最近はひたすら6月末のpreliminary exam (プレリム試験)の勉強をしている。プレリム試験は、他大学ではcomprehensive examやqualifying exam等の名称で呼ばれることもある。大学や博士課程のプログラムによって形式は大きく異なるが、ブラウン大学の社会学Ph.D.課程では以下のような特徴を持つものである(今後経験後に訂正する可能性あり)。
(1)社会階層論、社会人口学、都市社会学、人種・エスニシティ・移民の社会学、開発社会学、政治社会学、健康社会学、文化社会学、組織社会学、環境社会学、社会学理論の11分野の中から2分野に合格することが必要。
(2)2分野同時に受けてもいいが、基本的には1分野ずつ、半年の間隔をあけて受ける。
(3)試験形式はオープンブックのテイクホーム試験で、月曜の朝9時に問題がメールで送られてきて、水曜の午後5時までに答案をメールで送信する(但し、これは1分野受験の場合で、2分野を一度にやる場合は金曜まで余裕が与えられる)。
(4)答案で求められているのは設問内容にあった文献レビューの作成。1分野につき2つ設問があり、それぞれ2000-3000 words程度で作成することが求められる(1つの試験につき4000-6000 words)。
(5)事前に読んで、内容をある程度覚えておく必要のある必読論文が100本ほど分野ごとに指定されている(プレリム文献リスト)が、それからだけでは答えられないので、他にも当たる必要がある。
(6)1月と6月の年に2回受験可能であり、標準的には3年生で2分野とも受ける。2分野とも3年生終わりまでの合格が必要である。
(7)評価は当該分野を専門とする教員により構成される2名の委員によってなされ、優等合格、合格、不合格の三段階が存在する。優等合格は稀らしい。優等合格しても自己満足以外に良いことは特になく、とりあえず合格すれば良い。
(8)2度不合格になると退学。これは脅しではなく、去年実際に先輩が退学になっていた。
私は(1)については社会人口学と社会階層論を選択する予定で、6月末に受けるのは社会人口学だ。自分の専門分野が(1)にない場合は、教員と相談して作ることも可能で、同期でジェンダー社会学の試験を受けた人もいる。ただ、基本的には(1)がブラウンの社会学教員が対応できる範囲で、自分だけの試験を作るのはおすすめされない(そもそも文献リストを作るのはかなり大変な作業である)。アメリカの社会学部の中でブラウンがまあまあ強いのは社会人口学、人種・エスニシティ・移民の社会学、開発社会学、環境社会学の4分野であり、これらの科目は特に受験する院生が多い。
本来のタイムラインとしては(6)で述べたとおり、3年生の1月と6月に受けるものなのだが、私は半年早く2年生の6月に最初の試験を受けることにした。これは特に珍しいことではなく、早くコースワークと試験を終わらせて博論にとりかかりたいという考えからのことである。
プレリム文献リスト(6)に掲載される論文は、当該分野のトップジャーナルの論文のうち、これまでその分野に与えた影響力が大きいと判断されたか、教育目的にふさわしい総説的な論文である。例えば社会人口学のリストはほぼ全ての論文がDemographyかPopulation and Development Reviewに掲載されている論文である。最新の研究というよりは、2010年ごろまでの間に影響力をもった論文が多い(教員側の「事情」により、最新の研究が反映されていないのは残念である)。
半年間、この試験への準備をするための個別指導を受けたのだが、「プレリム試験は分野内での共通言語をつくる制度」という趣旨のことを教員が述べていたのが印象的だった。確かに社会人口学のプレリム文献のリストを全部読み終わってある程度内容も頭に入った今は、社会人口学という分野で何がこれまで問題になってきて、ネットで見かけた最新論文Xはどこに位置付けられるか、10-20年前に書かれたどの論文と関連しているか、ということが頭に浮かぶようになってきた。
とりあえず合格したい。。
2019年6月2日日曜日
2019年5月8日水曜日
近況&2019年春学期のコースワーク
またまた更新が途絶えていた。。。学期末になり、2日前でレポートも残り1つで、1日休みをとっている(お腹の調子がそんなに良くなくて休んでいる)。簡単に近況と今学期とったコースワークについて書いておく。
1. 近況
全体的な近況。3月初旬に後輩の結婚式で1週間ほど帰国し(幸せをおすそ分けしてもらえた)、3月後半にドイツでの学会発表(まあまあうまくいった)、4月中旬に人生2回目の修論提出(5年制博士課程の2年目に提出するもの)をし、5月初旬は昨夏に投稿してR&R(修正再査読)になっていた共著論文を再投稿した。次のビッグイベントは6/24-27の1つ目のプレリム試験(博士候補試験の2つのうちの1つ)。追試はあるが、落ちたら基本的には退学になってしまうわけで、本腰を入れて勉強をする予定。プレリム試験に2つ合格し、博論計画書もディフェンスすると、博士候補(PhDキャンディデート)になれる。これはおそらく2021年の予定。
嬉しいこと2点。(1)修論が社会学研究科の最優秀賞を受賞するという連絡をいただいた。20年以上前に若くして亡くなった人口学の教授の名前を冠した賞らしい。認めてもらえたことは素直に嬉しい。ちょっとまだ詳しいことはわからないので5月末の授章式の後に色々書きたい。(2)6月半ばにペンシルヴァニア州立大で開かれる移民研究の方法論に特化した8日間のサマースクールにRussell Sage Foundationからの奨学金付きで合格した。去年落ちていて二度目のトライだった。これもまた参加後に感想を書きたい。
心配なこと2点。(1)3月に後輩の結婚式に出るために1週間だけ帰国していたのだが、その頃から体調がすぐれず、完全には回復していない気がする。具体的にいうとお腹で、時々嘔吐症状があったり、お腹が痛かったりする。胆石を疑われてエコー検査までしたのだが、何も見つからなかった。明日また医者に行くが、今度は内視鏡検査になるかもしれない。ここ2ヶ月度々苦しい思いをして健康の大切さがわかってきた。(2)来年度からTAとして教える予定で、指導教員に大学院の多変量解析のコースのTA(博士課程1年生に統計とStataの使い方をレクチャーする仕事)を頼まれていたのだが、学部TAが足りなさすぎてそちらに回される可能性が高いらしい。良い経験になるとは思うが、学部生をTAするのはかなり大変らしく、少し心配している。
2. 2019年春学期のコースワーク
ANTH 2300: Anthropological Demography (人口人類学)
人口学センター所属院生の準必修で、人類学部が提供しているセミナー。社会人類学と人口学を繋ぐ論文をひたすら読む。担当教員は人類学、社会学のトップジャーナルに数々の著作がありながら、専門は近代イタリア教会史(著書多数)で、イタリア史に関係した著作でピューリッツァー賞(伝記部門)も受賞しているデービッド・ケルツァー教授。イタリア教会史の専門家がなぜ人口学者としても知られているかというと、イタリアで研究をしていた頃に教会の地下で昔の司教がつけていた教区の人口記録を見つけて、教会がいかに出生をコントロールしていたかに関心を持ち、人口学的な研究も始めたとのことである。
