoomと連動させてホワイトボード代わりになる。また、i Pad Proを使えば、学生の課題を紙感覚で採点でき、そのままPDFとして返却すれば良いのでそういう意味でも役にたった。

スタンディングデスクとiPad Pro
オンライン化でもう一つ苦労したのが試験作成である。中間試験と期末試験ともに、オンラインで試験をするためのプラットフォームを作るように依頼された。試験問題を教授が作成し、それが僕に送られてきて、なんとかそれをオンラインで実行できるように僕が「工夫」する、というわけだ。ちなみに、授業は一般化線形モデル全般を扱う応用社会統計のコースなので、計算と表の解釈問題が中心である。

色々検討して、採用したのがQualtricsというオンラインサーベイ用のサービスだ。テスト用に作られたソフトではないが、様々な機能がついているので、試験用にカスタマイズしやすかった。採点も学生を行、各設問を列にする形式で出力できるので、採点は楽だった。ただ、やはりこの試験のオンライン化で4-5月のかなりの時間はもって行かれた。

嬉しかったのは、事後匿名アンケートの学生の評価がとても高く、平均が5.0点満点中5.0点だったことと、教授からTAのお礼にお菓子が送られてきたことだ(お菓子はどういうわけか日本のヨックモッククッキーだった)。次にいつ教えることになるかわからないが、教育の面もっと磨いていかなければならないと思った。

アメリカでも購入可能だと判明したヨックモッククッキー

3. ファンディング
来年9月から始まるPhD課程4年目はブラウンの人口学センターからFellowshipという形で給与をいただけることになった。Fellowshipの何が良いかというと、TAやRAをしなくてもお金が入ってくることだ。5年目と6年目は学部からFellowshipをいただけることが、入学時点の契約で決まっていた(はず)なので、修了までの残り3年間は研究に集中できることになる。人口学センターは基本的にNIHからのお金で運営しており、留学生へのFellowshipは毎年2名と限られている。結構ラッキーだったと思う。

4. 夏の予定と今後
基本的には夏は博論計画書と、博論とは別に書いている論文2本を進める予定である。また、夏の収入源として、ペンシルヴァニア州の100年ほど前の各種アドミンデータを国勢調査の個票にリンクする作業のRAをしている。72年経つと国勢調査データが公開される米国のルールは素晴らしいと思う。

2月に投稿した論文はまだ返ってきていない。デスクリジェクト、レフェリーリジェクト、RRのいずれにしろ、再分析をすることになるだろうと見込んで、機密データ室へのアクセスを申請したところ、定期的に大学でコロナの検査を受け、毎日大学の健康管理アプリに体調を入力することになり、少しめんどくさいことになっている。

庭でバーベキュー中に出現したブルージェイ
日本に一時帰国する予定をたてている。できれば7月中旬-8月上旬には帰国したい。アメリカは毎日3万人-4万人感染者が出ているので、2週間の自宅待機が日本政府から要請されることはやむを得ないと思われる。

現時点での最大の障壁は、帰国者は公共交通機関の利用が禁止(国内便乗り継ぎ含む)されているので、京都市にある実家に帰るには、アメリカから関空か伊丹への直行便を予約しなければならないことである。関西への直行便はコロナ前は毎日西海岸からあったのだが、5月以降は基本的にキャンセルになっており、数少ない特別便は5000ドルを超えている。なんとか安く日本に辿りつきたい。

2020年3月3日火曜日

近況0303:MA州セーラム、帰国キャンセル、TA、スタートレックなどなど

数週間ぶりに近況報告。トピックに分けてざっと書いた。

(1)マサチューセッツ州セーラムへの旅行
ブラウン大学の国際オフィスでは、学期に数回、留学生のための日帰り旅行を企画しており、土曜日に3年目にして初めて参加してきた。今回の行き先はマサチューセッツ州のセーラムで、一度は行ってみたかった場所なのでちょうどよかった。


合衆国史に詳しい方ならピンとくると思うが、1692-93年にかけて、魔女狩りが起こったことで有名な町である。ちなみに、魔女狩りは同時期のヨーロッパでは既に衰退しており、なおかつそもそも北米大陸ではほとんど起こらなかったので、セーラムの魔女狩りはかなり特殊なケースである。

