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2021年12月26日日曜日

今年面白かった社会学論文10選(2021年)

2019年2020年と年末に面白かった社会学論文の10選を載せたが、今年も10本の論文を紹介することにした。例年通り、今年私が読んだものの中で、特に「面白い」と感じた10本で、今年出版されたとは限らない。

私の専門フィールドは社会学の中でも移民研究(migration studies)なので、移民研究関係の論文が多い。方法論としては、計量分析、オンライン実験、参与観察、文書分析、インタビュー、フォーカスグループ、歴史社会学的分析(の組み合わせ)となっており、地域としては、米国、ドイツ、ロシア、日本、中国、韓国、台湾となっている(ばらつくように意識したわけではない。)また、紹介の順番に大きな意味はない。

各論文のまとめは、私の視点からまとめたものであり、論文の著者らの強調点とは異なることがある。リンクを貼ったので是非実際の論文自体も読んで頂きたい。


また、論文に対する(主に私の勉強のためにつけた)感想・コメントもそのまま残している。私自身は、以下の論文を書いた先生方の足元にも及ばない無名の博士課程の院生であり、ここに紹介したレベルの論文は一生書けない気がする。よって、本来は偉そうにコメントできる立場ではないのだが、研究者の世界では、自分よりはるかに偉く、実績のある人の素晴らしい研究に対しても、(先行研究に積み上げるために)コメントをすることが求められる。そういう文脈の中で理解して頂きたい。



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Guilbeault, D., Baronchelli, A., & Centola, D. (2021). Experimental evidence for scale-induced category convergence across populations. Nature communications, 12(1), 1-7.


人は未知のモノや現象に出会った時にそれを切り出してカテゴライズする(例:色、親族関係等)。人間の心理・知覚に本能的に備わったカテゴリーがあるという考え方もあり得るが、カテゴライズの仕方は人によって多種多様であり、史上の様々な人口集団のカテゴライズの仕方が比較的に均質であることをうまく説明できない。


この論文では、人のカテゴライズの仕方は多種多様である(=人口サイズが大きければ大きいほど考案されるカテゴリーの多様性は増す)ものの、人口集団の人口サイズが大きくなるにつれて、人口集団内でのカテゴライズの仕方が収束し、人口集団間のカテゴリーも似通っていくということを、1400人の参加者を2人から50人までの複数の人口集団に分割したオンラインでのゲーム実験を使って実証している。なお、実験の設定・内容や細かい前提についてここに書くとあまりにも長くなるので、関心のある方は、元の論文を読んで欲しい。


この論文は、壮大なリサーチクエスチョンをうまく設定し、独特な手法でアプローチしており、とてもとても印象に残った。実験参加者同士はお互いに関する情報を一切与えられていないため、カテゴリー形成に人口集団内・集団間の権力関係が働く現実世界とはかけ離れているのが気になった。しかし、逆にいうと、そういった権力関係がなくても、人口集団間でのカテゴリーは似通っていくということを示唆しているのかもしれない。



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Browning, C. R., Calder, C. A., Boettner, B., Tarrence, J., Khan, K., Soller, B., & Ford, J. L. (2021). Neighborhoods, Activity Spaces, and the Span of Adolescent Exposures. American Sociological Review, 86(2), 201-233.


近隣効果研究(neighborhood effects research)では、物理的に近隣(neighborhood)にいることで、その場所の効果を受けることが仮定されることが多い。しかし、実際にどの程度の時間を人は近隣で過ごしているのであろうか?


本論文では、近隣効果研究の対象となることの特に多い青年期に着目し、オハイオ州コロンブス市在住の11歳から17歳(n=1405)を、1週間(季節は様々)に渡ってGPSで追跡し、本人がつけた行動記録とも付き合わせて空間情報を解析している。平均すると、青年の起床時間のうち、自宅で過ごす時間は60%、近隣(census tract)で過ごす時間は5.7%、自宅・近隣外で過ごす時間は34.3%であった。親所得が低いこと、非白人であること、不利が集積する近隣に居住すること、犯罪が多い近隣に居住すること、学校がない近隣に居住することは、近隣で過ごす時間と負に関連することが明らかになった。なお、この研究の「近隣」の定義であるcensus tractは、通常、4000人程度の人口が住んでいる区画とイメージするとわかりやすい。近隣の定義としてよく米国の研究で用いられている。


3年くらい前に第一著者の先生が所属大学のセミナーにきてこの論文の発表をしていた。実はその際には強い印象に残らなかったのだが、出版された論文を読んでみて、問題設定の書き方が面白いと思った。また、不利な近隣に住む子どもは一日の中で家で過ごす時間を長くするか、近隣の外に出やすいという知見は、近隣効果研究で観察される「近隣」効果の解釈にも影響を与えうるのではないか。なお、自宅と近隣を明確に区別していることは気になった。近隣効果研究では「自宅」と「近隣」の区別をここまで強くしているだろうか?



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Lersch, P. M., Schulz, W., & Leckie, G. (2020). The variability of occupational attainment: How prestige trajectories diversified within birth cohorts over the twentieth century. American Sociological Review, 85(6), 1084-1116.


世代内職業移動のコホート間の経験の相違を、コホート内格差に着目して、西ドイツで1919年-1979年に出生した人口のパネルデータを用いて研究している。具体的には成長曲線モデルを推定して、職業威信スコアの入職時(entry)のコホート内分散、同スコアの軌跡(growth)のコホート内分散同スコアの不安定さ(fluctuation)のコホート内分散を分析する。雇用関係が固定化されていた1950-60年代に入職したコホートでは、入職時、入職後の軌跡ともに威信スコアのコホート内分散が小さい一方、それ以前とそれ以降に入職したコホートでは入職時や軌跡の分散も大きいという知見を見出している。

この論文は、内容というより、手法の用い方・解釈の仕方が印象に残った。社会学でよくみるマルチレベル分析を使用した論文(この論文の「成長曲線モデル」もマルチレベルモデルの一種である)では、(実は)固定効果に主な理論的関心があることがほとんどで、わざわざマルチレベルモデルを推定しなくても良い(クラスタロバスト標準誤差を計算すればよい)のではないかと思うことが(私自身の研究に対する自省も含め)しばしばある。一方、この論文では関心は変量効果にあり、固定効果にはほぼ関心がなく、Online Appendixにまわされている。また、解釈しやすいコホートごとの切片の変量効果(威信スコアの入職時点のコホート内分散)、時間(スプライン)係数の変量効果(威信スコアの軌跡のコホート内分散)とともに、残差分散を”fluctuation variability”(不安定さの分散?変動の分散?)として積極的に解釈しているのも印象に残った。このような残差の解釈は、アウトカムが職業威信スコアだと成り立つだろうが、例えば身長のような強い連続性が理論的に仮定されるアウトカムの場合は解釈が難しくなる気がした。



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Liu, J. M. (2021). From “Sea Turtles” to “Grassroots Ambassadors”: The Chinese Politics of Outbound Student Migration. International Migration Review, 1-25. Advance Online Publication. doi: 10.1177/01979183211046572


移民研究では留学生の研究が盛んになっているが、受入国(欧米日)における留学生受容に着目した先行研究がほとんどであり、送出国側に焦点を当てた研究は少なかった。この論文では、世界最大の留学生送出国である中華人民共和国からの留学生を、1)政策文書の分析、2)中国政府主催の各種留学生向け宿泊付イベントでの参与観察、3)地方官僚と留学生へのインタビューという三つの手法を用いて研究している。


数ある主要な知見の一つとして、政府レベルの留学生政策は海外への留学生とその留学生の帰国を「海亀」("sea turtles")とみて経済・政治発展の要とする見方から、「草の根の外交官(民間大使)」("grassroots ambasadors")として地政学的な価値を強調するものに変わっていったことが指摘されている。しかし、留学生の帰国を促して省や市レベルの経済発展を重視する地方官僚や、欧米の価値観に触れた留学生の間では政府の意図が冷めて受け止められている。


「移民」としての中国人留学生は欧米だけでなく、日本の移民研究者の間でも注目を集めているが、この論文はそういった日本や欧米の先行研究を送出国側の視点から補完する論文として、とてもうまく位置付けられていた。膨らませれば一冊の本になるレベルだと思うのだが、それを一つの論文として非常に簡潔にまとめているのも、読む側からすると有難いことである。



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Gerber, T. P., & van Landingham, M. E. (2021). Ties That Remind: Known Family Connections to Past Events as Salience Cues and Collective Memory of Stalin’s Repressions of the 1930s in Contemporary Russia. American Sociological Review, 86(4), 639-669.


家族内では世代間で様々な記憶が継承される。社会の「集合的記憶」も家族によって伝達されているのだろうか?論文では、ソ連のスターリンによる大粛清に関する集合的記憶をケースとして、フォーカスグループでのインタビュー及びロシア全国に代表性のある質問紙調査の分析によって、この問題に答えようとする。


著者らは、先行研究とフォーカスグループから、回答者が大粛清に関して、1)認知していること(大粛清があったことを知っている)、2)正確な知識を持っていること(犠牲者数のスケールを把握している)、3)個人的に重要な問題だと考えていること、4)道徳的に重要な問題だと考えていること、を区別できる質問紙調査設計をしている。分析の結果、スターリンによって粛清された親族がいることは、全てのタイプの大粛清の記憶に関して、強い正の関連を示した。また、この強い正の関連は子供の頃に家族内で大粛清について話した経験をコントロールした上でも残るため、家族内での記憶の伝達というメカニズムの他に、親族が被害に遭うということ自体が、記憶を顕在化させることを示唆している。


本論文は、分析手法の細かいところは(少しネガティブな意味で)気になるところが多かったのだが、とにかくイントロと理論の書き方がうまく、読んでいてワクワクした。アメリカ以外では中国や西ヨーロッパががASRでよく取り上げられるが、ロシアが取り上げられることは少なく、コンテキストに関する記述(例:プーチンとメドベージェフのスターリンに対する扱いの違い)も面白かった。私もこういう優れたイントロと先行研究レビューが書けるようになれば、ASRいけるのかもしれない(いけない...)



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Hauer, M. E., Holloway, S. R., & Oda, T. (2020). Evacuees and Migrants Exhibit Different Migration Systems After the Great East Japan Earthquake and Tsunami. Demography57(4), 1437-1457.


移住システム論では、既存の人(例:親戚)や組織(例:企業)のネットワークの中で人が移動するため、ある地点から別の地点への移住の流れが出来上がるとその流れは安定的に継続するとされる。では大規模な災害が発生した時に既存の移住システムはどうなるのであろうか?


著者らは東日本大震災前後(2004-2016年)の日本の都道府県間の年ごとの人口移動のパターンを分析することでこの問題に対する答えを出す。住民基本台帳をベースにした人口統計の分析の結果、大震災前後では東北の被災県からの「移住者」(migrants)(別の県に住民票を移す人たち)の絶対数は大幅に増加するものの、移住先の選択パターン(例:福島県からの移住者が各都道府県を選ぶ確率)に大きな変化はなく、安定していることがわかった。ただし、住民基本台帳とは別に記録される「避難民」(evacuees)に関しては既存の移住システムとは統計的に有意に大きく異なる移住先の選択パターンを示し、近隣の県への移動が目立った。


被災地からの人口流出の絶対量は増えるものの、「移住者」の移動先の選択パターンは東日本大震災前後で大きく異ならなかったという点がとても面白いと思った。逆に、「避難民」が「移住者」と異なり隣接県への移住を選択する確率が高いというのは、当たり前に思えた。ただ、もちろん、理論的には大事だと思う。なお、方法はとても記述的で、各被災県から他都道府県への移住確率の各年間の「類似度」をHellinger distance (H)に換算して検定しているため、回帰分析が一切出てこない。こういう記述的な分析はとても好きなのだが、Hへの変換とその後の検定のテクニカルな部分の移民研究への応用や諸問題についてもう少し詳しい議論が欲しかった。


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Lee, C., & Suh, M. (2017). State building and religion: Explaining the diverged path of religious change in Taiwan and South Korea, 1950–1980. American Journal of Sociology, 123(2), 465-509.