人口学は人口学者、社会学者、経済学者、疫学者が中心となった出生・死亡・移動等々に関する計量データの統計分析の印象が強い学問だが、目立たない形で質的調査(主にエスノグラフィー)をしている人たちもおり、大変勉強になったし、社会人類学と人口学のコラボレーションの可能性も色々と考えられた(実際にケルツァー教授は人口学のジャーナルに社会学者と共著で論文も多数出している)。もしこの分野に関心ある方がいればケルツァー教授が編集したAnthropological Demographyという本はおすすめ。
この他にも、今年Springerから出たされた改定版のHandbook of Population StudiesのAnthropological Demographyの項目もケルツァー教授が担当している。
SOC2961E: Sociology of Education(教育社会学)
去年倍率200倍の助教の選考に勝ち残って新しく赴任した若手教育社会学者の教育社会学の演習。教育社会学の必読文献を幅広くカバーしていて、修論の文献レビューを行う上でとてもためになった。担当教員は経済学的なアプローチを多用する人で、それも勉強になったが、明らかに計量メソッドの面では劣っている社会学という学問の教育学に対する独自な貢献は何なのかも考えさせられた。ちなみに、最近は教育学のジャーナル(e.g., AERJ)だけではなく、教育社会学のジャーナル(e.g., Sociology of Education)でも経済学者に査読を頼むことがあるらしく、経済学者対策は避けられない気がした(先生が最後の授業でつい先日リジェクトされた論文のレビュワーコメントを見せてくれたが、かなり辛辣だった)。
SOC2981: Reading and Research(修論の個別指導)
修論の個別指導。あと、先生と去年の1月ごろからやっている論文の修正再査読の対応もこの時間枠を使ってしていた。4月中旬に提出した。月末に人生2個目の修士号が授与される予定である。
SOC2981: Reading and Research(プレリム試験の個別指導)
6月末に社会人口学の博士候補試験(プレリム試験)を受験する予定で、その準備のための個別指導。副指導教員の先生と会っていた。個別指導といっても、6月に受ける同期三人とグループを作ってやっていたのでゼミみたいなかんじ。ここからあと1ヶ月は試験勉強が続きそうである。プレリム試験についてはまたいつか詳しく書きたい。
ということで、次はプレリム試験についてでも書きます。
1. 近況
全体的な近況。3月初旬に後輩の結婚式で1週間ほど帰国し(幸せをおすそ分けしてもらえた)、3月後半にドイツでの学会発表(まあまあうまくいった)、4月中旬に人生2回目の修論提出(5年制博士課程の2年目に提出するもの)をし、5月初旬は昨夏に投稿してR&R(修正再査読)になっていた共著論文を再投稿した。次のビッグイベントは6/24-27の1つ目のプレリム試験(博士候補試験の2つのうちの1つ)。追試はあるが、落ちたら基本的には退学になってしまうわけで、本腰を入れて勉強をする予定。プレリム試験に2つ合格し、博論計画書もディフェンスすると、博士候補(PhDキャンディデート)になれる。これはおそらく2021年の予定。
嬉しいこと2点。(1)修論が社会学研究科の最優秀賞を受賞するという連絡をいただいた。20年以上前に若くして亡くなった人口学の教授の名前を冠した賞らしい。認めてもらえたことは素直に嬉しい。ちょっとまだ詳しいことはわからないので5月末の授章式の後に色々書きたい。(2)6月半ばにペンシルヴァニア州立大で開かれる移民研究の方法論に特化した8日間のサマースクールにRussell Sage Foundationからの奨学金付きで合格した。去年落ちていて二度目のトライだった。これもまた参加後に感想を書きたい。
心配なこと2点。(1)3月に後輩の結婚式に出るために1週間だけ帰国していたのだが、その頃から体調がすぐれず、完全には回復していない気がする。具体的にいうとお腹で、時々嘔吐症状があったり、お腹が痛かったりする。胆石を疑われてエコー検査までしたのだが、何も見つからなかった。明日また医者に行くが、今度は内視鏡検査になるかもしれない。ここ2ヶ月度々苦しい思いをして健康の大切さがわかってきた。(2)来年度からTAとして教える予定で、指導教員に大学院の多変量解析のコースのTA(博士課程1年生に統計とStataの使い方をレクチャーする仕事)を頼まれていたのだが、学部TAが足りなさすぎてそちらに回される可能性が高いらしい。良い経験になるとは思うが、学部生をTAするのはかなり大変らしく、少し心配している。
2. 2019年春学期のコースワーク
ANTH 2300: Anthropological Demography (人口人類学)
人口学センター所属院生の準必修で、人類学部が提供しているセミナー。社会人類学と人口学を繋ぐ論文をひたすら読む。担当教員は人類学、社会学のトップジャーナルに数々の著作がありながら、専門は近代イタリア教会史(著書多数)で、イタリア史に関係した著作でピューリッツァー賞(伝記部門)も受賞しているデービッド・ケルツァー教授。イタリア教会史の専門家がなぜ人口学者としても知られているかというと、イタリアで研究をしていた頃に教会の地下で昔の司教がつけていた教区の人口記録を見つけて、教会がいかに出生をコントロールしていたかに関心を持ち、人口学的な研究も始めたとのことである。
人口学は人口学者、社会学者、経済学者、疫学者が中心となった出生・死亡・移動等々に関する計量データの統計分析の印象が強い学問だが、目立たない形で質的調査(主にエスノグラフィー)をしている人たちもおり、大変勉強になったし、社会人類学と人口学のコラボレーションの可能性も色々と考えられた(実際にケルツァー教授は人口学のジャーナルに社会学者と共著で論文も多数出している)。もしこの分野に関心ある方がいればケルツァー教授が編集したAnthropological Demographyという本はおすすめ。
| Anthropological Demography(ちょっと古いがおすすめの本) |
この他にも、今年Springerから出たされた改定版のHandbook of Population StudiesのAnthropological Demographyの項目もケルツァー教授が担当している。
SOC2961E: Sociology of Education(教育社会学)
去年倍率200倍の助教の選考に勝ち残って新しく赴任した若手教育社会学者の教育社会学の演習。教育社会学の必読文献を幅広くカバーしていて、修論の文献レビューを行う上でとてもためになった。担当教員は経済学的なアプローチを多用する人で、それも勉強になったが、明らかに計量メソッドの面では劣っている社会学という学問の教育学に対する独自な貢献は何なのかも考えさせられた。ちなみに、最近は教育学のジャーナル(e.g., AERJ)だけではなく、教育社会学のジャーナル(e.g., Sociology of Education)でも経済学者に査読を頼むことがあるらしく、経済学者対策は避けられない気がした(先生が最後の授業でつい先日リジェクトされた論文のレビュワーコメントを見せてくれたが、かなり辛辣だった)。
SOC2981: Reading and Research(修論の個別指導)
修論の個別指導。あと、先生と去年の1月ごろからやっている論文の修正再査読の対応もこの時間枠を使ってしていた。4月中旬に提出した。月末に人生2個目の修士号が授与される予定である。
SOC2981: Reading and Research(プレリム試験の個別指導)