写真1:セーラム魔女博物館

車があればプロビデンスから北に2時間なのだが、直通の電車やバスがあるわけでもなく、車の免許も持っていないので、これまでずっと行くのを躊躇していた。今回の旅は大学があの黄色いスクールバス(写真2)を貸し切り、現地到着後は自由行動という快適なものだった。

写真2:黄色いスクールバス


(2)帰国キャンセルと某アメリカの航空会社への怒り
数年前から日本の外国籍者の全国調査に関わらせていただいており、その報告を行うシンポジウムに出席するために3月末に一時帰国する予定だったのだが、新型コロナウイルスの影響でシンポジウムが延期となり、帰国をキャンセルすることとなってしまった。

今回のキャンセルはドタバタだった。これまで、一番安いnon-refundableの航空券の購入経験しかなかったのだが、今回はキャンセルの可能性を見込み、予約前に電話で確認して、人生で初めてキャンセル料が一切とられないはずのrefundableのチケットを購入していた。しかし、いざキャンセルをしようとすると全額が請求されてしまい、流石に某アメリカの航空会社に対して怒りの感情が湧いて来て、その夜はよく寝れなかった。

後に電話がかかってきて、全額請求は向こうの間違い(なぜこういう間違いが起きるのかは本当に理解不能)で、変更手数料300ドルだけがかかるということを告げられた。予約前に電話で確認したときは、変更手数料さえかからないと言われたことをほぼ確信している(二回確認した)のだが、証拠を残していなかった(録音しておくべきだった!!)ので、今回は引き下がることにした。まだ交渉中なのだが、ブラウン大学が変更手数料を負担してくれることになりそうで、コロナによる経済的損失は回避されそうである。ただ、この経験で怖くなり、4月のPAAと5月のRC28の航空券はもう少し様子を見てから購入することにした。


(3)TA
先週から授業参観に来た方のアドバイスに基づいて、学生を2名ずつのチームに分け、私の作ったデータ分析課題をStataを使ってこなしてもらうグループワークを授業に取り入れ始めた。これは上手く言っている気がする。

講義中、英語文法や表現が乱れ、それを意識しすぎてさらに崩れていくという悪循環が時々起こってしまう。あと、発音を意識しすぎている気もする。これは英語の問題というよりは、パブリックスピーキング能力の問題な気がしており、なんとか大学院生の間に改善をしたい。パブリックスピーキングがうまくいかない原因は色々あろうが、高校の時に大観衆を前にしたスピーチで大きな失敗をしたことがトラウマになって、大勢の前で話すと過度に緊張してしまうことが主要な原因な気がしている。あと、準備に時間がかかりすぎている気がするが、準備にかけた時間はその日の講義のクオリティに比例する気がするので、手は抜けない。

わかりやすい説明の模範探しにネットの動画を検索することもあるのだが、英語では素晴らしくわかりやすい動画がたくさん出回っている。特に、一般化線形モデル(GLM)のように理工系から社会科学系まで広く需要のあるテーマはたくさんの動画がある。もし英語で教える必要があれば、とりあえずググることをお勧めする(信頼性の低いものもあるので注意)。


(4)お別れ会
お世話になった日本人の先輩が無事にPh.D.を取得されて、就職されるということで金曜は夜遅くまでお祝いのために飲み会をしていた。経済学Ph.D.課程の先輩なのだが、3年間人口学センターでオフィススペースをシェアしていた。ブラウンから合格をもらった3年前の今頃、ネット検索で先輩のHPに辿り着き、一切面識のない私の進学相談に親身にのっていただいたり、契約しようと思っている家を下見していただいた。Ph.D.取得&就職おめでとうございます。

(5)研究
リジェクトの続いている論文は某フィールドトップ誌に投稿した。デスクでも3ヶ月はかかるとの噂の遅いところなので、気長に待ちたい。博論構想も進めており、初期段階のものをゼミで発表したところ、悪くはない反応だった。まだこう相談会で、ここで具体的に書く段階ではないのだが、どんどん進めたいと思う。

(6)スタートレック
Star Trek: The Next Generation(TNG)は全て観終わり、TNGに続く映画3部作も観て、最近はCBSで放映され始めたStar Trek: Picardを毎週楽しみにしつつ、Deep Space Nineシリーズに入った。Star Trek: DiscoveryとEnterpriseシリーズは視聴済みである。ハマりすぎて、Enterprise NCC-1701-D(TNGのEnterprise)の模型を購入してしまった。少し罪悪感があったのだが、大統領候補(だった)ブティジェッジも同じ趣味を持っているようで嬉しかった。