東アジアの中で、なぜ韓国だけキリスト教人口比率が圧倒的に高いのか?この問題に対して、著者らは韓国のキリスト教に関する先行研究をレビューした上で、韓国の歴史を宗教・歴史社会学の諸理論から再考することで答えを見出そうとする。著者らの第一の主張は台湾と韓国の比較可能性である。台湾と韓国は共に日本による植民地化を経験するとともに、1950年代に中国大陸/北朝鮮からのキリスト教関係者を多く含む人口の流入を経験し、アメリカとの良好な関係・反共・プロテスタントの大統領(蒋介石/李承晩)というコンテクストの中で、1950-60年代前半は同程度のキリスト教人口の伸長を経験した。


しかし、1960年代以降、韓国ではキリスト教がさらに伸長したのに対し、台湾では伸長することはなく、この時期の両国の違いに答えがあるはずである。論文では、経済、宗教の三者の関係性の変化が先行研究で見落とされてきたことが指摘され、台湾と対照的だった韓国の朴正煕政権(1963-1979)の中央集権的な産業政策、政権による積極的なキリスト教(と仏教)の奨励・伝統宗教の冷遇を限定的な答えとしている。


韓国のキリスト教を台湾のキリスト教と比較するという視点が(私にとっては)新鮮、かつ納得のいくものだった。論文中の議論は多少拡散してフォローしにくく、結論も完全な納得というものではなかったが、私が歴史社会学の論文を読み慣れていないだけだからかもしれない。本来は分厚い本としてまとめた方が良い内容な気がする。韓国ではプロテスタントだけでなく、仏教も同時期に伸長したという指摘も面白かった。韓国内の地域間のキリスト教人口比率の分散を利用して、さらに細かく著者らの議論を検証していけばより面白いのではないかとも思った。


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Abramitzky, R., Boustan, L., Jácome, E., & Pérez, S. (2021). Intergenerational mobility of immigrants in the United States over two centuries. American Economic Review, 111(2), 580-608.


米国の過去2世紀にわたる、移民-移民の子ども、米国出生者-米国出生者の子どもの所得の世代間移動の趨勢を、数百万件の父-子のペアデータを使って、分析している。具体的には、国勢調査の1880年(父)-1910年(子)のペア、1910年(父)-1940年(子)のペア、General Social Surveyの1984年(父)-2006年(子)のペア、Opportunity Insightの1997年(父)-2015年(子)のペアデータを作成し、父の所得のランクに対する、子の所得のランクを分析している。。


結果として、どの時代においても、(ほぼ)どの出身国でも、移民の子どもは、米国出生者の子どもと比較して、より強い、所得ランクの上昇移動を経験していることがわかった。移民の子どもの米国出生者の子どもに対するアドバンテージは過去2世紀に渡って安定してしており、特に父所得が下位の移民の子どもの間で強い。こうした移民の子どものアドバンテージは、移民の親の居住地選択(子どもの上昇移動が可能な地域に移民が居住しやすいこと)によって部分的に説明される。


この論文は、社会学の論文ではなくて、経済学のジャーナル所収の論文なのだが、ディシプリンを問わず、今後の米国の移民研究全体に重大な影響を持つであろうことから、ここに残しておく。数年前からワーキングペーパーとしては出回っていて、実は1年前にも読んだことはあったのだが、ついにAERに掲載された。著者のスタンフォードのアブラミツキーとプリンストンのブースタンは、著名な移民研究者であると共に、米国国勢調査を氏名と年齢情報を使って紐付ける体系的な手法を考案して、方法やデータを公開していることでも有名である。



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Potochnick, S., & Hall, M. (2021). US Occupational Mobility of Children of Immigrants Based on Parents' Origin-Country Occupation. Demography, 58(1), 219-245.


米国の研究では、出身国による差異はあるものの、移民の子どもは、同レベルの社会経済的地位の米国出生・非ヒスパニック系白人の親を持つ子と比較した際に、職業的地位の上昇移動を経験する傾向にあることが数々の研究で指摘されている。こうした知見を生み出したこれまでの研究では、主にデータの制約から、移民の親の米国での職業と、その子どもの職業の連関を分析をしてきた。しかし、移民の親(移民1世)の職業的地位は移住前と移住後で大きく異なること(例:出身国では医師で、米国ではタクシー運転手)が知られており、本来ならば移民一世の移住前の職業をも分析で考慮に入れる必要がある。


著者らはEducational Longitudinal Studyの移住前の親職業の情報を再コーディングすることで、この問題を解決し、再分析を行った。分析結果としては、移住前に高い職業的地位だったが、移住後に低い職業的地位についた移民親の子どもは、米国で高い職業的地位についており、親の出身国での職業的地位を「回復」している傾向がみられた。


この論文は私の関心ともかなり近く、とても気に入った。著者らも述べていることだが、親が移住前に低い職業的地位で、移住後にも低い職業的地位の子どもも、ネイティブ人口と比較すると高い上昇移動をすることも分析で確認されており、職業的地位の「回復」のストーリーだけでは移民の社会移動における有利さを説明することはできないという点は付記しておく必要がある。また、実際には出身国で初職を経験する前に渡米している移民親(例:大学進学で渡米し、職を見つけて、定住)が多いため、親が初職を経験した後に米国へ移動した人口とその子どもに関する研究であることはより強調されるべきだと思った。



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Feliciano, C., & Rumbaut, R. G. (2020). Coming of age before the great expulsion: the story of the CILS-San Diego sample 25 years later. Ethnic and Racial Studies, 43(1), 199-217.


CILS(正式名称:Children of Immigrants Longitudinal Study)は、学術的に絶大な影響力のあった米国の移民の子どものパネル調査(1992年、1995年、2001年)である。この論文では、1992年の最初の調査から(ほぼ)25年後の2016年に行われたサンディエゴサンプルの追跡調査の結果を基に、CILSの移民の子どもの「その後」(2016年には平均37歳)に対して、インタビュー調査と質問紙調査をしている。


主要な結論として、52.7%が大卒以上となっており、この大卒以上の者のうち、70%以上がカリフォルニアの公立大学を卒業し、95%がミドルクラス的職業についていた。また、全体の69%が自分自身をアメリカのメインストリームの構成員と考えており、移民の子どもの「その後」は良好なものであることが、インタビューデータとともに報告、解釈されている


論文では言及されていないが、CILSは、アルハンドロ・ポルテスらのグループと、リチャード・アルバらのグループで、移民の子どもの将来をめぐって一大論争(例えばこの論文に対するコメントリプライ)を引き起こした調査でもある。どちらかというと、アルバらの予想していた(移民の子どもの将来はとても明るいという)未来に近い結果になっている(と私は思う。)この論文の著者らは移民の子どもの上昇移動を1990年代-2000年代初頭のカリフォルニアの移民受け入れの文脈に還元して説明し、今後、移民にとって状況が悪くなるかもしれないことを示唆することで、過去のポルテスとアルバの論争に関して強い結論を出すことを避けているようにも読めた。また、アメリカの教育重視の公立大学(例:カリフォルニア州立大学システム)が移民の社会移動に果たす役割はとても大きいことは日本の今後を考える上でも重要かもしれない。なお、特集論文である。




2021年2月20日土曜日

近況0220:博論の進捗、2nd R&R、改稿&改稿、機械式時計

二日前、博論計画書のドラフトを委員会に送付し終わって一息ついている。3時就寝、8時起きが続いていたのだが、少しずつ戻していっている。


1. 博論の進捗

博論は19世紀末から20世紀前半にアメリカへ移住した日本人移民の社会移動に関するものになる。データは80年ほど前の強制収容所のアドミンデータ、1960年代の日系人のサーベイデータ、米国国勢調査1920, 1930, 1940のフルサンプルを10年ごとに出生地と名前と年齢でリンクしてパネルデータにしたものを主に用いる予定である。

来週の金曜日に第一回コミティーミーティングがあり、コミティーの4人全員からフィードバックをいただく予定。今の進捗だと、今年の4-5月に計画書が承認され、そこから博論をひたすら執筆し、来年の夏終わり(5年目終わり)には初稿を完成させ、1年間かけて修正・審査の予定だ。ちょうどここから2年後の2023年2月から5月の博士課程修了(=博士号取得)を目指している。修了後どうするかは完全未定だが、最近は博士号取った後のことはあまり考えないようにしている。


2. 2nd R&R

昨夏にR&R(修正再査読)をもらって、10月に再投稿していた論文が、無事に(?)2nd R&R(修正再々査読)になり、対応を進めている。投稿してから既に1年を超えていて進捗がカタツムリレベルだが、第三ステージ(*)に進めたのは嬉しい。前回の1st R&Rではレビュワーの修正要求とともにエディターから本質的な修正要求がたくさんあり、レスポンスレターが論文本文とあまり変わらない長さになった。

(*)ちなみに一部のジャーナルでは第三ステージの査読をせずに、第二ステージまでで結論を出すところもあるが、私が出しているところは基本的には第三ステージまではあって、稀に第四ステージ、第五ステージもあるらしい。

今回の2nd R&Rでは本文81箇所にエディターによるコメント(主に表現に関するもの)が入っており、かなり丁寧に修正すべきところを指摘された。正直、ここまで細かくするものかと驚いた。エディターはかなり有名な教授で、お忙しい方だとは思うので、大変感謝ではある。ただ、前回とは違い、修正は基本的には表現や言い回しや主張の強弱に関してで、レスポンスレターもシングルスペース1-2枚程度で終わりそうである。

なお、最近同じジャーナルに論文をアクセプトされたシニアの教授でも2nd R&Rでは数十箇所本文に細かい修正コメントつけられたらしいので、自分が院生だから丁寧に対応してくれているというわけではなさそうだ。第三ステージの査読も4ヶ月から半年かかるようなので、なるべく早く再投稿したい。


3. 改稿&改稿

二つの論文(一つは共著、一つは単著)を結構長いこと投稿準備しているが、修正点がどんどん見つかって、なかなかリビジョンが終わらない。できるだけ、両者とも3月中には投稿してしまえるようにしたい。共著の方は自分は責任著者ではなく、ジャーナル選定は責任著者の先生にお任せしているのだが、単著の方はDにまずは出してみようと思っている。デスクリジェクト( =査読にさえ回されない)される可能性も高いが、まだ博士課程修了予定まで2年はあるので、諦めずにトライするつもりだ。

ちなみに総合トップジャーナルになると自分の指導教員や、副指導教員の70代の大御所の先生でも一年に数回リジェクトされて悔しがっているレベルになる。院生中に責任著者として掲載できる人は超エリート大学(東海岸のHPや西海岸のB)に限られている印象だったが、去年は同期がD、先輩がASRとSFにアクセプトされることに成功していて、現所属先の院生でも載せれる人は載せれるんだとわかった。ただ、査読に 最低1年(長くて3年)はかかることを考えると、今年の年末くらいから投稿する分にはジャーナル選択に関して現実的な判断をしていかなければならないと思う。


4. 学会・学会発表

PAA(アメリカ人口学会)で論文が2本、口頭報告でアクセプトされたので、その準備もする必要がある。残念ながらZoomである。主催者によると「Zoom fatigueを減らすため」に報告時間が12分に短縮されたらしく(笑)、内容をかなり凝縮させる必要がありそうである。

SSHA(Social Science History Association)という歴史人口学、(計量系の)歴史社会学、経済史学、歴史学の研究者で構成される学会に加入しようと考えており、とりあえず11月の大会にエントリーを検討中だ。これは3月中旬までにアブスト提出で結構急ぐ必要がある。


5. 機械式時計

最近、趣味で「機械式時計について調べること」にハマっている(機械式時計を持っているわけではない)。特に時計業界の歴史、機械式時計の仕組み、職人養成制度について素人なりに調べて楽しんでいる。最近は、アメリカの時計愛好家コミュニティや、愛好家の方が作る解説youtube動画(例えばこのフォロワー22万人のyoutubeシリーズ)を就寝前に1.75倍最速で観ている。ちなみに日本語だと「腕時計のある人生」の動画がなかなか面白い。仕事としての研究と違い、出典の正確さとか、意義とかを一切気にせずに、楽しいから楽しめるのが良い。