6月末に社会人口学の博士候補試験(プレリム試験)を受験する予定で、その準備のための個別指導。副指導教員の先生と会っていた。個別指導といっても、6月に受ける同期三人とグループを作ってやっていたのでゼミみたいなかんじ。ここからあと1ヶ月は試験勉強が続きそうである。プレリム試験についてはまたいつか詳しく書きたい。
ということで、次はプレリム試験についてでも書きます。
2019年1月21日月曜日
低温調理で卵かけ納豆ご飯を作る
新年初の更新。水曜日から新学期である。先週、先生に論文のドラフトを送付して明後日の面談まで少し時間の余裕があるので、卵かけ納豆ご飯が食べれない問題への対策を考えた(注1)。
アメリカでは市販の生卵をそのまま食べることは避けた方がよいと言われている。理由はサルモネラ菌の感染の可能性があるからだ(注2)。もっとも、アメリカの卵が特別に危険というよりも、日本は世界的に見てかなり特殊な「生卵を食する習慣」があるために市販される卵に特殊な殺菌をしているということだと思う(厚労省資料)。どうしてもアメリカで生卵を安全に食べたい場合、pasteurized egg(注意:pasture raised eggとは違う!)と呼ばれる低音殺菌(pasteurize)した特殊な卵を買わなければならないようだ(米国農務省HP Q&A)。ただし、プロビデンスにはなかなか売っておらず、売っていたとしてもかなり高いらしい。
日本に住んでいた頃は卵かけ納豆ご飯を1週間に1-2回は食べていた。卵かけご飯用の醤油も買っていたくらいには好きだった。前回帰国してから半年ほど経ち、冬も日本に帰れなかったので、どうしても卵かけ納豆ご飯を食べたい気持ちが抑えられず、温泉卵を作ってそれを生卵に代替するという方向性をトライすることにした。
温泉卵を作るにあたり利用したのがANOVA(分散分析のことではない)と呼ばれる低温調理器だ(Fig 1)。コンマレベルで水温を調整・持続させることができる装置で、ローストビーフ等を作るのによく使われているようだが、もちろん卵を低温調理することもできる。ずぼらママさんという方のブログによると、ANOVAを67度に設定して25分で柔らかめの温泉卵ができるらしく、この方のオススメする温度と時間で作成することにした。なお、食品安全委員会の機関紙によるとサルモネラ菌は60℃で15分加熱すると死滅するらしく、卵黄内部に温度が到達するまで10分あれば大丈夫だろうという判断も勝手に自分でした(甘いかもしれない、、)。
完成は写真(Fig2とFig3)の通り。温泉卵1つでは生卵に比べると粘り気が少なかったので温泉卵を2つ投入する必要はあったが、それ以外は特に問題なく、美味しかった。現在食してから24時間は経過しているがお腹の調子も普通である。
注1:食品の安全衛生に関わることが書いてありますが、完全な素人の私見です。同じ調理法で何かあっても責任は取りかねますのでご了承ください。
注2:ただし、これは言説のレベルであって、実際にはアメリカのレストランとかでもかなり生に近い半熟卵が出てくることは多々ある。どこまで本当にアメリカの方が危ないのかは僕にはわからない。
アメリカでは市販の生卵をそのまま食べることは避けた方がよいと言われている。理由はサルモネラ菌の感染の可能性があるからだ(注2)。もっとも、アメリカの卵が特別に危険というよりも、日本は世界的に見てかなり特殊な「生卵を食する習慣」があるために市販される卵に特殊な殺菌をしているということだと思う(厚労省資料)。どうしてもアメリカで生卵を安全に食べたい場合、pasteurized egg(注意:pasture raised eggとは違う!)と呼ばれる低音殺菌(pasteurize)した特殊な卵を買わなければならないようだ(米国農務省HP Q&A)。ただし、プロビデンスにはなかなか売っておらず、売っていたとしてもかなり高いらしい。
日本に住んでいた頃は卵かけ納豆ご飯を1週間に1-2回は食べていた。卵かけご飯用の醤油も買っていたくらいには好きだった。前回帰国してから半年ほど経ち、冬も日本に帰れなかったので、どうしても卵かけ納豆ご飯を食べたい気持ちが抑えられず、温泉卵を作ってそれを生卵に代替するという方向性をトライすることにした。
完成は写真(Fig2とFig3)の通り。温泉卵1つでは生卵に比べると粘り気が少なかったので温泉卵を2つ投入する必要はあったが、それ以外は特に問題なく、美味しかった。現在食してから24時間は経過しているがお腹の調子も普通である。
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| Fig 1. ANOVAは左手の装置 |
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| Fig 2. 温泉卵 |
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| Fig 3. 完成した卵かけ納豆ご飯 |
注1:食品の安全衛生に関わることが書いてありますが、完全な素人の私見です。同じ調理法で何かあっても責任は取りかねますのでご了承ください。
注2:ただし、これは言説のレベルであって、実際にはアメリカのレストランとかでもかなり生に近い半熟卵が出てくることは多々ある。どこまで本当にアメリカの方が危ないのかは僕にはわからない。
2018年12月28日金曜日
PhD2年目前半戦終了–冬休み到来–
課題を全部出して冬休みが来たので今学期の振り返りを少ししておく。
1. コースワーク
今学期は社会学大学院から2つ(「因果推論」と修論個別指導)、経済学大学院から2つ(「労働経済学」という看板の統計的因果推論の講義と「公共経済学」の演習)という設定だった。先学期と比べると著しくメソッドにフォーカスした学期だったように思う。なお、ブラウンの社会学大学院の人口学センター所属の院生は指定された経済学or文化人類学or公衆衛生学大学院のコースワークが選択必修になっているので他学部履修するのは特別なことではなく、社会学大学院の同期も3人一緒に経済学大学院のコースワークを履修した。成績は全てAをとれて、それは嬉しかった。
今学期のコースワークの大きな成果としては(1)計量分析に関する理解が大幅に進歩したこと、(2)経済学の論文の読解能力が増したこと、(3)経済学者がどんなことを考えていて、何を大切にしているかがわかり、社会学との違いについて考えを巡らせることができたことである。(1)に関してはいかに自分が今まで適当な理解をしていたかがわかって色々恥ずかしくなった。とりあえずあまり話したくない。(2)に関しては最近は社会学が伝統的に研究してきた分野への経済学が進出しており(特に教育社会学が伝統的に扱ってきた分野においてその傾向が強いのではないだろうか)、今後この力は役に立つのではないかと思う。ただ、一番重要だったのは(3)な気がする。学期中は毎週の木曜の昼休みに人口学センターで研究発表(出席必須)があり、外部/内部の経済学と社会学のスピーカーが交互に発表している。両学部から教員も聴衆として参加してのイベントなのだが、経済学の人が社会学の発表に対してする質問の背景が理解できるようになった。自分もいつか発表することになるかもしれないし、今後もPAAなどでは経済学者に応答をしなければならないと思うので、貴重な学期となったと思う(前回のPAAではUCLAの経済学の院生に結構クリティカルに突っ込まれたが、今はようやくその意味がフルに理解できる)。
