2020年7月1日水曜日

近況0630:ロックダウン後、初の更新

久々の更新になった。最後にブログに投稿した時にはまだ日本の方がコロナで騒いでいる頃で、シンポジウムでの研究発表のための一時帰国が無期限延期になり、残念がっていた頃だった。その後アメリカがコロナで大変なことになり、さらに黒人男性が警察に殺害された事件を巡って国が混乱し、今に至る。この間、ずっとアメリカにいて、この国の激変・激震を肌で感じることができた。プロビデンスでは、「暴動」を鎮めることを目的とした戒厳令(夜間外出禁止令)までの経験した。この3ヶ月は一生忘れないと思う。ちなみに、現在私が住むロードアイランド州はPhase 3の段階におり、レストランの店内飲食等も制限付きで可能になっている。

更新しようと思っていたのだが、コロナ中にtwitterを再開したことや、TAでのコロナ対応とプレリム試験の準備でとても忙しかったこともあり、更新が止まってしまっていた。今日までに色々としなければならないことを終わらせたので、近況を軽く記しておく。また徐々にtwitterではなく、ブログに戻ろうと思う。

1. 全てのコースワーク&全てのプレリム試験を終えた(博士課程前半戦3年間を終える)
Ph.D.課程修了に必要な24のコースワークを選択科目含めて全て履修し終わった。なお、24科目というのは米国の他の社会学Ph.D.課程と比べても多く、理論上は3年の終わりまでフルにコースワークに費やさなければならない量であるものの、私の場合、東大の修士でとったメソッド系の科目が認定されたため、7科目分は免除になり、最初から17科目をとれば良かったので少し楽だった。

以前も何度か書いたが、博士課程3年の終わりまでに2科目の専門分野の試験(プレリム試験)に合格しなければならず、2つ目の社会的不平等論(Social Inequality)の試験を先週受検した。試験はテイクホームで、月曜朝9時に4問の問題が送付され、そこから2問選んで、水曜の5時までに20-30ページの答案を作って返信しなければならない。落ちたら退学なのでプレッシャーである(1度は再受検できる)。とりあえず時間がなく、3日間休むことなくひたすら書いていた(新たな論文を読む時間的余裕はほぼない)。

勉強は試験3ヶ月くらい前から徐々にした。去年受けた社会人口学は明確なサブフィールドで、必読文献リストは人口学二大雑誌(DemographyPopulation and Development Review)に掲載された150本ほどの論文が中心となっており、勉強もしやすかった。

一方、社会学のほぼどんな研究も何らかの意味で「不平等」に関わるという意味で、社会的不平等論は明確なサブフィールドではなく、結構苦労した。他の大学では社会階層・社会移動論分野(social stratification and mobility)としてこの分野の試験をするところが多数派のようだが、ブラウンの試験は狭義の階層論より意図的に広く浅い範囲設定になっていた。

必読文献リストは120本程度で少なく、ASRAJSSocial Forcesに掲載されたものが中心だったが、本も10冊程度指定されていて、本を読むのに時間がかかった。また、過去問をみたところ、どう考えても文献リストからだけでは対応できそうになかったので、リスト外の重要な論文・本を+150本程度読んで頭に入れた(おかげでかなり勉強にはなった)。まだ結果は発表されていないが、「風の噂」によると合格したらしいのでとりあえず安心している。

コースワークとプレリム試験を無事に終わらせたことで博士課程6年間のうちの前半戦3年間をコンプリートしたことになる。素直に喜びたい。残りは後半戦2.5-3.5年間だ。

2. ティーチングアシスタント業務
コロナ前までは週に1時間、教室で学生の顔を見ながら授業をしており、ある程度うまく行き始めていた矢先(主観)、コロナでオンラインになり、とても苦労した。Zoomでは、学生のほとんどは顔が隠れるので表情が見えず、英語の非ネイティブがいかに顔の表情や身振り手振りなど非言語コミュニケーションに頼っているかということを実感させられた。もちろん、学生にビデオをつけるように頼むこともできるが、経済的な問題からオンライン環境が整っていない学生もいると考えられ、それは控えることとした。

Zoomで授業をするにあたり、iPad Proと高さ調節可能のデスクが役にたった。立っていると気合いを入れて教えられ、i Pad ProはZoomと連動させてホワイトボード代わりになる。また、i Pad Proを使えば、学生の課題を紙感覚で採点でき、そのままPDFとして返却すれば良いのでそういう意味でも役にたった。

スタンディングデスクとiPad Pro
オンライン化でもう一つ苦労したのが試験作成である。中間試験と期末試験ともに、オンラインで試験をするためのプラットフォームを作るように依頼された。試験問題を教授が作成し、それが僕に送られてきて、なんとかそれをオンラインで実行できるように僕が「工夫」する、というわけだ。ちなみに、授業は一般化線形モデル全般を扱う応用社会統計のコースなので、計算と表の解釈問題が中心である。

色々検討して、採用したのがQualtricsというオンラインサーベイ用のサービスだ。テスト用に作られたソフトではないが、様々な機能がついているので、試験用にカスタマイズしやすかった。採点も学生を行、各設問を列にする形式で出力できるので、採点は楽だった。ただ、やはりこの試験のオンライン化で4-5月のかなりの時間はもって行かれた。

嬉しかったのは、事後匿名アンケートの学生の評価がとても高く、平均が5.0点満点中5.0点だったことと、教授からTAのお礼にお菓子が送られてきたことだ(お菓子はどういうわけか日本のヨックモッククッキーだった)。次にいつ教えることになるかわからないが、教育の面もっと磨いていかなければならないと思った。

アメリカでも購入可能だと判明したヨックモッククッキー

3. ファンディング
来年9月から始まるPhD課程4年目はブラウンの人口学センターからFellowshipという形で給与をいただけることになった。Fellowshipの何が良いかというと、TAやRAをしなくてもお金が入ってくることだ。5年目と6年目は学部からFellowshipをいただけることが、入学時点の契約で決まっていた(はず)なので、修了までの残り3年間は研究に集中できることになる。人口学センターは基本的にNIHからのお金で運営しており、留学生へのFellowshipは毎年2名と限られている。結構ラッキーだったと思う。

4. 夏の予定と今後
基本的には夏は博論計画書と、博論とは別に書いている論文2本を進める予定である。また、夏の収入源として、ペンシルヴァニア州の100年ほど前の各種アドミンデータを国勢調査の個票にリンクする作業のRAをしている。72年経つと国勢調査データが公開される米国のルールは素晴らしいと思う。

2月に投稿した論文はまだ返ってきていない。デスクリジェクト、レフェリーリジェクト、RRのいずれにしろ、再分析をすることになるだろうと見込んで、機密データ室へのアクセスを申請したところ、定期的に大学でコロナの検査を受け、毎日大学の健康管理アプリに体調を入力することになり、少しめんどくさいことになっている。

庭でバーベキュー中に出現したブルージェイ
日本に一時帰国する予定をたてている。できれば7月中旬-8月上旬には帰国したい。アメリカは毎日3万人-4万人感染者が出ているので、2週間の自宅待機が日本政府から要請されることはやむを得ないと思われる。

現時点での最大の障壁は、帰国者は公共交通機関の利用が禁止(国内便乗り継ぎ含む)されているので、京都市にある実家に帰るには、アメリカから関空か伊丹への直行便を予約しなければならないことである。関西への直行便はコロナ前は毎日西海岸からあったのだが、5月以降は基本的にキャンセルになっており、数少ない特別便は5000ドルを超えている。なんとか安く日本に辿りつきたい。