もともと時計は好きなのだが、現在所持している一番高い時計でも4万円のMondaineのクオーツの時計(スイス鉄道のやつ)で、機械式時計は持っていない。ただ、現在、カジュアルで使える機械式時計を選定中である。もちろん、院生としての給料では予算も限られていて、今のところは1965年のSEIKO の初代ダイバーズウォッチ(通称62MAS)の復刻版(海外型番はSPB147、日本型番だとSBDC105)の購入を検討しているところだ。値段は1000ドルと、SEIKOのダイバーズウォッチの中では中価格帯(日本だともうちょっと高いが、アメリカの方がさまざまな事情で安い)。この復刻版は英語圏のSEIKO愛好家コミュニティで62MAS reissueや62MAS reinterpretationシリーズと呼ばれるものの一つで、とても人気があり、値段が3倍-4倍するTudorのBlackbayとクオリティを比較する動画まで複数出てきている(例えばこれとかこれ)。

2021年2月9日火曜日

博論計画書

また2ヶ月ほど更新していなかった。簡単に近況報告をしておく。

今学期も引き続き全学生・院生・教職員に対しての週2回のコロナの検査が続いている。学長からのメールによると教員の10%以上が既にワクチンを摂取済みらしいが、比較的若いPhD院生がワクチンを摂取できるようになるのはどんなに早くても4月末らしい。ただ、今週からジムやプールなども予約制で再開されている。

最近はひたすら4月上旬にディフェンス予定の博論計画書(Dissertation Proposal)を書いていて、精神的にとてもしんどい。博論計画書ディフェンスは、ブラウンの社会学部では4年目の終わり(=私の場合2017年秋入学なので今年の4月になる)にあり、社会学部の全教員20名程度+院生の前で博論構想を発表し、コメントをいただく、というパブリックな会である。もちろん、今年は全てオンラインで行われる。

「ディフェンス」といっても、この日に落ちたり受かったりするわけではなく、この日にもらったコメントを基に計画書を修正し、8月1日までに提出し、博論委員全員が合意すると晴れて博士候補(PhD Candidate)になれるという制度である。博士候補になると、TAやRA等の義務が全て免除になる(=研究だけしていれば給料がもらえる)というメリットが存在する。委員間の合意がとれない場合もたまにあるらしく、その場合無給になるのではないかと心配していたのだが、12月までに書き直すという前提で、給料は支給されるらしい。少し安心ではある。

「博論委員」は日本の大学院でいう主査と副査にあたるが、日本でいうニュアンスとは少し違い、博士課程後半戦3年間は指導教員が4人いるみたいな状態になる。博論提出まで、委員から常時助言をいただくという建前になっている。また就職の時の推薦状もかなり重要らしい。私の場合、中堅の先生2人(うち1人は指導教員)、シニアの先生2人にお願いした。中堅の先生2人は社会階層論・教育社会学寄りで、シニアの先生2人は移民研究・歴史人口学よりの人たちである。

なお、わかってはいたのだが、比較的審査が厳しい方が一名おられ、その対応が大変ではある。ただ、厳しい=細かく計画書をみてくれている、ということなので、有難いことではある。

色々書きたいことはあるのだが、今日はここまでにしておく。

2020年12月20日日曜日

今年面白かった社会学論文10選(2020)

昨年も 2019年に出会った論文で面白かったものの10選を載せたが、今年も独断と偏見で選んだ2020年版の10選を紹介することにした。2020年に出版されたものではなく、あくまで私が今年読んだものの中で、「面白い!」と思った論文である。なお、10選の中には最後に一冊だけ本が入っている。紹介の順番に特に大きな意味はない。

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Legewie, J. (2018). Living on the edge: neighborhood boundaries and the spatial dynamics of violent crime. Demography, 55(5), 1957-1977.

地理空間における社会的境界 (e.g., 黒人が多く住んでいる近隣と白人が多く住んでいる近隣の境)は物理的境界(e.g. 幹線道路)や政治的境界(e.g., 州境)とは異なることがしばしばある。エスノグラファーたちの数々の調査では社会的境界が存在し、社会的境界線上での生活が社会的境界の中での生活と比較して特殊な可能性を示唆してきた。にも関わらず、これまでの社会人口学研究では近隣(neighborhood)を独立した個々のユニットとみなし、近隣と近隣との社会的境界の特殊性について考えることは稀だった。

社会的境界を定義(測定)することは可能だろうか?また社会的境界上では争いごとや犯罪が起きやすいのだろうか?論文ではアメリカの大都市における人種・エスニシティごとの住み分け現象を事例に、地理空間上での人種・エスニシティ間の社会的境界の測定をし、社会的境界上では犯罪が起きやすいことを実証する。具体的にはAreal Wombingという地理空間分析の手法を用いて、シカゴの約4万の国勢調査細分区(Census block)と隣接細分区との人種・エスニシティ比率の差から、細分区レベルでの社会的境界値(Boundary likelihood value)を算出する。細分区レベルでの2011年の犯罪発生件数データを従属変数とし、社会的境界値を独立変数として、負の二項回帰モデルを推定する。分析結果として、社会的境界値は犯罪件数に正に関連することがわかった。またこの犯罪との正の関連は黒人と白人の社会的境界で最も強く、黒人とヒスパニックの社会的境界では弱く、白人とヒスパニックの社会的境界では確認されなかった。

この論文はイントロと先行研究レビューが素晴らしくうまく書けていて、惚れてしまった。ちょっと私の紹介の仕方では面白さが伝わらなかったと思うので、是非上記リンクをクリックして読んでいただきたい(論文はオープンアクセス)。

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Skopek, J., & Passaretta, G. Forthcoming. Socioeconomic Inequality in Children’s Achievement from Infancy to Adolescence: The Case of Germany. Social Forces.

親の社会経済的地位に基づく学力格差(SES学力格差)はいつ生じるのであろうか?この論文では、ドイツの教育パネルデータを組み合わせて擬似コホートを作成することで、生後6ヶ月から15歳までのSES学力格差の推移を推定している。もちろん、全ての発達段階で同じテストをしても意味はないので、例えば生後6ヶ月のwaveでは感覚運動機能の発達を測定し、小学校以降のwaveではより高度な学力テストをし、各waveでスコアを標準化する方法をとっている(論文のほとんどが方法論に割かれている)。分析結果として、SES学力格差は幼稚園に入学する5歳までの間に開き、幼稚園に入学してからは安定して推移することがわかった。著者らは幼稚園を含む学校が、学力格差拡大を抑制しているという解釈をしている。

米国と英国を中心にSESに基づく学力格差の推移に関してはたくさん論文が出ている。私も一本米国のデータを使った研究を投稿中(セカンドラウンドの査読中)である。ただ、私の論文も含め、ほとんどの研究が幼稚園入学以降(5歳以降)の学力格差の推移の研究となっており、幼稚園入学以前とをカバーする研究は少ない。この論文の一押しポイントは幼稚園入学以前も射程に入れて、学校教育開始以前に学力格差が開くことを明らかにしたことだ。

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近年は「環境難民」などの用語がセンセーショナルにメディアで語られるが、地球温暖化と移住はどうリンクしているのだろうか?著者らはタイ北東部のナンロン地域における51の集落の住民の移住パターンを、同地域の気候データや土地利用のデータと紐付け、気候変動、土地利用、移住、帰還移住の関係に関するAgent Based Modelをたててシミュレーションする。分析の結果として、気候変動による干魃、洪水等の環境変化は移住(out-migration)自体には大きな影響を与えないが、移住後の帰還移住(return-migration)を低減させることで人口減(depopulation)につながることを明らかにした。

この論文は移住を研究することを主目的とした調査としては最大規模のナンロンプロジェクト(Nang Rong Project)の研究代表チームの論文である。ナンロンプロジェクトは1984年から2000年まで続いたナンロン地域の51の集落の5万人を超える住民の悉皆調査・縦断調査で、家族ネットワークに関する情報も集められ、住民が移住した場合、移住先でのフォローアップ調査も行われている。さらには、衛生写真を利用した農地利用の地理情報、気候に関する情報とも結び付けられているので、気候変動と移住に関する様々な研究が可能となっている。

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Catron, P. (2016). Made in America? Immigrant occupational mobility in the first half of the twentieth century. American Journal of Sociology, 122(2), 325-378.

20世紀初頭に米国に移住した南欧・東欧系移民のサクセスストーリーを説明するにあたっては、当時拡大しつつあった製造業の内部労働市場での上昇が暗黙の前提とされてきた。論文では、この暗黙の前提を検証するため、20世紀前半に東欧・南欧系の移民を多く雇っていた3つの大・中小の製造業企業(その一つはあのフォード社)で20世紀前半に雇用されていた従業員の企業内で職歴データが分析され、東欧・南欧系の移民の内部労働市場での上昇は実はほとんどなかったことが示されている。

20世紀の前半に米国に移住した低スキルの移民の「同化」には製造業の拡大という時代効果(period effect)が強く想定されてきており、逆に現代の低スキルの移民の「同化」の失敗を説明する際には20世紀前半との産業構造の違いが挙げられることが多いが、これらのストーリー自体が正しくない可能性を検討するべき時にきている。

この論文で一番気に入ったポイントは既存の移民統合の理論(特に「新しい同化理論」と「分節化された同化理論」)の暗黙の前提を明らかにし、その前提が成り立たないことをデータを用いて批判していることである。また、たった3つの製造業系の企業のケーススタディーから、このような理論的インプリケーションを引き出すのは、とても深い先行研究の理解が必要だと思った。

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Connor, D. S. (2019). The Cream of the Crop? Geography, Networks, and Irish Migrant Selection in the Age of Mass Migration. The Journal of Economic History, 79(1), 139–175. 

19世紀半ばから20世紀初頭にかけてアイルランドから米国へは400万人ほどが移住したとされ、この間にアイルランドの人口は大幅に減少した。米国へ渡ったアイルランド人はどういう人たちだったのか?この疑問に答えるため、著者は1901年のアイルランド国勢調査を、1910年の米国国勢調査および1911年のアイルランド国勢調査にフルネームと年齢を使ってリンクし、アイルランドから米国への移住における社会経済的セレクションを分析した。分析結果として、1901年の時点で父職農業、農業生産性の低い地域に居住、父が非識字者、アメリカに既に移住がそれまでに多かった地域に居住していた者がアメリカに移住しやすいことを示してある。

この論文のすごいところはやはりアイルランド国勢調査と米国国勢調査をリンクして国をまたぐパネルデータを構築したことだろう。10年ほど前から、技術的な革新(OCR、機械学習的マッチング手法の導入 etc.)で、デジタル化されておらず、かつスペルや年齢で誤差が多い国勢調査、税金の記録、船の乗客名簿をデジタル化し、名前や年齢の情報を使ってリンクして、パネルデータを構築する試みが急速に増加していて、この論文も数あるそういう論文の一つではある。とはいうのものの、国をまたぐデータの構築は珍しく、おそらくデータ構築だけで死ぬほどの努力が必要だったものと想像される。

なお、この論文の著者は地理学者(地理学PhD)で、ジャーナルは経済学である。なので社会学の論文ではないが、著者の方は社会学系のジャーナルにも出していて、とても尊敬しているので、ここで紹介することにした。

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Lu, Y., Liang, Z., & Chunyu, M. D. (2013). Emigration from China in Comparative Perspective. Social Forces, 92(2), 631–658. 