2020年2月18日火曜日

博士課程修了者の就職先の把握

私の所属する博士課程に合格したという方とSkypeで話す機会があって、その時に少し思ったことを、2年前に書いた大学院出願に関する諸々の記事に追加という形で記しておく。出願校を選択する前または入学先を迷っている時には、直近のプレースメント情報(博士号取得者の就職先)「も」調べた方が良いと思う。なぜか私は3年前にそんなに気にしてなかったが、今だったら絶対に調べる。

どうやってこの情報を探すか?大学名+学部名+Placementでネット検索すれば出てくるはずである。なお、東海岸のHやPや、西海岸のSのようなほとんどどの分野でもトップ・オブ・ザ・トップの大学以外の大学で、この情報がどこにも見つからないとか、非公開の場合は、少し慎重になった方が良い気がする。ただ、もちろん、単純に更新してないだけかもしれないのでまずはメールで問い合わせるのがいいだろう。

大雑把な指標だが、このプレースメント情報を調べることで、出願先の大学から博士号をとったあとに自分が行き着く初職のイメージがつくはずである。例えばブラウン社会学部の過去10年のプレースメント情報はこのリンクに載っており、直近10年の全ての博士号取得者の名前と初職(注1)が公開されている。もちろん、民間就職した人の名前と就職先も載っている。過去10年の博士号取得者の初職は、40%程度がAP(助教授)、40%程度がポスドクやその他研究職、残りが民間(世界銀行等の国際機関含む)といったところで、それぞれの就職先もわかる。さらに名前をググりさえすればそれぞれのその後のキャリアもわかる。

もちろん、最終的には自分の実績と空いているポジション次第なことは確かだ。ただ、進学予定の学部のプレースメント情報はプログラムの雰囲気や教員が院生に抱く期待も反映していると思われるので、知っておいて損はないはずである。

プレースメント情報からもう一つ推測できるのはPhDプログラムの規模である(注2)。例えば、私の所属学部は毎年5-10名受け入れている小規模な学部なので、毎年の修了生もそんなに多くない(私のコホートはたまたま15名ととても大きかったが、私の前後のコホートは5-6名である)。規模が小さいPhDプログラムと大きいPhDプログラムにはそれぞれの良し悪しがある。小さいプログラムは研究分野にかかわらず同期の結束がかなり強いと思う。また、内部でのリソースをめぐる競争が激しくなく、かつ、先輩・後輩をも含め、全員と知り合いになることが標準であろう。一方、研究関心がぴったりの同僚は見つけにくいかもしれず、かつ、大きなプロジェクトはそんなに大学内で走っていないかもしれない。自分の性格にあうのがどういうプログラムかをしっかり考えるのをオススメする。

(注1)なお、ポスドクとAP(助教授)が併記してある場合は、ポスドクとAPのオファーを両方受けた上で、APになるのを送らせて、ポスドクを先にやっているものと思われる。こういう人たちはいわゆる完全な「勝ち組」である。
(注2)もちろん、途中でやめる人が多いために、修了生が少なくなっているということも考えられる。こういう内部情報は各大学院の大学院生にメールして聞こう。

2020年2月17日月曜日

TAのトレーニング(ファカルティ・ディベロップメント)

日本でも大学院生のファカルティディベロップメントが流行りであるが、アメリカの大学(注1)でもTAのスキルアップを目的として様々なプログラムが組まれている。私が所属するブラウン大学社会学部博士課程の大学院生が最低限しなければならないのは、Ph.D.取得までに大学が運営する1学期分のトレーニングプログラムに参加して、Teaching Certificate Ⅰ を取得することである。なお、ブラウンでは、この資格は社会学部を含む多くの学部で「必修」(但し、罰則なし)扱いとなっている。