ただ、経済学の因果推論だけにとらわれてしまうと何か重要なものを失う気がしている(何を失うのかの言語化はまだきちんとできていない。すいません)し、メソッドを極めるのは自分には無理なので正しく応用できるレベルにとどめようと思っている。ということで、来学期はメソッドのコースワークから離れて文化人類学部の人口学のコースワーク(Anthropological Demography)と、社会学部の教育社会学のコースワークの2つを取ろうと考えている。ちなみに文化人類学部の人口学のコースワークの教員は質的手法を使う人口学者としてとても有名であり(Demography、PDRに論文多数)、文化人類学者としても有名であり(ブラウン文化人類学部でテニュア持っている)、イタリア史の研究でも有名であり(著書多数)、かつ小説も書いてピューリッツァー賞を受賞・スピルバーグによって今度その小説が映画化されるというとてつもない人のようである。教えるのも上手いのに期待する。
2. 研究
2月末に下書きを提出しなければならない。米国における1990年代前半に出生コホートの5歳から14歳(7時点)、15-18歳(3時点)の二つのパネルデータを使って、移民の子どものテストスコアの母学歴による推移を成長曲線モデルで比較をしている。5-14歳のデータの方のpreliminaryな分析結果のアブストを国際社会学会のRC28の春季ミーティングに出していたのだが、口頭報告でアクセプトされたので、できるだけ行きたいと思う(大学からのfundingを調整中)。出そうと思った時すでに締め切りから数時間すぎており、しかも受付番号521番で、ポスターになるだろうと思っていたので嬉しい。一つ悩んでいるのは成長曲線モデルである。学力や体重など子どもの成長を記述的にみるには適しているとは思うのだが、推定する成長曲線のfunctional formが正しいという仮定が強すぎる気がしているのと共に、口頭発表で成長曲線モデルに詳しくない人に理解してもらうのが本当に難しい。特に難しいことをしているわけではないのだが、かなり複雑なことをしている印象を与えてしまうのをどうにか解決したい。
夏に某誌に指導教員と書いて投稿した論文がR&Rで戻ってきて、4月末までにまた再提出しなければならない。Reviewer1がとてつもなく細かく、先生も「ここまで細かいのは見たことがない」と驚いていた。。個人的にはかなりmajor revisionで厳しいのではないかと感じているのだが、なぜか先生はeasyと楽観的だった。まあどうなるにせよ、missing dataの勉強にはなった。
3. メサイア
今年はこちらでできた働きながらブラウンで計算機科学(CS)のマスターをやっている中国人の友人とメサイアをプロビデンスの退役軍人ホールへ観にいった。会場でマフィンやコーヒーが売っていて、それを食べながら聴いている人がいるのは衝撃だった。また拍手の際に「ヒューヒュー」のような声を出すのも驚きである。アメリカがこうなのか、たまたま今回のことなのかはわからない。
メサイアに一緒に行った友人とは昨秋のIVCFのリトリートであったのだが、最近は1週間に一回はあっていて、気晴らしになる。会話で社会科学の話が出てこないのでコースワークや研究のことも思い出す必要がなく、社会学&近い学問やらない友人を作ることの大切さを痛感している。CSメジャーなのに英語の詩が大好きで、休日にわざわざNYCまで詩の朗読会にいくなどしている。意外なことに僕がすすめたNetflixのテラスハウス軽井沢篇にはまってしまい、鍋セットを購入までしてSeason1 Episode1で作られていた水炊きを再現してくれと頼まれたので頑張った。テラスハウスは、ゆっくりな日本の恋愛と同時に、日々映し出される食べ物が受けているようである。
今年のイブ礼拝は大家さんに連れられてQuakerのMeetingに参加した。1703年に創立されたRI州ではかなり古い方のQuakerのMeeting Houseであった。予想通り途中で「内なる光」に導かれた方が突然歌い出して皆が続いたこと(おそらくQuakerの間で有名な賛美歌だと思われるが、歌詞的に賛美歌ではない可能性もある)、一人が短く話したこと(何を話したかは覚えていない)を除いては1時間ひたすら沈黙が守られていた。
さて、この辺にしたい。今日から休暇でハワイで1週間ほどゆっくりしてくる。
1. コースワーク
今学期は社会学大学院から2つ(「因果推論」と修論個別指導)、経済学大学院から2つ(「労働経済学」という看板の統計的因果推論の講義と「公共経済学」の演習)という設定だった。先学期と比べると著しくメソッドにフォーカスした学期だったように思う。なお、ブラウンの社会学大学院の人口学センター所属の院生は指定された経済学or文化人類学or公衆衛生学大学院のコースワークが選択必修になっているので他学部履修するのは特別なことではなく、社会学大学院の同期も3人一緒に経済学大学院のコースワークを履修した。成績は全てAをとれて、それは嬉しかった。
今学期のコースワークの大きな成果としては(1)計量分析に関する理解が大幅に進歩したこと、(2)経済学の論文の読解能力が増したこと、(3)経済学者がどんなことを考えていて、何を大切にしているかがわかり、社会学との違いについて考えを巡らせることができたことである。(1)に関してはいかに自分が今まで適当な理解をしていたかがわかって色々恥ずかしくなった。とりあえずあまり話したくない。(2)に関しては最近は社会学が伝統的に研究してきた分野への経済学が進出しており(特に教育社会学が伝統的に扱ってきた分野においてその傾向が強いのではないだろうか)、今後この力は役に立つのではないかと思う。ただ、一番重要だったのは(3)な気がする。学期中は毎週の木曜の昼休みに人口学センターで研究発表(出席必須)があり、外部/内部の経済学と社会学のスピーカーが交互に発表している。両学部から教員も聴衆として参加してのイベントなのだが、経済学の人が社会学の発表に対してする質問の背景が理解できるようになった。自分もいつか発表することになるかもしれないし、今後もPAAなどでは経済学者に応答をしなければならないと思うので、貴重な学期となったと思う(前回のPAAではUCLAの経済学の院生に結構クリティカルに突っ込まれたが、今はようやくその意味がフルに理解できる)。
ただ、経済学の因果推論だけにとらわれてしまうと何か重要なものを失う気がしている(何を失うのかの言語化はまだきちんとできていない。すいません)し、メソッドを極めるのは自分には無理なので正しく応用できるレベルにとどめようと思っている。ということで、来学期はメソッドのコースワークから離れて文化人類学部の人口学のコースワーク(Anthropological Demography)と、社会学部の教育社会学のコースワークの2つを取ろうと考えている。ちなみに文化人類学部の人口学のコースワークの教員は質的手法を使う人口学者としてとても有名であり(Demography、PDRに論文多数)、文化人類学者としても有名であり(ブラウン文化人類学部でテニュア持っている)、イタリア史の研究でも有名であり(著書多数)、かつ小説も書いてピューリッツァー賞を受賞・スピルバーグによって今度その小説が映画化されるというとてつもない人のようである。教えるのも上手いのに期待する。
2. 研究