中華人民共和国福建省は歴史的に大量の移民を世界各地に送り出している地域として知られる。本論文は1970年代後半から2000年代前半の福建省からの国際移住における移民のセレクションを調査・分析している。特筆するべきは欧州への移住が主流の福建省明渓県と、米国への移住が主流の福建省福州市という同じ福建省の二つの異なる地域からの移住を比較していることである。分析結果として、移住に関する理論が指摘するように、欧州と米国どちらへの移住でも家族や村の移住ネットワークが重要なこと、政治的資源(村や家族での地方共産党幹部との繋がり)へのアクセスが正に効くことが示されている。また、移住への制約が小さい明渓県からヨーロッパへの移住では学歴によるセレクションが皆無なのに対して、移住への制約が大きい福建省福州市から米国への移住では逆U字型の学歴選抜(中学歴が最も移住しやすく、低学歴者と高学歴者の移住確率は低いこと)があることが示された。

この研究の貢献は移民送り出し地域を世帯レベルでサンプリングし、移住した家族について聞きとるMexican Migration Project調査(ここでは詳しく説明しないが、移民研究界隈では最も有名な、メキシコからの移民に関する調査)と同じ設計の調査を中国で実施したことにある。また米国への移住だけでなく、欧州への移住に関しても調査していることも大きな貢献だろう。いつか日本への移住も対象にいれた中国での調査を誰か企画してほしい。
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感染症の発生源からの人口移動は、感染症の拡大をうまく予測できるか?論文では、コロナウイルス発生地とされる武漢を2019年の12月から2020年の2月までに経由して、他省・県へ移動した人口を携帯電話の位置情報データから計算し、その後の移動先の省・県での感染者数を予測できるかを検討した。分析結果として「とても綺麗に予測できました」という結論になっている。

「面白い!」というわけではなかったものの、2020年はコロナ抜きには語ることはできないので、10選の中に入れてみた。移民研究の端くれとしての理解だと、通常、このようなタイムセンシティブな研究では、データが揃っていないため、データが整備されている数年前の同年同時期の人口移動(例:1年前の同月の武漢から他地域への人口移動)の情報が現在にも当てはまると仮定して、感染症の拡散を予測するモデルを作るのが普通であろう。この研究がすごいのは、ほとんどリアルタイムで、しかも個人レベルの情報を用いて、人口移動とコロナウイルスの拡散をモデリングしていることだと思う。もちろん、中国のデータということで、プライバシー関連は少し気になる。

なお、自然科学系のNatureに載っているということで、「社会学なの?」と思われる方もいるかもしれない。この論文チームの責任者(いわゆるラストオーサー)は社会ネットワーク論のニコラ・クリスタキス氏で、社会学PhDを持ち、イェールの社会学部で教えていることから、社会学論文とカウントすることにした。クリスタキス氏は社会学者としての顔とともに、医師でもあり、かつ公衆衛生学でも有名であるスーパーマンである。

なお、社会科学系のジャーナルは生命科学系に比べると査読が長い(1−2年ほど)ので、まだコロナ関連論文は社会学の主要ジャーナル(AJS、ASR、Demography、SF)にはほとんど出ていない。来年、再来年はコロナに関する論文がとてつもなく増える予想をしている。

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Berger, T., & Engzell, P. (2019). American geography of opportunity reveals European origins. Proceedings of the National Academy of Sciences, 116(13), 6045-6050.

米国の世代間社会移動の開放性(親から子へ社会的地位が継承される度合い)には地域差がある。その地域差はどこに由来するのだろうか?著者らが出した答えはヨーロッパである。

欧州から米国へは19世紀から20世紀初頭にかけて大量に移民が渡った。著者らは722のCommuting Zone(CZ)レベルのデータを用いて、歴史上の移民の出身国別の米国内の定住先と、現在の米国内の社会移動の地域差には関連があることを明らかにした。例えば、北欧やドイツ出身の移民が多く定住した中西部のCZは社会移動の開放性が高く、イタリア系が多く定住した東海岸のCZでは開放性が低いという具合だ。なお、この関連は人種エスニシティに関係なく成り立つため、「人」に起因するのではなく、移民が地域ごとに作った「社会制度」の違いによると著者らは主張している。

この論文の面白いところは「巷」(=非学術的な文脈)では受容されているが、学術的な文脈では検証が難しくなかなか認められづらいストーリーをうまく実証したことにあると思う。論文中でもイントロでジャーナリスト兼作家のコリン・ウッダードが提唱する、現代アメリカを11の下位文化に地域区分する議論が引用されている。

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Gerhards, J., & Hans, S. (2009). From Hasan to Herbert: Name-giving patterns of immigrant parents between acculturation and ethnic maintenance. American Journal of Sociology, 114(4), 1102-1128.

移民が受け入れ国で自分の子供(移民二世)につける名前にはどういうパターンがあるのだろうか?著者らは移民の名前のドイツ化の指標(後述)を作り、南西欧(イタリア、スペイン、ポルトガル)、旧ユーゴスラビア、トルコ出身でドイツに居住する移民が、子供につける名前がドイツ社会への統合とどう関連しているかを分析した。分析結果としてはドイツ社会に統合(ドイツ人とのネットワークや社会経済的地位達成)されていればいるほど、ドイツ化された名前をつけるという結果になっている。

10年以上前の研究というのもあって、2020年の今から見返すと細かい分析の方法論では少し残念な点があるものの、Stanley Liebersonが1990年代に勢力的にやっていたファーストネームの研究を、移民統合研究の文脈に拡張したことが大きな貢献である。なお、私が一番感銘を受けたのは膨大な名前に関する情報を(1)ドイツでしか通用しない名前、(2)ドイツと出身国言語両方で通用する名前、(3)出身国でしか通用しない名前に分類した努力にある。論文中の注記によると固有名詞学(onomatology)という学問があるらしく、その研究者との共同作業らしい。

私も、戦前生まれの日系人の数万人のファーストネームに関する論文を書こうとしていて、(1)アメリカでしか通用しない名前(例: Theodore)、(2)アメリカでも日本でも通用する名前(George/貞治/丈治)、(3)日本でしか通用しない名前(例:Mitsuo)というような形で名前を3分類にしたいのだが、この作業をシステマチックにやる方法を思いつかずにいる。もしどなたか良い方法思いつく方いたら連絡をいただけると飛んで喜ぶ。

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Mohr, J. W., Bail, C. A., Frye, M., Lena, J. C., Lizardo, O., McDonnell, T. E., Mische, A., Tavory, I., & Wherry, F. F. (2020). Measuring Culture. Columbia University Press.

これは論文ではなくて本。文化の測定に関して、社会人口学者、文化社会学者、政治社会学者、社会ネットワーク研究者が共同で書いた本である。共著なのに全体にとてもまとまりがあって、おそらくこれまで読んだ社会学の本の中でも「面白さ」トップ20には入ると思う。イントロの章での社会学における文化の測定の歴史があるが、とてもよくまとまったレビューである。

ASR編集長のリザルド氏や、私がとても尊敬している若手人口学者のフライ氏(去年のこの記事で論文を紹介した人)なども執筆陣に入っている。なお、「測定」という言葉が使われていることで、日本でいうところの「計量」社会学の人のための本なのか?と聞かれたことがある。「計量」の人にも、「質」の人にも同じくらい有益だと思うし、執筆陣にもどちらもいる。特に文化社会学の領域は、計算機社会科学の台頭もあり、「計量」と「質」という区分は意味がないように思う。著者らもイントロでそういうことを述べている。

もっと紹介を書いてもいいのだが、私は文化社会学はど素人で、あまり変なことを書いてこの本の価値を損ねたくないので、これ以上は書かないでおく。

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以上である。見返すと、博論の先行研究となる移民研究(migration studies)関連の論文が多い。指導教員の先生にはもっと広く先行研究を読むように言われ、特に社会的不平等(social inequality)の先行研究(literature)のフレームワークを博論に取り込むように言われるのだが、どうしても移民研究の先行研究に引っ張られる気がする。元々の自分の関心なのだと思う。

2020年11月6日金曜日

移民研究ジャーナルに関するウェビナーの参加メモ

本日、アメリカ社会学会(ASA)の国際移民セクション主催の移民研究ジャーナルに関するウェビナーにオンライン参加した。パネリストはASA次期会長のメンジバー教授(UCLA社会学部)、IMR編集長のウィンダーズ教授(シラキュース地理学部)、ブロームラード教授(バークレー社会学部)、アサド教授(スタンフォード社会学部)である。かなり豪華なパネリストで、開始10分前にtwitterで知って5分前に申し込みしたのだが、とても嬉しかった。

セミナーの要旨はいつかASA会員向けに公開されるらしいが、フランクな意見交換を促進するために録画はあえてされていなかった。日本でASA会員の方は少ないだろうし(ちなみに、自分も会費負担が嫌でASA会員を抜けている)、活字にされにくいtipsも含まれているので、メモとして残しておく。

移民研究は学際的、かつ(研究者数的な意味で)急成長中のフィールドで、移民研究の学術ジャーナルも(無名のものも含めると)100以上あると思われるが、社会学/人口学系の移民研究者の間では、いわゆる「トップフィールド」ジャーナルはInternational Migration Review(IMR)Journal of Ethnic and Migration Studies (JEMS)の2誌だというコンセンサスが研究者間で緩く存在しているように思う。また、(世界移住機関IOMの機関誌)であるInternational Migration(IM)もステータスがあり、この3誌どれかへの掲載を目指して研究をしている人が多い。以下のメモにも出てくるが、この3誌の中ではIMRがアメリカ系、IMJEMSは欧州系のジャーナルである(といってもどのジャーナルにもアメリカ、欧州、その他の地域の研究は登場する)。

今回のウェビナーでは2017年11月からIMRの編集長をつとめているウィンダーズ教授が、前半、IMRについてレクチャーをし、その後はIMRを離れて、パネリスト間で移民研究のジャーナル一般や移民研究の動向についてディスカッションと質疑応答があった。以下はメモ。

まずはIMRについてのレクチャーのメモ。

1. 掲載率、査読期間、査読プロセスなど
  • 2017年以降のIMRの掲載率は6-8%を推移
  • デスクリジェクト率は70-80%*(下記の私の追記も参照のこと)
  • デスクリジェクトの場合でも、エディターコメントを丁寧に返すため6週間程度を目標としている
  • 査読に回された場合、ファーストレスポンス(1回目の査読結果)までは6ヶ月を目標としている
  • R&R(修正再査読)は、最大で4回程度まで繰り返すことがある
  • 過去には4回のR&Rの後、研究論文から研究ノートに変更して掲載した事例もあるので、諦めないこと
  • R&Rで新しいレビュワーが追加されるかは、1st Roundでレビュワーがしっかりとしたレビューをしてきたかと、1st Round後にレビュワーが2nd Roundのレビューをすることを承諾しているかによる
  • 編集部はレビュワーも評価してて、適当なレビュワーには次は頼まない

2. 内容に関して
  • IMRでは、国際移民に関係ない国内移動(internal migration)の研究はデスクリジェクト(国際移動の研究を掲載することにリソースを割くため)している
  • 研究方法(量・質)による掲載率の違いはないが、圧倒的に量的な手法の投稿が多い。
  • 編集長のウィンダーズ教授自身は批判的人種理論を軸としたエスノグラフィー(質的手法)が専門
  • 副編集長4人は量的手法が専門で、量的手法については4人のアドバイスに従っている
  • 1964年に、当時ヨーロッパの内容中心だったInternational Migration誌に対抗して、アメリカ中心のジャーナルを作るためにInternational Migration Review誌が生まれたという背景があり、歴史的にアメリカの研究の投稿自体が多かった
  • ただし、最近はヨーロッパからの投稿が激増し、ヨーロッパの副編集長を1名追加した
  • 地域アンバランスをなくすために、フィールドからの知見をレポートの形で掲載できる新しい投稿形態を作った(非欧米地域の投稿を特に歓迎)
  • 非欧米地域の研究論文の掲載をさらに増やそうとしている
  • アメリカの研究でも「なぜアメリカの事例を持ってくる必要があるのか?」を明確に述べる必要がある(他の地域も同じ)

3. 投稿のtips
  • R&Rのコメントで不明瞭なことがあったら、エディターに連絡して、質問しても良い
  • ディシプリン(社会学、地理学、政治学、経済学)を超えた移民研究に対する理論的貢献が重要
  • 成績優秀で、かつ批判的な学部生を説得するように論文を書け
  • Potential Reviewerの名前をカバーレターに書いたものも考慮するが、編集長としての経験上、投稿者から推薦された人も編集部側で選んだ人も、あまり査読の厳しさは変わらない。マイナーな地域の研究の際には名前があると編集部的に助かることもある。

次に、パネルディスカッションと質疑応答だが、あまり印象に残った議論はなかった。あえて一つ挙げるとすれば、ジョブマーケット前の博士院生・ポスドクや、テニュア審査前の助教授(Assistant Professor)の方がたくさん参加しているためか、業績評価時のディシプリンベースのジャーナル(社会学、政治学、経済学)との比較に関する質問がいくつかあった。パネリストの方々の回答としては以下のようなものだった。