ブラウンのTeaching Certificate Ⅰ を修了するためには、(1)4回のオンライン講義の受講、(2)4回の課題の提出、(3)4回のセミナー(1回1.5時間程度)への参加、(4)TAとして授業をしているところを1回「授業参観」されてフィードバックを受ける必要がある。オンライン講義、課題、セミナーは毎回テーマが決まっており、テーマに合わせた論文等も読まされて、割と気合いを入れてプログラムが練られていた。特に印象に残ったことの一つが、大学における教育実践事例の報告サイトから、他分野(e.g., 物理学)の教育実践で、自らの分野(e.g., 社会学)の授業に取り入れたいアクティビティを選んで、授業への組み込み方をチームで検討するというものであった。上記サイトはアイデアの宝庫なので、大学関係者の方は参考になるアクティビティを探してみると良いと思う。

私は、先学期に(1)オンライン講義、(2)課題、(3)セミナー参加は既に終わらせてあり、残りの(4)TAとして講義しているところを「授業参観」されてフィードバックを受ける、というのも最近終わらせた。今学期は大学院生の多変量解析のコースのTAを担当しており、担当教授の3時間の授業とは別に、TAとして週1.5時間程度の授業(主に実習)を担当しているので、その私の1.5時間の授業を「授業参観」され、フィードバックを受けた。フィードバックはとても丁寧で、具体的には以下のプロセスで行われた。

2週間前:シラバスを送付(TAでも1人で毎週セクション等を担当する場合はシラバスを独自に作成している)
1週間前:事前面談(フィードバックが欲しい点を事前に申告できる)
当日: 授業参観される(かなりじっくり「参観」され、希望があればビデオ撮影もされる)
翌日: 良かった点 &悪かった点のフィードバック

授業翌日のフィードバックの際には図1と図2のようなメモ(エスノグラファーのフィールドノーツのようだった)を基に、次のTA講義での改善点を指摘された。特に有り難かったのは質問に答えるのが一部の学生に限定されていたことを指摘された上で、全員の発言を促すための具体的アドバイス(案)を複数いただけたことだった。

図1:クラスの座席配置と発言回数に関するフィードバック

図2:フィードバックフォーム
(何時何分に私が何をして、その行動のどこが良かったかor悪かったかが記されている)

丁寧なフィードバックはとても役にたった。特に人前で話すことに苦手意識を持って生きてきたので、今回のフィードバックをきちんと生かしてさらにより上手く教えることができるようにしたい。

なお、TAにフィードバックをする仕事をしているのは特別なトレーニングを受けた大学院生であった(これをすることで大学から給料を支給されているらしい)。私の担当の方は某外国文学の専攻のD6の方で、博士号取得後は大学のファカルティディベロップメントに関わる仕事につくことを検討しているらしかった。私もさらにトレーニングを受けてこの仕事をするのも良いかもしれないと思った。

(注1)ほとんどの大学で何らかの形でのTAトレーニングは行われているであろうが、大学によって事情は大きく異なる。ここに書かれているのはあくまでブラウン大学というアメリカの一大学の事例で、過度な一般化はしないで欲しい。

2020年2月4日火曜日

近況報告0204:生活、差別、TA、研究、コースワーク

アメリカに戻ってきて3週間ほどがたった。ちょっと想像以上に忙しく全く更新できていなかったが、今日は第一回目のTAも終わって、少し落ち着いたので記録を残しておく。

生活
3年もいると、どんどんプロビデンスのような中規模都市(日本基準では「地方都市」)に慣れてきて、東京は人が多すぎると感じるようになった。車の免許さえとれ、かつご飯が美味しければ、もっと田舎町もいけるかもしれない。食事だけは日本が恋しく、最近は写真のような品々をよく食べている。冷凍が多く、東京の水準には達しないものの、NYCやボストンやシアトルに住んでいないのに、これら食材を定期的に確保できるのは上出来な気がする(自画自賛)。特に牛丼の味は全く日本と変わらず、並・汁だくの吉野家牛丼である。自分は松屋派なのだが、そこは我慢しておく。

今川焼(あんこ)(冷凍)

吉野家牛丼(冷凍)