2月末に下書きを提出しなければならない。米国における1990年代前半に出生コホートの5歳から14歳(7時点)、15-18歳(3時点)の二つのパネルデータを使って、移民の子どものテストスコアの母学歴による推移を成長曲線モデルで比較をしている。5-14歳のデータの方のpreliminaryな分析結果のアブストを国際社会学会のRC28の春季ミーティングに出していたのだが、口頭報告でアクセプトされたので、できるだけ行きたいと思う(大学からのfundingを調整中)。出そうと思った時すでに締め切りから数時間すぎており、しかも受付番号521番で、ポスターになるだろうと思っていたので嬉しい。一つ悩んでいるのは成長曲線モデルである。学力や体重など子どもの成長を記述的にみるには適しているとは思うのだが、推定する成長曲線のfunctional formが正しいという仮定が強すぎる気がしているのと共に、口頭発表で成長曲線モデルに詳しくない人に理解してもらうのが本当に難しい。特に難しいことをしているわけではないのだが、かなり複雑なことをしている印象を与えてしまうのをどうにか解決したい。
夏に某誌に指導教員と書いて投稿した論文がR&Rで戻ってきて、4月末までにまた再提出しなければならない。Reviewer1がとてつもなく細かく、先生も「ここまで細かいのは見たことがない」と驚いていた。。個人的にはかなりmajor revisionで厳しいのではないかと感じているのだが、なぜか先生はeasyと楽観的だった。まあどうなるにせよ、missing dataの勉強にはなった。
3. メサイア
今年はこちらでできた働きながらブラウンで計算機科学(CS)のマスターをやっている中国人の友人とメサイアをプロビデンスの退役軍人ホールへ観にいった。会場でマフィンやコーヒーが売っていて、それを食べながら聴いている人がいるのは衝撃だった。また拍手の際に「ヒューヒュー」のような声を出すのも驚きである。アメリカがこうなのか、たまたま今回のことなのかはわからない。
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| 退役軍人ホールでのメサイア |
メサイアに一緒に行った友人とは昨秋のIVCFのリトリートであったのだが、最近は1週間に一回はあっていて、気晴らしになる。会話で社会科学の話が出てこないのでコースワークや研究のことも思い出す必要がなく、社会学&近い学問やらない友人を作ることの大切さを痛感している。CSメジャーなのに英語の詩が大好きで、休日にわざわざNYCまで詩の朗読会にいくなどしている。意外なことに僕がすすめたNetflixのテラスハウス軽井沢篇にはまってしまい、鍋セットを購入までしてSeason1 Episode1で作られていた水炊きを再現してくれと頼まれたので頑張った。テラスハウスは、ゆっくりな日本の恋愛と同時に、日々映し出される食べ物が受けているようである。
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| 友人宅で作った鍋 |
今年のイブ礼拝は大家さんに連れられてQuakerのMeetingに参加した。1703年に創立されたRI州ではかなり古い方のQuakerのMeeting Houseであった。予想通り途中で「内なる光」に導かれた方が突然歌い出して皆が続いたこと(おそらくQuakerの間で有名な賛美歌だと思われるが、歌詞的に賛美歌ではない可能性もある)、一人が短く話したこと(何を話したかは覚えていない)を除いては1時間ひたすら沈黙が守られていた。
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| クリスマスイブに行ったRI州LincolnのQuakerのMeeting House |
さて、この辺にしたい。今日から休暇でハワイで1週間ほどゆっくりしてくる。
2018年12月9日日曜日
近況1209
最近の近況を少し。今週は大忙しだった。月曜には模擬授業をビデオで撮影され、英語で教える能力の審査(来年TAとして授業を担当できるかを判定するため)があった(二回目)。おそらく明日には結果が出る予定だ。社会学理論についてのレクチャーをしようかと思ったのだが、結局Assimilation theoryの研究動向についてのレクチャーをした。審査委員は英語の専門家二人と学部生二人。ABCDEの5段階評価で、Aだと合格、B、Cが条件付き合格、DとEが不合格。前回はCで、今回はできればAが欲しいのだが、少し硬くなってしまってBになる可能性もある気がして落ち込んでいる(Bになったら来学期マンツーマンの発音トレーニングを受けなければならない)。Cのままだったら全然笑えない。
火曜は前回の投稿で紹介した税のペーパーを公共経済学のセミナーで発表した。あらかじめ"I'm not an econ major"なので"theory"をわかってなかったらすいません、という宣言をしたので気が楽だった。発表も問題なく終わったし、毎週の課題も平均以上取れているし、単位はくるだろう。
水曜は因果推論(社会学部)の授業の最終課題の発表だった。修論の基となっている分析を発表したのだが、いまいち納得してもらえなかったみたいで、フレームワークを見直す必要がありそうだ。今週の金曜にペーパーの提出だ。道は長い、、
金曜は因果推論(経済学部)のproblem setの提出だった。月曜から毎日2問ずつ答えて行ったのだが、まあまあ難しくて、最終的に木曜日は1日をほぼ全てこれに使うことになった。
土曜(昨日)はブラウンのクリスチャン大学院生のクリスマスパーティーに顔を出してきた。コードネームというボードゲームで遊んだのだが、意外と面白いし、大人数でもできるのでオススメ。この集まりには物静かなブラウンの応用数学部の准教授がよく参加してくれる(全く知らなかったのだが、かなり有名な人らしい)。先生が「人文・社会科学系の教員にはクリスチャンはほぼいないが、理工系だと少しはいる」って言っていたのが印象的だった。僕も同じ現状認識だ。。セレクション効果(クリスチャンは社会科学の研究者になるのを避ける)なのかもしれないし、トリートメント効果(社会科学をしていると信仰からクリスチャンじゃなくなるor自然科学をしているとクリスチャンになる)なのかもしれない。僕は両方だと思っているが、トリートメント効果の方が大きいかもしれない。
今日はコンピュータサイエンス学部の中国人の友人とフェデラルヒル(プロビデンスの別の地区)のLeMei Hot Potという店に火鍋を食べに行った。二人で100ドルを超えてしまったが、かなり美味しくて満足した。やはりご飯のクオリティは重要。少し元気になった。
明日から(今週)は因果推論(社会学部)のタームペーパーが金曜にあり、また金曜には指導教員とR&Rになった共著論文の打ち合わせと修論の方向性の打ち合わせをしなければならない。また、再来週には因果推論(経済学部)のproblem set(problem setは学期に複数回ある)の提出がある。あと2週間ほど気を抜かずに頑張りたい。
火曜は前回の投稿で紹介した税のペーパーを公共経済学のセミナーで発表した。あらかじめ"I'm not an econ major"なので"theory"をわかってなかったらすいません、という宣言をしたので気が楽だった。発表も問題なく終わったし、毎週の課題も平均以上取れているし、単位はくるだろう。
水曜は因果推論(社会学部)の授業の最終課題の発表だった。修論の基となっている分析を発表したのだが、いまいち納得してもらえなかったみたいで、フレームワークを見直す必要がありそうだ。今週の金曜にペーパーの提出だ。道は長い、、
金曜は因果推論(経済学部)のproblem setの提出だった。月曜から毎日2問ずつ答えて行ったのだが、まあまあ難しくて、最終的に木曜日は1日をほぼ全てこれに使うことになった。