4. 業績評価時のIMRと他のジャーナルの相対的評価
  • 研究者の所属ディシプリンによって学際的な移民研究ジャーナルがどう評価されるかは大きく違う
  • IMRに載せることができた場合、社会学部ではGender&Society等、ディシプリンベースの「トップフィールド」ジャーナルと同程度の評価を受けることができる(逆にいうとAJSやASRよりは評価は低くなる)
  • 一方、政治学部や経済学部にいる場合、同じ論文をディシプリンベースのジャーナルに掲載した場合と比べると業績評価で低く評価される可能性が高い
  • テニュア審査が済んで、ジャーナルランクを気にする必要がない場合、純粋な移民研究フィールドへのインパクトという観点からは、ディシプリンベースの総合ジャーナルよりも、移民研究のジャーナルに載せた方が高インパクトのことが多い

以上、参加した際にとったメモをまとめたものである。一つ気になったは、デスクリジェクト70-80%は流石に高すぎで、「1st Roundでのレビューでリジェクトする率」の言い間違えではないかということだ。よって、あくまでこの数字は参考程度にしておいて欲しいが、IMR編集部の1回目の査読期間の「目標」が約半年と長いこと、年間掲載論文数は50本程度に対し投稿が600件前後(今年はコロナで増えて800件らしい)もあることを考えると、大半をレビュワーに回さずにデスクするという戦略も本当なのかもしれない。

また、R&Rのコメントの意味が分からなくて困ったら、エディターに連絡して良い、というのはとても重要な知見だった。最近IMRに載せたブラウンの先生も何度もR&Rが続いた後にエディターに電話して、詳しくコメントの意図を聞いたと言っていたが、偉い先生だからできることのように思っていた。自分も次回以降は積極的にエディターに連絡をとろうと思った。

なお、国内移動の研究をIMRがデスクするという噂は、国内移動研究で有名な副指導教員の先生からも聞いていた。もちろん雑誌名からして国際移動に強調点があるのはわかるのだが、国内移動と国際移動は理論的には同じフレームで考えられることが多く、少し残念に思った。ちなみに、インパクトのある国内移動研究が多く掲載されている移民研究雑誌はPopulation, Space and Placeだと思う。




2019年12月16日月曜日

今年面白かった社会学論文10選(2019)

学生のレポートの採点が残っていてこんなことをしている場合ではないのだが、クリスマス前には終わらせたかったジャーナルDへの投稿も完了し、自分の期末レポート(D3にもなって、3本も書かないといけなかった、、)も終わりが見えてき、明後日から一時帰国に入るので、その前に今年一年で読んで面白かった論文を10選あげておく(順不同)。一年といっても、昔読んだものほど印象が薄れてしまうので、ここ二ヶ月くらいで読んだ論文にバイアスがかかっている。なお、今年僕が読んだ論文で、今年出た論文ということではない。

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Rissing, B. A., & Castilla, E. J. (2014). House of green cards: Statistical or preference-based inequality in the employment of foreign nationals. American Sociological Review, 79(6), 1226-1255.

Auditデータをとてもうまく使って、米国のグリーンカードの審査で起こっている「差別」が「選好による差別」ではなく、「統計的差別」であることをとてもわかりやすく示している。今年になるまでこの論文を知らなかったことは勉強不足としかいいようがない。この論文は移民研究してない人でも絶対面白いので是非読んで欲しい。分析もシンプル。
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Brinton, M. C., & Oh, E. (2019). Babies, Work, or Both? Highly Educated Women’s Employment and Fertility in East Asia. American Journal of Sociology, 125(1), 105-140.

東アジア(日本と韓国)で出産/育児と女性の就労継続が難しいとされる背景を、160人以上のインタビューデータを基に明らかにした社会人口学の論文。人口学で質的データを使った論文は相対的に少ないので貴重な気がする。
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Torche, F. (2018). Prenatal exposure to an acute stressor and children’s cognitive outcomes. Demography, 55(5), 1611-1639.

胎児期に母親が受けるストレスがどのように子どもの出生後の発達に影響を与えるかというのはよく知られていない。この論文ではチリで2005年に発生した地震による母親の被災と、どの胎児期に母親が被災したかのバリエーション(第一、第二胎児期は子どもの発達に大きな影響があるが、第三胎児期は影響が少ないことが知られているらしい)を利用してストレスの影響を分析している。分析の結果、貧困家庭の子どもにおいては第一、第二胎児期に母親がストレスを受けることが7歳時点の学力に負の影響を与えることが示されている。Torcheは日本でも教育社会学界隈ではよく知られているチリ人社会学者である(スタンフォード大教授)。この論文に限らないが、文章をわかりやすく書くのがとてもうまいと思う。
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Catron, P. (2019). The Melting-Pot Problem? The Persistence and Convergence of Premigration Socioeconomic Status During the Age of Mass Migration. Social Forces.

移民の移住前のSES(社会経済的地位)は移住後の移民(1世)とその子ども(2世)の社会経済的地位達成にどう影響するのか?移民の移住前のSES関するデータはなかなか見つけるのが大変だが、Catronは19世紀後半のヨーロッパからアメリカに来た移民(1世)の船の乗客リストの名簿の名前と職業を1910年の国勢調査データの名前にマッチし、さらに1910年に0-18歳だった移民の子ども(2世)の名前を1940年の国勢調査の名前にマッチすることで、この問いに答えられるデータを作成した(Note:当時はヨーロッパからは船でしか来ることができない)。結果、移住前のSESは移住後の移民1世のSESと関連するものの、その子どもの世代にはほぼ関連がなくなるという結論を出している。これは19世紀後半に移住したヨーロッパ移民の「同化」が速く進んだという既存の研究の知見と一致する。この論文は以前に発表を聞いたのだが、最終稿はOnline Firstで出たばかりでちゃんと読めてないので冬休みに熟読したい。
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Logan, J. R., & Martinez, M. J. (2018). The spatial scale and spatial configuration of residential settlement: Measuring segregation in the postbellum South. American Journal of Sociology, 123(4), 1161-1203.

南北戦争後の米南部においては、「白人」と「黒人」のResidential Segregation(居住分離)は北部に比べてとても低かったとされてきた。しかし、これで北部よりも南部の方が「白人」と「黒人」の社会的距離が近かったと結論づけるには問題がある。なぜなら、分離を測るスケールの設定で分離指数は高くもなりし、低くもなるからだ。この研究では1880年の米国の国勢調査の100%データ(ピンポイントで誰がどこに住んでいたかを地図上に再現できる)を用いて家レベルでの居住分離のパターンを明らかにし、最小のスケールで居住分離を測ると先行研究とは全く違うパターンが見えてくることを示している。また居住分離の空間形態(e.g.,「白人」は大通りに面して住み、「黒人」は路地に面して住む)の諸パターンも示されている。とても記述的な論文で、空間分析におけるスケールの大切さを知るためにはとても良い勉強材料だと思う。なお、今学期は筆頭著者のSpatial Thinking in the Social Sciencesという授業を受けて、とても色々考えさせられた。筆頭著者のこのAnnual Review論文は空間分析における空間(space)と場所(place)の違いを考えるのにとても役立つので関心のある方はおすすめである。
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Song, X., Massey, C. G., Rolf, K. A., Ferrie, J. P., Rothbaum, J. L., & Xie, Y. (2019). Long-term decline in intergenerational mobility in the United States since the 1850s. Proceedings of the National Academy of Sciences.

米国の国勢調査と各種社会調査データをマッチさせて、1830年から1980年の出生コホートの世代間職業移動の長期トレンドを示している。農業からの転出を除いて分析すると、相対移動率は150年間で安定しており、いわゆる「FJH仮説」(論文中ではLZ仮説の方が引用されている)を支持している。絶対移動をみると、上昇移動は1900年出生コホートまでは増加するものの、1940年以降は下降している。この論文は、2年前に米国における世代間所得移動の長期トレンドを示してScienceに載ったChetty, Grusky, Hell, Hendren, Manduca and Narang (2017)(あえてet al.を使わない!)の職業版と言えると思う。筆頭著者と最終著者は両者とも大学院からの留学組としてアメリカに来て、様々なハンデを乗り越えながら今のポジションを手に入れて、米国の長期トレンドをクリアに示す重要な論文を、社会学を超えて影響力のあるPNASに載せている。留学生の鏡である。
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Tolnay, S. E., Deane, G., & Beck, E. M. (1996). Vicarious violence: Spatial effects on southern lynchings, 1890-1919. American Journal of Sociology, 102(3), 788-815.

米国では、19世紀末から20世紀初頭にかけて南部でたくさんの黒人がリンチによって殺害された。群(county)レベルの時系列データを使い、リンチが起きると、その後、その郡の近くの郡ではリンチが減少することを示している。推定された「負の効果」はリンチが「熱狂」によるものではなく、社会経済的な目的を持って「計算」されたものだったからだ、と解釈している(この解釈は若干飛躍しているように私は感じている)。1996年の論文で空間ラグモデルを用いているのはアメリカ社会学のすごいところだと思う。
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Legewie, J., & Fagan, J. (2019). Aggressive policing and the educational performance of minority youth. American Sociological Review, 84(2), 220-247.

NYCではOperation Impactという犯罪が起きやすい地区(ビルなどのかなり細かい単位の場合もある)を指定し、その指定地区(Impact Zone)に警察を集中配備する政策を2000年代初頭に実施した。Impact Zone指定地区の指定期間中、警察は職務質問を積極的にすると共に、かなりマイナーな犯罪でも逮捕を積極的にしたとされる。米国に住んでいれば想像はつくが、当然、Central Cityの「黒人」の青少年は警察に差別的に扱われたことが推察される。当論文では、地区間で警察が集中的に配備されたタイミングが異なる(Impact Zoneはかなり頻繁に移動されたようだ)ことを利用して、警察の配備と子どものテストスコアの因果関係を分析している。ちなみにデータは住所と紐づいたNYCの9-15歳(25万人分!)のテストスコアのデータである。分析の結果、Operation ImpactはImpact Zone指定エリアに指定期間中に住んでいる「黒人」の子どもの学力に負の効果があることが示されている。子どもの年齢が高ければ高いほど強い負の効果がある。マルチレベル/パネルデータの授業で文献指定されたのだが、結果が綺麗すぎて少しびっくりした。もう一つびっくりしたのはこの政策の雛形となる政策を実施したのが2001年までNYC市長をつとめたRudy Giuliani氏(現在トランプ大統領の顧問弁護士でウクライナ疑惑の中心人物)であることだった。
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Frye, M. (2017). Cultural meanings and the aggregation of actions: The case of sex and schooling in Malawi. American Sociological Review, 82(5), 945-976.

マラウィにおいて混合研究(高校生のパネル調査&生徒と教師へのインタビュー)を行い、性的関係をもつことと高校中退の関係を「文化」概念を通して明らかにしている。パネルデータからは性的関係の開始と高校中退は関連は認められるものの、高校中退の重要な要因となるはずの欠席、成績、非行はなんら関連が認められない。筆者は生徒や教師との綿密なインタビューやフィールドワークを通して高校教師や生徒の間で性的行為と高校退学が強く結びついて理解されていることを示し、こうした性的関係の開始と高校中退を結びつける「文化」そのものが高校中退の原因になっていると結論づける。この論文は「文化人類学の人口学」(Anthropological Demography)の「文化」(Hammel 1990, Population and Development Review)を量的&質的データ両方を用いて検証可能な形に落とすことに成功した論文のように思う。論文の著者は人口学若手のスター的存在で、「文化」を人口学に取り入れる点では来年夏頃にASRのエディターのOmar Lizardo等と共著でMeasuring Cultureという本が出すらしい。
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Baum-Snow, N. (2007). Did highways cause suburbanization?. The Quarterly Journal of Economics, 122(2), 775-805.

タイトルの通り高速道路の建設が郊外化の原因となったことを示した論文。実際の高速道路の操作変数に国防省が国土防衛のために作成していた高速道路の計画を持ってくるアイデアが斬新だった。なお、これは社会学ではなく、経済学の論文である。Spatial Thinkingのコースワークの課題文献だった。
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Calarco, J. M. (2014). Coached for the classroom: Parents’ cultural transmission and children’s reproduction of educational inequalities. American Sociological Review, 79(5), 1015-1037.