炊き込みご飯

明太子スパゲッティ

差別経験
先日ワシントンDCにいた時に、大柄の男性二人から"Coronavirus!!"(意味:「コロナウイルス 野郎!」) "Your name is Wuhan!!"(「お前の名前は武漢だ!」)と執拗に絡まれた。NYCなどの大都市を歩いている時に"Go back to North Korea"(「北朝鮮へ帰れ!」)とか"Go back to China"「中国へ帰れ!」とか言われたことはあるのだが、罵声を浴びせながら歩く後をついてこられたのは初の経験だった。夜道で、一人で、かつ大きな荷物を持っていたので少し怖かったが、英語がわからないふりをしてポーカーフェースを保っていたら去って行った。いつもは全く何も思わないのだが、今回は少し疲れていたのと、罵声が長時間にわたったので少しだけ言い返すことを考えたのも、冷静に対処して正解だった。

ちなみに日本人として「正しく」差別されたのはハワイで"Fucking Jap!"(くそジャップ!)的なことを言われた時("Jap"が入ってきたのは覚えているのだが、正確には覚えていない)だけである。なお、大学の周辺では一度もこういう経験はないのは嬉しい。

ちなみに、これは特殊な経験である可能性があるので、過度な一般化はしないで欲しい。実際にアジアからの留学生の友人で、二年半でまだ一度もこういうことを言われたことがないという友人もいた。


ティーチングアシスタント(TA)
今学期は大学院博士課程1年生の必修の多変量解析のコースのTAになった。アメリカの社会学部の博士課程では、1年生秋学期にOLSの基礎を徹底的に叩き込み、1年生春学期に一般化線形モデルに拡張をする。

僕の仕事は週1時間半のレクチャー、週2時間のオフィスアワー、提出物の採点である。人数は20名以下と少ないものの、博士課程の院生を相手に1時間半話すことを用意するのは結構大変で、準備は丸一日かかった。来週はTAに対してfeedbackする専門の委員が自分の授業参観をしにくるらしく、それも少し緊張している)。

研究
Dからリジェクトされた。しかも、1ヶ月半経ってのデスクリジェクトで少しびっくりしたが、仕方ない。次に出すジャーナルを検討中。指導教員には(6年生でジョブマーケットに出ると仮定して)「4年の秋が終わるまで」は「強気」でより評価の高いジャーナルにいくようにアドバイスされたのだが、少し疲れてきたので、どうしようか考えている。

今年は日本にいる外国人移民の研究も徐々に研究を始めていく予定で、先行研究とかを集め始めた。今年中に一本論文を書きたい。

博論は(1)ローリスクローリターンなテーマと(2)ハイリスクハイリターンなテーマ(主観)で迷っている。まだ決められない。。

コースワーク
今学期は先学期から履修している(1)論文執筆法のコースと(2)GISのメソッドコースの2つだけである。あとは自分の研究を進めるのとプレリム試験の勉強に時間を割こうと思う。

2019年12月26日木曜日

『海外で研究者になる』を読んだ

大学院生の間で話題になっていた以下の本を読んだ。




著者の増田先生は東大情報理工学系研究科の准教授を経て(博士号も海外ではなく東大)、イギリスの大学へ移られた方で、海外で研究者として働くことについてご自身の経験を中心に、他に海外で働く十数名の日本人研究者へのインタビューも交えて、解説されている(先生は2019年夏からはイギリスからアメリカの大学に移籍されたようである)。

私が気に入った点は以下3点である。

(1)アメリカ・ヨーロッパに偏っておらず、中国、香港、韓国、シンガポール等の大学で働く日本人研究者の事情も詳しく取材されていること。今後の日本人研究者の活躍場所が日本以外のアジアとなると増田先生がお考えになっているかららしい。

(2)理工系に限らず、人文・社会科学系の研究者の事例も紹介してあること。最初この本が出たときには「理工系だけの事例を集めた本」だという勘違いをしてしまったが、実際に読むと経済学、社会心理学、考古学、演劇学等の社会科学や人文学系の研究者の事例もきちんと取り上げてあった。

(3)日本で博士号を取ってから、ポスドク以降に海外に移り、そのまま現地就職した事例も取り上げていること(そもそも、この本ではこのルートがメインに考えられている)。

私がアメリカの博士課程に出願する前には可能性を考えなかったのだが、この本に取り上げられている諸先輩方のように、日本国内の大学で博士号を取得した後に、ポスドクから日本国外に出るという選択肢もあり得たのかもしれない。もちろん、社会科学系の場合は理工系に比べると研究そのものや博士の学位に地域性がある気がするので壁はより高いかもしれないが、この本でとりあげられている諸事例のように成功例も一定数あり、不可能ではないのだろう。