土曜(昨日)はブラウンのクリスチャン大学院生のクリスマスパーティーに顔を出してきた。コードネームというボードゲームで遊んだのだが、意外と面白いし、大人数でもできるのでオススメ。この集まりには物静かなブラウンの応用数学部の准教授がよく参加してくれる(全く知らなかったのだが、かなり有名な人らしい)。先生が「人文・社会科学系の教員にはクリスチャンはほぼいないが、理工系だと少しはいる」って言っていたのが印象的だった。僕も同じ現状認識だ。。セレクション効果(クリスチャンは社会科学の研究者になるのを避ける)なのかもしれないし、トリートメント効果(社会科学をしていると信仰からクリスチャンじゃなくなるor自然科学をしているとクリスチャンになる)なのかもしれない。僕は両方だと思っているが、トリートメント効果の方が大きいかもしれない。
今日はコンピュータサイエンス学部の中国人の友人とフェデラルヒル(プロビデンスの別の地区)のLeMei Hot Potという店に火鍋を食べに行った。二人で100ドルを超えてしまったが、かなり美味しくて満足した。やはりご飯のクオリティは重要。少し元気になった。
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2018年12月3日月曜日
消費税は本当に逆進的か?-ガゾリン税の価格転嫁率の地域間の異質性を考慮して-(Stolper 2018)
以下、明日の格差のセミナーで30分間で発表(要約&批判)しなければならないワーキングペーパー(WP)を紹介しておく。本当は教育系のテストスコアを分析した論文が当たる予定だったのだが、順番がずれてこれになってしまった、、、苦笑 このWPは2016年にハーバード経済学部でPhDをとって、ミシガンでAPになった方がジョブマーケットペーパーとして執筆したものらしい。そこからさらに修正をかけて3ヶ月前に改訂版として発表されていて、もう投稿中なのかもしれない。私は経済学をちゃんと勉強したことがないので、万が一間違った理解をしていたら許して欲しい。専門とはあまり関係ないが、面白かったのと、社会学でも課税の分析はもっとあっても良いかもしれないと思った(何回かみたことはあるが、、)。
Stolper, Samuel., 2018, "Local Pass-Through and the Regressivity of Taxes: Evidence from Automotive Fuel Markets.", Harvard Environmental Economics Program Discussion Paper 16-70 (May 2016) [updated in June 2018]
要旨:
税の転嫁と帰着を巡る研究では、税の逆進性は相対的な消費量(relative quantity)を基に決定されることが前提とされているが、実際には相対的な価格(relative price)の分析も必要であり、増税の価格転嫁率(pass through rate)の異質性を考慮する必要がある。本WPでは2009年から州レベルで複数回にわたって増税が実施されたスペインを事例に、価格転嫁率には地域ごとに大きな分散があることと、住宅価格が高い地域ほど価格転嫁率が高いこと(=ガソリン税は逆進的ではなく累進的である)ことを示す。
スペインでは2007年からガソリンの売店(station)の週ごと(weekly)の価格を公開するシステムが整備されており、全国のstationのガソリンのstation-week価格データの作成が可能である。WPでは、このガソリン価格のstation-weekデータに州レベルのガソリン税の情報(観察期間中に何度か州ごとに上昇する)、売店レベルの情報(5分のドライブ圏における他のガソリン売店の数、ガソリン店のブランド、運営形態 etc.)、社会人口学的特性(municipality-yearレベルの人口密度、平均教育レベル、平均住宅価格 etc.)を紐付け、転嫁率を分析する。
WP中での分析は(i)スペインの全国レベルでのガソリン税の平均価格転嫁率の分析、(ii)価格転嫁率の異質性の分析の二部構成である。(i)と(ii)のどちらの分析でもまずはイベントスタディーモデルを用いて、増税前後の価格の変動がmean shiftである(増税の前後以外の時点では価格はパラレルトレンドである)ことを確認し、その後価格転嫁率を推定する。station-week固定効果モデルでtaxをretail priceに回帰し、taxの係数に100をかけたものが価格転嫁率である。転嫁率の異質性の分析に当たっては競合店の数や平均住宅価格とtaxの交互作用をとり、交互作用の係数をみる。その後、推定した結果を使って地域ごとの転嫁率の分布やstationのある地域の平均SESと転嫁率との関連を分析する。
分析結果として、(i)全国レベルでの平均転嫁率は95%前後で、100%と統計的に有意な差は認められないこと、(ii)転嫁率には地域ごとに大きな異質性があり、75から115%程度に95%の転嫁率が収まること、平均住宅価格と転嫁率は正の関係にあり、ガソリン税は累進的な課税となっていること等が示された。
コメント:
・消費税が逆進的ではなく、累進的な場合もあるというのは面白い。経済学をちゃんと勉強していないのでおそらくこれは専門家の間では長らく知られてきたことなのだろうが、「消費税が逆進的である」という高校の教科書的な知識?の理論ではなくデータからのエビデンスはどういうところにあるのか知りたくなった。
・ただ、「累進的である」ことの根拠は平均住宅価格ととtaxの交互作用が正に有意であること(=平均住宅価格と価格転嫁率は正の関係にあること)で主に判定されており、かなり限界がある気がした。平均住宅価格は地域のSESの一つの指標にすぎない。
・地域の平均的な人口学的特性の情報が得られないからという理由でurban areaだけに分析が絞られ、rural areaがカットされているのだが、rural areaの人の方が車を使う可能性は高い訳で、かなり問題がある気がした。
・上記と関連して、ガソリン売店のある市の学歴分布とtaxの交互作用もモデルに投入しているのにその結果を表で省略していることがとても特に気になった。例えば大卒割合とtaxの交互作用も正に有意(=価格転嫁率と学歴に正の関係が存在する)であれば「累進的である」という結論は強化されるように感じるが、その逆の場合はかなり弱いmixedなfindingということになるだろう。
・価格転嫁率が75-115%というのはそこまで驚くべきことなのかわからなかった。どんなに完全な価格転嫁(100%)が想定されていたとしても、ある程度のバラツキがあることを先行研究は想定していなかったのだろうか。ここら辺は経済学が専門ではないので全くわからない。
・イベントスタディー(社会学でよくみる"event history=survival analysis"ではなく"event study"分析)というのは自分には新しい分析方法の名前だったが、別に何か特別なことをしているわけではなく、ガソリン税の増税のある州の増税前後の時間のリードとラグを示すダミー変数を作成し、それにガソリン価格を回帰して増税の効果をpick upして図示することを目的としていた。DIDのトレンド分析には有用なのかもしれない。なぜ単純に平均を時間ごとにプロットしなかったのかはよくわからない。調べたところイベントスタディー 分析はコーポレートファイナンス等の分野でよく使われるらしい。