東海岸大都市近郊の小学校のとあるコホート(4学級)を3から5年生までの3年間、学級と家庭で継時的に観察したエスノグラフィ。親が子に教える「クラス内で困った時の適切な振る舞い」が白人労働者階級と白人中産階級で異なることを論じている。前者の親は教師を権威ある存在とみなし、問題があっても教師を煩わせずに自分で解決することを求める。一方、後者の親は教師よりも学歴があることも多く、積極的に教師に助けを求めて解決を目指すように助言する。基本的に教師は中産階級の子がとる行動を肯定的に受け止め、対応をする。著者はペンシルヴァニア大のラローの弟子(現在は既にインディアナ大で教えている)。



以上。2017年に渡米した頃はESR(European Sociological Review)の方がASR、AJS、SFよりも面白く感じていたのだが、最近はASR、AJS、SFの方が面白いと感じるようになってきたので、アメリカに染まってきたんだと思う。

2019年6月13日木曜日

社会人口学文献リスト

社会人口学のプレリム試験の準備にあたり、学部からもらったリストがかなりoutdatedなので、勉強のために自分でも最低限の必読リストを作ることにした(注1)。と同時に、関心のある方の参考にもなれば良いと思って、少し解説も入れたりした。試験のために、このリストの論文はほぼ全部読んだ上で、文献情報だけを見て重要ポイントが頭に浮かんでくるようにしている(文献メモ作成)。なお、このリストは自分の試験目的であって、より代表性のあるリストが必要な方は別のリスト(この投稿の最後参照)を当たった方がいいかもしれない。また試験の性格上、歴史人口学の文献はほぼ入っていない。

以下、各セクションは独断と偏見と都合(僕が論文を覚えやすくする分け方、かつ過去問に答えやすい分類)により分類してあるが、それぞれ繋がっていて明確に分けるのは難しい。★は個人的におすすめな論文(おすすめな理由は様々)。


1. イントロ

Harper (2018)と河野(2007)は社会人口学を簡単につかむのに良い。河野先生は1950年代にブラウンで社会学のPhDを取得されている大先輩。人口学ハンドブックの改定後のBrown (2019)と改定前のHirschman and Tolnay (2005)は良い意味で被っていない。社会人口学の歴史を知りたい方は後者から読むべし。Preston et al. (2001)とRowland (2003)はメソッドの辞書のように用いると良いと思う。次の2. 人口転換論と出生セクションのDyson(2013)も社会人口学の核とも言える人口転換論を理解するためにおすすめである。なお、人口学を批判的に考える文献を求めている方は一気に飛ばして最後の批判的人口学の文献にあたってみていただきたい。

社会人口学分野の主要ジャーナル
社会人口学の代表ジャーナルはDemographyPopulation and Development Reviewで「二大誌」、ないしはPopulation Studiesも入れて「三大誌」とされるらしい(某先生談)。ちなみにブラウンのリストはほぼ全てが二大誌からだが、Population Studiesも目を通すようにという「注意書き」が存在する(昔はPopulation Studiesは今よりはるかに威信が高かった、とのこと)。またDemographic ResearchEuropean Journal of PopulationPopulation Research and Policy Reviewなどの有力ジャーナルにもかなり影響力の高い重要論文が載る (最近の印象では特にDemographic Research)。この他にJournal of Gerontology: Social SciencesStudies in Family PlanningInternational Migration Review、Population and Environment のような人口学の特定のテーマに関するジャーナルや、Journal of Population Economicsのような経済人口学のジャーナル、American Journal of SociologyAmerican Sociological ReviewSocial ForcesJournal of Marriage and Familyのような社会学のジャーナル、American Economic Review、 The Quarterly Journal of Economicsのような経済学のジャーナルも広く社会人口学と関わる重要論文を載せている可能性がある。


人口学入門
Harper, Sarah. 2018. Demography: A Very Short Introduction. Vol. 565. Oxford University Press.
★河野稠果. 2007. 人口学への招待少子・高齢化はどこまで解明されたか中央公論新社.

社会人口学の全体像
Brown, David L. 2019. “18 Social Demography, Space and Place.” Pp. 483–97 in Handbook of Population, edited by D. L. Poston. Cham: Springer International Publishing.
Hirschman, Charles and Stewart E. Tolnay. 2005. “Social Demography.” Pp. 419–449 in Handbook of Population, edited by D. L. Poston and M. Micklin. New Yrok: Kluwer Academic/Plenum Publishers.

2. 人口転換論と出生


人口転換論だけで一つのセクションを作るか迷ったが、出生とまとめた。なお、第二人口転換論関係の重要論文の一部(e.g., EspinAndersen et al. 2015やGoldscheider et al. 2015)は家族とジェンダーセクションにある。どれか一つだけ選ぶとしたらDyson(2013)を読むことがおすすめ。


Bongaarts,John. 1978. “A Framework for Analyzing the Proximate Determinants of Fertility.”Population and Development Review4(1):105.
Bongaarts, John and Griffith Feeney. 1998. “On the Quantum and Tempo of Fertility.” Population and Development Review24(2):271.
Bongaarts,John and Susan Cotts Watkins. 1996.“Social Interactions and Contemporary Fertility Transitions.”Population and Development Review22(4):639.
Bryant,John. 2007. “Theories of Fertility Decline and the Evidence from Development Indicators.”Population and Development Review33(1):101–27.
Caldwell,John C. 1976. “Toward A Restatement of Demographic Transition Theory.”Population and Development Review2(3/4):321.
Caldwell,John C. 2005. “On Net Intergenerational Wealth Flows: An Update.”Population and Development Review31(4):721–40.
Cleland, John and Christopher Wilson. 1987. “Demand Theories of the Fertility Transition: An Iconoclastic View.” Population Studies 41(1):5–30.
Coale,Ansley J. and Susan Cotts Watkins,eds. 1986. The Decline of Fertility in Europe. Princeton University Press.
Coleman,David. 2006. “Immigration and Ethnic Change in Low-Fertility Countries: A Third Demographic Transition.”Population and Development Review32(3):401–46.
Davis,Kingsley. 1963.“The Theory of Change and Response in Modern Demographic History.”Population Index29(4):345.
Dyson,Tim. 2013. Population and Development: The Demographic Transition. Zed Books Ltd.
Goldstein,Joshua,Wolfgang Lutz,and Maria Rita Testa. 2003. “The Emergence of Sub-Replacement Family Size Ideals in Europe.”Population Research and Policy Review22(5/6):479–96.
Goldstein, Joshua R., Tomáš Sobotka, and Aiva Jasilioniene. 2009. “The End of ‘Lowest‐Low’ Fertility?” Population and Development Review 35(4):663–699.
Kravdal, Øystein and Ronald R. Rindfuss. 2008. “Changing Relationships between Education and Fertility: A Study of Women and Men Born 1940 to 1964.” American Sociological Review73(5):854–73.
Lesthaeghe,Ron. 2010. “The Unfolding Story of the Second Demographic Transition.”Population and Development Review36(2):211–51.
Mason, Karen Oppenheim. 1997. “Explaining Fertility Transitions.” Demography34(4):443.
Morgan,S. Philip. 2003. “Is Low Fertility a Twenty-First-Century Demographic Crisis?”Demography40(4):15.
Sobotka,Tomáš. 2004. “Is Lowest-Low Fertility in Europe Explained by the Postponement of Childbearing?”Population and Development Review30(2):195–220.
Watkins,Susan Cotts. 1990.“From Local to National Communities: The Transformation of Demographic Regimes in Western Europe,1870-1960.”Population and Development Review16(2):241.
Zaidi,Batool and S. Philip Morgan. 2017. “The Second Demographic Transition Theory: A Review and Appraisal.”Annual Review of Sociology43(1):473–92.


3. 家族・教育と社会人口学

社会学には家族社会学と教育社会学いう巨大なサブフィールドがあり、そちらと一緒に勉強すると効率が良いのかもしれない。家族・結婚、ジェンダー、教育・再生産の3つのセクションに分けてみた。

家族・結婚
Cherlin, Andrew J. 2005. “American Marriage in the Early Twenty-First Century.” The Future of Children 15(2):33–55.
Hajnal, John. 1982. “Two Kinds of Preindustrial Household Formation System.” Population and Development Review 8(3):449–94.
Haskins, Ron and Isabel V. Sawhill. 2016. “The Decline of the American Family: Can Anything Be Done to Stop the Damage?” edited by L. M. Bartels. The ANNALS of the American Academy of Political and Social Science 667(1):8–34.
Kalmijn, Matthijs. 2013. “The Educational Gradient in Marriage: A Comparison of 25 European Countries.” Demography 50(4):1499–1520.
Kennedy, Sheela and Steven Ruggles. 2014. “Breaking Up Is Hard to Count: The Rise of Divorce in the United States, 1980–2010.” Demography51(2):587–98.
Ruggles, Steven. 2007. “The Decline of Intergenerational Coresidence in the United States, 1850 to 2000.” American Sociological Review 72(6):964–89.
Ruggles, Steven. 2015. “Patriarchy, Power, and Pay: The Transformation of American Families, 1800–2015.” Demography52(6):1797–1823.
Seltzer, Judith A. 2019. “Family Change and Changing Family Demography.” Demography 56(2):405–26.
Sweeney, Megan M. 2002. “Two Decades of Family Change: The Shifting Economic Foundations of Marriage.” American Sociological Review 67(1):132.
Qian, Zhenchao and Daniel T. Lichter. 2007. “Social Boundaries and Marital Assimilation: Interpreting Trends in Racial and Ethnic Intermarriage.” American Sociological Review 72(1):68–94.

ジェンダー
Cherlin (2016)Esping-Andersen (2015)Goldscheider (2015)への応答をしている。Esping-Andersen (2015)Goldscheider et al. (2015)Lesthaeghe (2010)とともに近年のPDR論文の中で最も引用を稼いでいる高インパクト論文である。

Cherlin, Andrew J. 2016. “A Happy Ending to a Half-Century of Family Change?” Population and Development Review 42(1):121–29.(なお、この論文はEspin-AndersenとGoldscheiderへの応答)
England, Paula. 2010. “The Gender Revolution: Uneven and Stalled.” Gender & Society 24(2):149–66.
Esping-Andersen, Gøsta and Francesco C. Billari. 2015. “Re-Theorizing Family Demographics.” Population and Development Review41(1):1–31.
Goldscheider, Frances, Eva Bernhardt, and Trude Lappegård. 2015. “The Gender Revolution: A Framework for Understanding Changing Family and Demographic Behavior.” Population and Development Review 41(2):207–39.
McDonald, Peter. 2000. “Gender Equity in Theories of Fertility Transition.” Population and Development Review 26(3):427–439.
Short, Susan E., Frances K. Goldscheider, and Berna M. Torr. 2006. “Less Help for Mother: The Decline in Coresidential Female Support for the Mothers of Young Children, 1880-2000.” Demography 43(4):617–29.

再生産・教育
修士時代は教育社会学を専攻するところにいたので、社会人口学的枠組みを教育社会学に本格的に取り入れるとどうなるのか考えることがあるのだが、その際にLam and Marteleto (2013)はとても参考になると思う。Reardonは世界の教育学者の中では一番人口学コミュニティで有名なのではないだろうか。Segregation研究でも有名なのだが、Whither Opportunityという結構有名な本に収められているこの(少しふわっとした)学力格差の論文(解説)が特に有名。先日ブラウンの人口学センターで講演をされた時に話す機会があり、どのディシプリンにアイデンティティを一番感じるのか聞いて見たら「教育経済学者と時々間違えられるが自分は教育社会学者」と言っていた(本人は教育学PhD)。今後スタンフォードのSEDAのデータからたくさん論文がでると思うので楽しみである。

Fomby, Paula and Andrew J. Cherlin. 2007. Family Instability and Child Well-Being. American Sociological Review 72(2):181204.
Kornrich, Sabino and Frank Furstenberg. 2013. Investing in Children: Changes in Parental Spending on Children, 19722007. Demography 50(1):123.
Lam, David and Letícia Marteleto. 2008. Stages of the Demographic Transition from a Childs Perspective: Family Size, Cohort Size, and Childrens Resources. Population and Development Review 34(2):22552.
Mare, Robert D. 2011. A Multigenerational View of Inequality. Demography 48(1):123.
McLanahan, Sara. 2004. Diverging Destinies: How Children Are Faring under the Second Demographic Transition. Demography 41(4):607627.
Reardon, Sean F. 2011. The Widening Academic Achievement Gap between the Rich and the Poor: New Evidence and Possible Explanations. Whither Opportunity 91116.

4. 健康と死亡

 この分野は日本で社会学を専攻した経験のある自分には馴染みが一番薄かったのだが、人口転換論の主力説では死亡率の低下が出生率の低下、都市化、高齢化、等々の全ての遠因であると考えられており、極めて重要。また、こちらの社会学者・人口学者・経済学者が健康を研究しまくっているもう一つの原因は有力な資金源がアメリカ国立衛生研究所(NIH)なことも背景にありそう。

健康と格差(幼少期の健康状態の影響中心)
Blackwell, Debra L., Mark D. Hayward, and Eileen M. Crimmins. 2001. “Does Childhood Health Affect Chronic Morbidity in Later Life?” Social Science & Medicine52(8):1269–84.
Eileen M. Crimmins, Mark D. Hayward, Aaron Hagedorn, Yasuhiko Saito, and Nicolas Brouard. 2009. “Change in Disability-Free Life Expectancy for Americans 70 Years Old and Older.” Demography46(3):627–46.
Elo, Irma T. 2009. “Social Class Differentials in Health and Mortality: Patterns and Explanations in Comparative Perspective.” Annual Review of Sociology35(1):553–72.
Finch, C. E. 2004. “Inflammatory Exposure and Historical Changes in Human Life-Spans.”Science305(5691):1736–39.
Jackson, M. I. 2010. “A Life Course Perspective on Child Health, Cognition and Occupational Skill Qualifications in Adulthood: Evidence from a British Cohort.” Social Forces89(1):89–116.
Hayward, Mark D. and Bridget K. Gorman. 2004. “The Long Arm of Childhood: The Influence of Early-Life Social Conditions on Men’s Mortality.” Demography41(1):87–107.
Palloni, Alberto. 2006. “Reproducing Inequalities: Luck, Wallets, and the Enduring Effects of Childhood Health.” Demography43(4):587–615.
Smith, James P. 2004. “Unraveling the SES Health Connection.” Population and Development Review.
Yang, Y. and L. C. Lee. 2009. “Sex and Race Disparities in Health: Cohort Variations in Life Course Patterns.” Social Forces87(4):2093–2124.

死亡率
Caldwell, John C. 1986. “Routes to Low Mortality in Poor Countries.” Population and Development Review12(2):171.
Cutler, David and Grant Miller. 2005. “The Role of Public Health Improvements in Health Advances: The Twentieth-Century United States.” Demography42(1):1–22.
Garenne, Michel. 2006. “Health Transitions in Sub-Saharan Africa: Overview of Mortality Trends in Children under 5 Years Old (1950-2000).” Bulletin of the World Health Organization84(6):470–78.
McKeown, Thomas and R. G. Record. 1962. “Reasons for the Decline of Mortality in England and Wales during the Nineteenth Century.” Population Studies16(2):94–122.
Preston, Samuel H. 1975. “The Changing Relation between Mortality and Level of Economic Development.” Population Studies29(2):231.
Kuhn, Randall. 2010. “Routes to Low Mortality in Poor Countries Revisited.” Population and Development Review36(4):655–92.
Lutz, Wolfgang and Endale Kebede. 2018. “Education and Health: Redrawing the Preston Curve: Education and Health.” Population and Development Review44(2):343–61.
Soares, Rodrigo R. 2005. “Mortality Reductions, Educational Attainment, and Fertility Choice.” American Economic Review95(3):580–601.
Soares, Rodrigo R. 2007. “On the Determinants of Mortality Reductions in the Developing World.” Population and Development Review33(2):247–287.

HIV/AIDS
Bongaarts, John, Thomas Buettner, Gerhard Heilig, and François Pelletier. 2008. “Has the HIV Epidemic Peaked?” Population and Development Review34(2):199–224.
Heuveline, Patrick. 2014. “Impact of the HIV Epidemic on Population and Household Structure: The Dynamics and Evidence to Date.” AIDS18(2):45–53.

5. 高齢化


この分野はGerontologyという別の学問としてかなり独立しているのだが、社会人口学の一部と考えられなくもない気がする。僕が読んだものは少なめ。Preston (1984)は会長講演で日本の現状にとてもrelevantな気がする。VaupelはScienceNatureに何本も載せているのでそちらを読んだ方がいいもしれないが、このVaupel (2004)は彼のライフストーリーが研究と絡む形で出てきて面白いのでおすすめ。


Bongaarts, John. 2006. “How Long Will We Live?” Population and Development Review605–628.
Crimmins, Eileen M., Mark D. Hayward, Aaron Hagedorn, Yasuhiko Saito, and Nicolas Brouard. 2009. “Change in Disability-Free Life Expectancy for Americans 70 Years Old and Older.” Demography46(3):627–46.
Preston, Samuel H. 1984. “Children and the Elderly: Divergent Paths for America’s Dependents.” Demography21(4):435–457.
Preston, Samuel H. and Andrew Stokes. 2012. “Sources of Population Aging in More and Less Developed Countries.” Population and Development Review38(2):221–36.
Vaupel, James W. 2004. “The Biodemography of Aging.” Population and Development Review30:48–62.

6. 国際移住


以下、かなりアメリカ中心な独断と偏見に基づいたリスト。国際移住の研究には移動そのものを研究するもの (e.g., Massey and Espinosa 1997)と移住後の同化/統合を研究するもの (e.g., Alba and Nee 1997)に大別できるが、前者の研究が多めになっている。経済学の論文は、メソッドで有名なもの(e.g., Card 1990→DID、Card 2001→Shift Share IV、Munshi 2003→雨IV)をあげておいた。なお、国内移住と国際移住は連続的に考えた方が良いかもしれないが、便宜上分けた。

Abel, Guy J. 2018. “Estimates of Global Bilateral Migration Flows by Gender between 1960 and 2015.” International Migration Review 809–52.
Alba, Richard and Victor Nee. 1997. “Rethinking Assimilation Theory for a New Era of Immigration.” The International Migration Review 31(4):826–74.
Bean, Frank D., Susan K. Brown, and James D. Bachmeier. 2015. Parents Without Papers: The Progress and Pitfalls of Mexican American Integration. Russell Sage Foundation.
Borjas, George J. 1985. “Assimilation, Changes in Cohort Quality, and the Earnings of Immigrants.” Journal of Labor Economics 3(4):463–89.
Card, David. 1990. “The Impact of the Mariel Boatlift on the Miami Labor Market.” Industrial and Labor Relations Review 43(2):245–57.
Card, David. 2001. “Immigrant Inflows, Native Outflows, and the Local Labor Market Impacts of Higher Immigration.” Journal of Labor Economics 19(1):43.
Curran, Sara R. and Estela Rivero-Fuentes. 2003. “Engendering Migrant Networks: The Case of Mexican Migration.” 40(2):19.
Czaika, Mathias, Hein de Haas, and María Villares-Varela. 2018. “The Global Evolution of Travel Visa Regimes: The Global Evolution of Travel Visa Regimes.” Population and Development Review 44(3):589–622.
Feliciano, Cynthia. 2005. “Educational Selectivity in U.S. Immigration: How Do Immigrants Compare to Those Left Behind?” Demography42(1):131–52.
Feliciano, Cynthia and Yader R. Lanuza. 2017. “An Immigrant Paradox? Contextual Attainment and Intergenerational Educational Mobility.” American Sociological Review 82(1):211–41.
Fussell, Elizabeth and Douglas S. Massey. 2004. “The Limits to Cumulative Causation: International Migration From Mexican Urban Areas.” Demography41(1):151–71.
Garip, Filiz. 2012. “Discovering Diverse Mechanisms of Migration: The Mexico-US Stream 1970-2000.” Population and Development Review38(3):393–433.
Gordon, Milton Myron. 1964. Assimilation in American Life: The Role of Race, Religion, and National Origins. Oxford University Press.
Hirschman, Charles. 2005. “Immigration and the American Century.” Demography 42(4):595–620.
Massey, Douglas S., Joaquin Arango, Graeme Hugo, Ali Kouaouci, Adela Pellegrino, and J. Edward Taylor. 1993. “Theories of International Migration: A Review and Appraisal.” Population and Development Review 19(3):431.
Massey, Douglas S. and Kristin E. Espinosa. 1997. “What’s Driving Mexico-U.S. Migration? A Theoretical, Empirical, and Policy Analysis.” American Journal of Sociology 102(4):939–99.
Massey, Douglas S., Luin Goldring, and Jorge Durand. 1994. “Continuities in Transnational Migration: An Analysis of Nineteen Mexican Communities.” American Journal of Sociology 99(6):1492–1533.
Massey, Douglas S. and Karen A. Pren. 2012. “Unintended Consequences of US Immigration Policy: Explaining the Post-1965 Surge from Latin America.” Population and Development Review38(1):1–29.
Munshi, K. 2003. “Networks in the Modern Economy: Mexican Migrants in the U. S. Labor Market.” The Quarterly Journal of Economics 118(2):549–99.
Park, Julie and Dowell Myers. 2010. “Intergenerational Mobility in the Post-1965 Immigration Era: Estimates by an Immigrant Generation Cohort Method.”Demography 47(2):369–392.
Portes, Alejandro and Min Zhou. 1993. “The New Second Generation: Segmented Assimilation and Its Variants.” The ANNALS of the American Academy of Political and Social Science530(1):74–96.
White, Michael J. and Jennifer E. Glick. 2009. Achieving Anew: How New Immigrants Do in American Schools, Jobs, and Neighborhoods. Russell Sage Foundation. 
Zhou, Min. 1997. “Segmented Assimilation: Issues, Controversies, and Recent Research on the New Second Generation.” International Migration Review31(4):975.


7. 都市化と国内移住


  この分野はブラウン社会学部の伝統的な強みなのだが、残念ながら私はかなり弱い。加えて、都市化と国内移住のための別のプレリム試験が存在するようなので、社会人口学の試験ではここが問われる可能性は低いだろうと思ってまだちゃんと勉強できずにいる。なのでこのリストは参考程度にして欲しい。人口転換論と都市化の関係を簡潔に示したDyson (2011)と最新の人口学ハンドブックのWhite and Lindstrom (2019)は参考になる気がする。

Bruch, Elizabeth E. and Robert D. Mare. 2006. “Neighborhood Choice and Neighborhood Change.” American Journal of Sociology112(3):667–709.
Dyson, Tim. 2011. “The Role of the Demographic Transition in the Process of Urbanization.” Population and Development Review37:34–54.
Fussell, Elizabeth, Narayan Sastry, and Mark VanLandingham. 2010. “Race, Socioeconomic Status, and Return Migration to New Orleans after Hurricane Katrina.” Population and Environment31(1–3):20–42.
Garip, Filiz. 2008. “Social Capital and Migration: How Do Similar Resources Lead to Divergent Outcomes?” Demography45(3):591–617.
Gray, Clark and Richard Bilsborrow. 2013. “Environmental Influences on Human Migration in Rural Ecuador.” Demography50(4):1217–41.
Korinek, Kim, Barbara Entwisle, and Aree Jampaklay. 2005. “Through Thick and Thin: Layers of Social Ties and Urban Settlement among Thai Migrants.” American Sociological Review70(5):779–800.
Liang, Zai and Zhongdong Ma. 2004. “China’s Floating Population: New Evidence from the 2000 Census.” Population and Development Review30(3):467–88.
Logan, John R., Brian J. Stults, and Reynolds Farley. 2004. “Segregation of Minorities in the Metropolis: Two Decades of Change.” Demography41(1):1–22.
Luke, Nancy. 2010. “Migrants’ Competing Commitments: Sexual Partners in Urban Africa and Remittances to the Rural Origin.” American Journal of Sociology115(5):1435–79.
Massey, Douglas S. and Nancy A. Denton. 1988. “Suburbanization and Segregation in U.S. Metropolitan Areas.” American Journal of Sociology94(3):592–626.
Quillian, Lincoln. 1999. “Migration Patterns and the Growth of High‐Poverty Neighborhoods, 1970‐‐1990.” American Journal of Sociology105(1):1–37.
Ravallion, Martin, Shaohua Chen, and Prem Sangraula. 2007. “New Evidence on the Urbanization of Global Poverty.” Population and Development Review33(4):667–701.
Sampson, Robert J. and Patrick. Sharkey. 2008. “Neighborhood Selection and the Social Reproduction of Concentrated Racial Inequality.” Demography45(1):1–29.
Stark, Oded and David E. Bloom. 1985. “The New Economics of Labor Migration.” The American Economic Review75(2):173–78.
Tolnay, Stewart E. 1998. “Educational Selection in the Migration of Southern Blacks, 1880–1990.” Social Forces77(2):487–514.
White, Michael J. and David P. Lindstrom. 2019. “15 Internal Migration.” Pp. 383–419 in Handbook of Population, edited by D. L. Poston. Cham: Springer International Publishing.