Stolper, Samuel., 2018, "Local Pass-Through and the Regressivity of Taxes: Evidence from Automotive Fuel Markets.", Harvard Environmental Economics Program Discussion Paper 16-70 (May 2016) [updated in June 2018]
要旨:
税の転嫁と帰着を巡る研究では、税の逆進性は相対的な消費量(relative quantity)を基に決定されることが前提とされているが、実際には相対的な価格(relative price)の分析も必要であり、増税の価格転嫁率(pass through rate)の異質性を考慮する必要がある。本WPでは2009年から州レベルで複数回にわたって増税が実施されたスペインを事例に、価格転嫁率には地域ごとに大きな分散があることと、住宅価格が高い地域ほど価格転嫁率が高いこと(=ガソリン税は逆進的ではなく累進的である)ことを示す。
スペインでは2007年からガソリンの売店(station)の週ごと(weekly)の価格を公開するシステムが整備されており、全国のstationのガソリンのstation-week価格データの作成が可能である。WPでは、このガソリン価格のstation-weekデータに州レベルのガソリン税の情報(観察期間中に何度か州ごとに上昇する)、売店レベルの情報(5分のドライブ圏における他のガソリン売店の数、ガソリン店のブランド、運営形態 etc.)、社会人口学的特性(municipality-yearレベルの人口密度、平均教育レベル、平均住宅価格 etc.)を紐付け、転嫁率を分析する。
WP中での分析は(i)スペインの全国レベルでのガソリン税の平均価格転嫁率の分析、(ii)価格転嫁率の異質性の分析の二部構成である。(i)と(ii)のどちらの分析でもまずはイベントスタディーモデルを用いて、増税前後の価格の変動がmean shiftである(増税の前後以外の時点では価格はパラレルトレンドである)ことを確認し、その後価格転嫁率を推定する。station-week固定効果モデルでtaxをretail priceに回帰し、taxの係数に100をかけたものが価格転嫁率である。転嫁率の異質性の分析に当たっては競合店の数や平均住宅価格とtaxの交互作用をとり、交互作用の係数をみる。その後、推定した結果を使って地域ごとの転嫁率の分布やstationのある地域の平均SESと転嫁率との関連を分析する。
分析結果として、(i)全国レベルでの平均転嫁率は95%前後で、100%と統計的に有意な差は認められないこと、(ii)転嫁率には地域ごとに大きな異質性があり、75から115%程度に95%の転嫁率が収まること、平均住宅価格と転嫁率は正の関係にあり、ガソリン税は累進的な課税となっていること等が示された。
コメント:
・消費税が逆進的ではなく、累進的な場合もあるというのは面白い。経済学をちゃんと勉強していないのでおそらくこれは専門家の間では長らく知られてきたことなのだろうが、「消費税が逆進的である」という高校の教科書的な知識?の理論ではなくデータからのエビデンスはどういうところにあるのか知りたくなった。
・ただ、「累進的である」ことの根拠は平均住宅価格ととtaxの交互作用が正に有意であること(=平均住宅価格と価格転嫁率は正の関係にあること)で主に判定されており、かなり限界がある気がした。平均住宅価格は地域のSESの一つの指標にすぎない。
・地域の平均的な人口学的特性の情報が得られないからという理由でurban areaだけに分析が絞られ、rural areaがカットされているのだが、rural areaの人の方が車を使う可能性は高い訳で、かなり問題がある気がした。
・上記と関連して、ガソリン売店のある市の学歴分布とtaxの交互作用もモデルに投入しているのにその結果を表で省略していることがとても特に気になった。例えば大卒割合とtaxの交互作用も正に有意(=価格転嫁率と学歴に正の関係が存在する)であれば「累進的である」という結論は強化されるように感じるが、その逆の場合はかなり弱いmixedなfindingということになるだろう。
・価格転嫁率が75-115%というのはそこまで驚くべきことなのかわからなかった。どんなに完全な価格転嫁(100%)が想定されていたとしても、ある程度のバラツキがあることを先行研究は想定していなかったのだろうか。ここら辺は経済学が専門ではないので全くわからない。
・イベントスタディー(社会学でよくみる"event history=survival analysis"ではなく"event study"分析)というのは自分には新しい分析方法の名前だったが、別に何か特別なことをしているわけではなく、ガソリン税の増税のある州の増税前後の時間のリードとラグを示すダミー変数を作成し、それにガソリン価格を回帰して増税の効果をpick upして図示することを目的としていた。DIDのトレンド分析には有用なのかもしれない。なぜ単純に平均を時間ごとにプロットしなかったのかはよくわからない。調べたところイベントスタディー 分析はコーポレートファイナンス等の分野でよく使われるらしい。
2018年11月20日火曜日
移民に対するネイティブの認識と再配分への態度(Alesina et al. 2018)
前回の投稿で、今学期読んだ論文をupすると書いたが、結局あの後で忙しくなってなかなかできないでいた。Thanks Giving休暇に入ったので今日discussした論文(先月公表されたWorking Paper)を一つ紹介しておく。
Alesina, Alberto, Armando Miano, and Stefanie Stantcheva, 2018. “Immigration and Redistribution.” NBER Working paper 24733
要旨:
WPでは、たくさんのことがなされているが、主に①調査国のネイティブ回答者(定義:調査国で出生した者)の「移民」(定義:調査国外で出生した者)についての認識(e.g.調査国に移民は何割いるか?、貧困層の移民は何割いるか?、移民はどの地域から来ているか?)の「現実」(著者らが政府統計から計算したデータ)からのズレの程度と、そのズレと回答者の社会人口学的特性との関連、②「移民について考えること」の「再配分態度」への因果効果、③「移民についての正確&肯定的な情報に接すること」の「移民に関する認識の正しさ」への因果効果、④「移民についての正確&肯定的な情報に接すること」の「再配分態度」への因果効果の4点が主に論じられる。
データは著者らによって独自に設計された5カ国(フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリス、アメリカ)でのサーベイからで、n=22506(各国で4000ケースほど)。調査票は(i)社会人口学的属性についてのセクション、(ii)調査国での移民の現状認識を問うセクション、(iii)再配分態度のセクションの3つに別れている。調査票中の(ii)と(iii)のセクションの順番を回答者ごとにランダムに入れ変えることによって②の因果効果を推定する。また③と④に関しては質問中にランダムに一部の回答者に対してinformation treatmentを与えて因果効果を推定している。Information treatmentというのは調査国の真の移民の割合、移民の出身国の分布、そして貧しいながらも頑張って働いている移民のストーリーである。