8. 人口と開発


このトピックは社会人口学というよりは経済人口学や開発学のトピックだと思う。論文中に"demographic dividend"とか出てきたらだいたいそれ系。かなり苦手意識のあるテーマだが、所属大学が開発経済学/開発社会学に強いためにこういう研究も一応読まされるのかもしれない。かなりざっくりいうと他のセクションの研究は人口学的変数(e.g., 出生、死亡、移住)を従属変数としているが、このセクションの一連の研究はマクロな人口学的な変数(特に人口増加と年齢構造)を独立変数としていると考えるとわかりやすいだろう。マルサスの『人口論』や国際移民セクションのCard(1990)のマイアミのボート難民や、Card (2001)のシフトシェアIVによる移民の労働市場への影響の研究もこのセクションにいれてもいいかもしれない。


Bloom, David and David Canning. 2008. “Global Demographic Change: Dimensions and Economic Significance.” Population and Development Review34:17–51.
Bloom, David E. and Jeffrey G. Williamson. 1998. “Demographic Transitions and Economic Miracles in Emerging Asia.” The World Bank Economic Review12(3):419–55.
Coale, Ansley J. 1978. “Population Growth and Economic Development: The Case of Mexico.” Foreign Affairs56(2):415.
Crespo Cuaresma, Jesús, Wolfgang Lutz, and Warren Sanderson. 2014. “Is the Demographic Dividend an Education Dividend?” Demography51(1):299–315.
Lee, Ronald and Andrew Mason. 2010. “Fertility, Human Capital, and Economic Growth over the Demographic Transition.” European Journal of Population26(2):159–82.
Mason, Andrew and Ronald Lee. 2006. “Reform and Support Systems for the Elderly in Developing Countries: Capturing the Second Demographic Dividend.” Genus62(2):11–35.


9. 人口学と方法論

このセクションはテーマがでかすぎるのだが、基本的な目的は自分の試験にメソッドセクションがあり、それに対応するため。人口学における因果推論についてどう考えるかとか、質的調査をどう取り入れるかを考えさせたりするような問題が多い印象なのでここら辺を読んで勉強している。勝手な都合で5つのセクションに分けた。


人口学の方法(教科書)
Preston, S., Patrick Heuveline, and Michael Guillot. 2000. “Demography: Measuring and Modeling Population Processes. 2001.” Malden, MA: Blackwell Publishers.
Rowland, Donald T. 2003. “Demographic Methods and Concepts.” OUP Catalogue.


人口学と因果推論
Bhrolcháin, Máire Ní and Tim Dyson. 2007. “On Causation in Demography: Issues and Illustrations.” Population and Development Review33(1):1–36.
Duncan, Greg J. 2008. “When to Promote, and When to Avoid, a Population Perspective.” Demography45(4):763–84.
Engelhardt, Henriette, Hans-Peter Kohler, and Alexia Prskawetz, eds. 2009. Causal Analysis in Population Studies: Concepts, Methods, Applications. Dordrecht: Springer.
Moffitt, Robert. 2003. “Causal Analysis in Population Research: An Economist’s Perspective.” Population and Development Review29(3):448–58.
Moffitt, Robert. 2005. “Remarks on the Analysis of Causal Relationships in Population Research.” Demography42(1):91–108.
Smith, Herbert L. 2003. “Some Thoughts on Causation as It Relates to Demography and Population Studies.” Population and Development Review29(3):459–69.
Winship, Christopher and Stephen L. Morgan. 1999. “The Estimation of Causal Effects from Observational Data.” Annual Review of Sociology25(1):659–706.


APCモデル

因果推論は経済学から入ってきたメソッドと言えるだろうが、APCモデル的な考え方は人口学に特有な気がするので、特別に取り上げておく。特にコホートの考え方を洗練させたこと(Ryder 1965)と、その歴史(Elder and George 2016)は重要な気がする。APCはいくつか方法が提唱されているが、自分も細かいことはわかっていない。APCモデルによる分析のイメージを掴みたい方はYang (2008)の幸福感に関するASR論文が一番良いと思う。このテーマでの最近の白熱バトルをみたい方はYang et al. (2008)とLuo (2013)とそれについたたくさんのコメントを読むと面白いと思う。APCモデルはいわゆる統計的因果推論とは縁がなさそうだと思っていたのだが、Winship and Harding (2008)は因果推論セクションのEngelhardt et al.の本にSmithが寄稿した論文(Smith 2009)で取り上げられている。Decompositionも人口学に特有なメソッド(&考え方)だと思うが、勉強不足で対応できていない。


Elder, Glen H. and Linda K. George. 2016. “Age, Cohorts, and the Life Course.” Pp. 59–85 in Handbook of the Life Course, edited by M. J. Shanahan, J. T. Mortimer, and M. Kirkpatrick Johnson. Cham: Springer International Publishing.
Luo, Liying. 2013. “Assessing Validity and Application Scope of the Intrinsic Estimator Approach to the Age-Period-Cohort Problem.” Demography 50(6):1945–67.
Ryder, Norman B. 1965. “The Cohort as a Concept in the Study of Social Change.” American Sociological Review 30(6):843–61.
Yang, Yang. 2008. “Social Inequalities in Happiness in the United States, 1972 to 2004: An Age-Period-Cohort Analysis.” American Sociological Review 73(2):204–26.
Yang, Yang and Kenneth C. Land. 2008. “Age–Period–Cohort Analysis of Repeated Cross-Section Surveys: Fixed or Random Effects?” Sociological Methods & Research 36(3):297–326.
Yang, Yang, Sam Schulhofer‐Wohl, Wenjiang J. Fu, and Kenneth C. Land. 2008. “The Intrinsic Estimator for Age‐Period‐Cohort Analysis: What It Is and How to Use It.” American Journal of Sociology 113(6):1697–1736.
Winship, Christopher and David J. Harding. 2008. “A Mechanism-Based Approach to the Identification of Age–Period–Cohort Models.” Sociological Methods & Research36(3):362–401.


人口学における質的調査&非伝統的なデータ

必読というほどではないのでこのリストには入れていないが、質的調査を用いた人口学研究は結構たくさんあり、かなり興味深い研究をたくさんうんでいると思う。基本的には社会/文化人類学と人口学の接点となり、人類学者が活躍しているが、この分野で質的な調査を行う社会学者もいる(例えばミシガンのMargaret Fryeの研究はどれもとても面白いと思う)。Anthropological Demography(人類人口学?人口人類学?)という分野も存在し、Kertzer (2019)が詳しい(今学期はKertzer教授のAnthropological Demographyのセミナーを受けていた)。ちなみにこのリスト全体に複数回登場するJohn Caldwellも人類学者である。さらに人類学者と社会人口学者がタグを組んだ一番の有名なプロジェクトしてMexican Migration Project(MMP)があげられると思う。このプロジェクトについてはMassey (1987)とMassey and Zentaro (2000)と共に、国際移民セクションのMasseyやGarlipの論文も読んで欲しい。



Cesare, Nina, Hedwig Lee, Tyler McCormick, Emma Spiro, and Emilio Zagheni. 2018. “Promises and Pitfalls of Using Digital Traces for Demographic Research.” Demography55(5):1979–99.
Coast, Ernestina. 2003. “An Evaluation of Demographers’ Use of Ethnographies.” Population Studies57(3):337–46.
Couper, Mick P. 2017. “New Developments in Survey Data Collection.” Annual Review of Sociology43(1):121–45.
Heckathorn, Douglas D. and Christopher J. Cameron. 2017. “Network Sampling: From Snowball and Multiplicity to Respondent-Driven Sampling.” Annual Review of Sociology43(1):101–19.
Kertzer, David I. 2019. “23 Anthropological Demography.” Pp. 619–41 in Handbook of Population, edited by D. L. Poston. Cham: Springer International Publishing.
Massey, Douglas S. 1987. “The Ethnosurvey in Theory and Practice.” International Migration Review 21(4):1498–1522.
Massey, Douglas S. and René Zenteno. 2000. “A Validation of the Ethnosurvey: The Case of Mexico-U.S. Migration.” International Migration Review34(3):766–93.
Randall, Sara, Ernestina Coast, Natacha Compaore, and Philippe Antoine. 2013. “The Power of the Interviewer: A Qualitative Perspective on African Survey Data Collection.” Demographic Research28:763–92.
Randall, Sara and Todd Koppenhaver. 2004. “Qualitative Data in Demography: The Sound of Silence and Other Problems.” Demographic Research11:57–94.

国勢調査
Coleman, David. 2012. “The Twilight of the Census.” Population and Development Review38:334–51. 
Hirschman, Charles, Richard Alba, and Reynolds Farley. 2000. “The Meaning and Measurement of Race in the U.S. Census: Glimpses into the Future.” Demography37(3):381.
Kukutai, Tahu, Victor Thompson, and Rachael McMillan. 2015. “Whither the Census? Continuity and Change in Census Methodologies Worldwide, 1985–2014.” Journal of Population Research32(1):3–22.
Ruggles, Steven and Susan Brower. 2003. “Measurement of Household and Family Composition in the United States, 1850–2000.” Population and Development Review 29(1):73–101.
Snipp, C. Matthew. 2003. “Racial Measurement in the American Census: Past Practices and Implications for the Future.” Annual Review of Sociology 29(1):563–88.


10.  批判的人口学


プレリム試験の準備のために先生に個別指導をしていただいたのだが、その際、「人口学自体を批判的に捉える論文も読みたい」とリクエストしたところ、先生に「そういう研究も大事だが、それは『社会人口学』ではなくて、『知識社会学』なので試験範囲ではない」と言われてしまった。ただ、その後に丁寧にメールで参照すべき文献を複数教えてくださった。Hirschman (2004)は僕のセレクションで、Raceというカテゴリーを社会人口学で使うべきではない(全てethnicityで代替するべき)というアメリカの社会人口学者としてはかなり珍しい主張をしている。本人は有名な国際移民の大御所。なおGreenhalgh(1996)によるとConcered Demographers という人口学を批判的に捉えるジャーナルが院生を中心にウィスコンシン大で作られていた時代があるらしい(Duncan等の当時の年配人口学者に批判されて後に廃刊)のだが、この初代エディターは若き日のHirschmanとのことだった。

Greenhalgh, Susan. 1996. “The Social Construction of Population Science: An Intellectual, Institutional, and Political History of Twentieth-Century Demography.” Comparative Studies in Society and History38(1):26–66.
Greenhalgh, Susan. 1997. “Methods and Meanings: Reflections on Disciplinary Difference.” Population and Development Review23(4):819.
Hirschman, Charles. 2004. “The Origins and Demise of the Concept of Race.” Population and Development Review30(3):385–415.
Hodgson, Dennis. 1991. “The Ideological Origins of the Population Association of America.” Population and Development Review17(1):1.
Szreter, Simon. 1993. “The Idea of Demographic Transition and the Study of Fertility Change: A Critical Intellectual History.” Population and Development Review19(4):659.


11. 文献リスト


ブラウンのは非公開だが、その他の大学の社会学研究科博士課程のプレリム/コンプ試験のリストを公開しているところがあるのでここに載せておく。

メリーランド大学社会学研究科博士課程の人口学試験のリスト
カリフォルニア大学アーバイン校博士課程の人口学試験のリスト


(注1)  なお、リストの作成に当たってはブラウンの試験のための必読リスト、これまでの社会人口学系のコースのシラバスや個別指導の際に渡された文献リスト、UCIrvineのリスト、私が2年間こちらで研究・勉強する中で見つけた重要文献を参考にしている。試験に対応するために私の関心がある分野の論文たくさん入れたり、関心のない分野を少なくしたりしているので、バランスの良いリストを見たい方は多分UCアーバインのリストをみるのがいいと思う(ブラウンのは非公開)し、他の大学も同じようなリストをあげているところが多い。