分析結果として、①どの調査国においても回答者は正確な値よりもはるかに移民の人口比を過大推定する傾向にあり、また「文化的に」離れた国からよりたくさんの移民が来ていると思いこむ傾向にある。学歴が低い層ほどこうした傾向は強い。②移民について単に考えること(=移民に関する質問に先に答えること)の再配分への態度への負の効果が認められる。③④移民についての正確&肯定的情報への接触の移民の現状認識への正(=現実に近い値への修正)の効果はあるが、この正の接触効果は移民について考えること(=移民の現状を問う質問に回答すること)で打ち消される。
コメント:
・少し論点が拡散しすぎていてわかりにくくなっている気がした。まあ最近公開されたばかりのWPでこれから直していくと思うので仕方ないと思うが、、
・著者らも指摘している通り、政治学と社会学でこういう研究はすでに一定数あり、①の新規性はそこまでないかもしれないと思った。
・②に関して、「移民への認識」と「再配分に関する態度」の質問の順序を回答者ごとにランダムに変えて、移民について考えることの効果を推定するというのは面白いデザインだが、再配分に関する質問に一番最後に答えなければならないことの効果と移民の質問に先に答えたことの効果をどう識別するかに問題がある気がした。順番を変えたグループとともに、順番が変わるのではなく、同じ長さで同じ程度の負担の全く関係ない質問を移民の質問の代わりに答えなければならないコントロールグループを入れた方が良かったかもしれない。例えば、長い質問紙に少しイライラしてきて再配分に関する質問に厳しめに答えることの効果が混じるということが想定できなくもない(考えすぎかもしれないが)。
・また、移民の現状についての認識を問う質問を先に答えることの効果を、著者らが「移民について考えること」の効果として解釈していること自体があまり納得できなかった。著者らはTable9で移民に関する質問に先に答えることと社会人口学的属性の交互作用をとって、効果の異質性を検討しているが、そもそも認識の内容自体に分散が大きいため、認識の内容上での効果の異質性を検討しても良いのではないかと思った。
・これはどんな移民研究にも当てはまるかもしれないが、社会科学系の研究者が通常使う「移民」の定義と、日常用語で使われる「移民」の意味が異なることが、この研究ではより大きな問題になる気がした。調査票では冒頭で移民は調査国外で生まれて合法的に調査国に居住している人、と定義されているが、回答者がすぐにその定義を覚えてその定義に回答中に従えたかどうかは疑わしい気がする。また、この調査自体が出生地主義の強いアメリカだけでなく、血統主義的な考え方も混じるヨーロッパ諸国をも対象としているために、なおさら問題かもしれない。なお著者の3人ともハーバード所属で、調査はアメリカ発である。
Alesina, Alberto, Armando Miano, and Stefanie Stantcheva, 2018. “Immigration and Redistribution.” NBER Working paper 24733
要旨:
WPでは、たくさんのことがなされているが、主に①調査国のネイティブ回答者(定義:調査国で出生した者)の「移民」(定義:調査国外で出生した者)についての認識(e.g.調査国に移民は何割いるか?、貧困層の移民は何割いるか?、移民はどの地域から来ているか?)の「現実」(著者らが政府統計から計算したデータ)からのズレの程度と、そのズレと回答者の社会人口学的特性との関連、②「移民について考えること」の「再配分態度」への因果効果、③「移民についての正確&肯定的な情報に接すること」の「移民に関する認識の正しさ」への因果効果、④「移民についての正確&肯定的な情報に接すること」の「再配分態度」への因果効果の4点が主に論じられる。
データは著者らによって独自に設計された5カ国(フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリス、アメリカ)でのサーベイからで、n=22506(各国で4000ケースほど)。調査票は(i)社会人口学的属性についてのセクション、(ii)調査国での移民の現状認識を問うセクション、(iii)再配分態度のセクションの3つに別れている。調査票中の(ii)と(iii)のセクションの順番を回答者ごとにランダムに入れ変えることによって②の因果効果を推定する。また③と④に関しては質問中にランダムに一部の回答者に対してinformation treatmentを与えて因果効果を推定している。Information treatmentというのは調査国の真の移民の割合、移民の出身国の分布、そして貧しいながらも頑張って働いている移民のストーリーである。
分析結果として、①どの調査国においても回答者は正確な値よりもはるかに移民の人口比を過大推定する傾向にあり、また「文化的に」離れた国からよりたくさんの移民が来ていると思いこむ傾向にある。学歴が低い層ほどこうした傾向は強い。②移民について単に考えること(=移民に関する質問に先に答えること)の再配分への態度への負の効果が認められる。③④移民についての正確&肯定的情報への接触の移民の現状認識への正(=現実に近い値への修正)の効果はあるが、この正の接触効果は移民について考えること(=移民の現状を問う質問に回答すること)で打ち消される。
コメント:
・少し論点が拡散しすぎていてわかりにくくなっている気がした。まあ最近公開されたばかりのWPでこれから直していくと思うので仕方ないと思うが、、
・著者らも指摘している通り、政治学と社会学でこういう研究はすでに一定数あり、①の新規性はそこまでないかもしれないと思った。
・②に関して、「移民への認識」と「再配分に関する態度」の質問の順序を回答者ごとにランダムに変えて、移民について考えることの効果を推定するというのは面白いデザインだが、再配分に関する質問に一番最後に答えなければならないことの効果と移民の質問に先に答えたことの効果をどう識別するかに問題がある気がした。順番を変えたグループとともに、順番が変わるのではなく、同じ長さで同じ程度の負担の全く関係ない質問を移民の質問の代わりに答えなければならないコントロールグループを入れた方が良かったかもしれない。例えば、長い質問紙に少しイライラしてきて再配分に関する質問に厳しめに答えることの効果が混じるということが想定できなくもない(考えすぎかもしれないが)。
・また、移民の現状についての認識を問う質問を先に答えることの効果を、著者らが「移民について考えること」の効果として解釈していること自体があまり納得できなかった。著者らはTable9で移民に関する質問に先に答えることと社会人口学的属性の交互作用をとって、効果の異質性を検討しているが、そもそも認識の内容自体に分散が大きいため、認識の内容上での効果の異質性を検討しても良いのではないかと思った。
・これはどんな移民研究にも当てはまるかもしれないが、社会科学系の研究者が通常使う「移民」の定義と、日常用語で使われる「移民」の意味が異なることが、この研究ではより大きな問題になる気がした。調査票では冒頭で移民は調査国外で生まれて合法的に調査国に居住している人、と定義されているが、回答者がすぐにその定義を覚えてその定義に回答中に従えたかどうかは疑わしい気がする。また、この調査自体が出生地主義の強いアメリカだけでなく、血統主義的な考え方も混じるヨーロッパ諸国をも対象としているために、なおさら問題かもしれない。なお著者の3人ともハーバード所属で、調査はアメリカ発である。
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