2017年9月24日日曜日

米生活ログ(2)コースワーク開始とその他諸々

入学式の次の日の9月6日からコースワークが開始され、現在は3周目に終わったところである。

1. オフィスの様子


オフィスの机
自分のオフィスは社会学部の建物の一階にあり、他3人のPhD1年生とシェアしている。机はこんな感じで仕切られている。勉強・研究はなるべく仕事と割り切って、オフィスでするようにしたい(ちなみに本日は休日だが、午後から大学に来て課題を終わらせる予定)。

PhD1年目は全員このようなオフィスと机が社会学部にあてがわれるが、2年目以降はそれぞれの社会学部以外の所属先(人口学研究センターなど)にも机がもらえて、そちらに移る人も多いらしい。

2. 同期


ブラウンの社会学研究科は通常毎年約10名以下の入学者なのだが、今年は15名の入学者がいて、ここ数年では最大級のコーホートとのこと(毎年200名程度が出願、20名程度に合格を出して、約10名が来るようなのだが、今年は想像以上に蹴る人が少なかった模様。おそらく今年からFundingの条件が大幅に改善したことが関係している)。

留学生は自分を含めて7名いて、メキシコ1名、中国3名、インド1名、日本1名、ケニア1名。ただ、7名中5名が学部か修士で英米の教育機関(MIT1名、コーネル1名、LSE2名、シカゴ2名)を出ていて、純粋に非英語圏の学位持ちなのは僕ともう一人の同期(学部も修士も中国人民大)だけである。留学生の同期の英語力だが、一番英語で苦しんでる同期でもTOEFL110は持っていたので、英語でのCut offは大学公式HPに書いてあるものよりもかなり高いところでなされている気がした。

全体では学部卒と修士卒で半々だった。年齢は22から30代前半くらいまで。修士課程を経ないで学部卒で入学してきているのはハーバード、コーネル、コロンビア等のアイビーリーグ卒の学生だけだったのも印象的だった。やはり大学ブランドは大きく物を言うらしい。


3. 履修登録決定


履修登録が決定した。基本的には1つの学期には4つのコースの履修が求められる。ブラウンの社会学PhDプログラムでは1年目は秋学期も冬学期もほぼ必修で固められており、それぞれの学期に選択できるのは1つだけである。経済学PhDでは1年目は全て必修らしいので、それに比べると自由度が高い方かもしれない。ちなみにコースは以下の通り。


【必修】
SOC2040 Classical Sociological Theory(社会学の古典理論・必修)

月曜午前9-12時。名前からわかる通り、社会学理論の古典を学ぶ。課題文献が毎回膨大で、しかも古典(17c-19c末くらいまでが中心)で、かつ毎回リアクションペーパー提出の必要があるので今学期最も苦しめられるコースだと思う。とりあえず先週まではロックやホッブスやスミス、今週はひたすらマルクスを読んでいる。予習に予想される時間は毎週8時間くらいだろうか。再々来週くらいからはデュルケームのようだ。

教員は3年前にブラウンに来た若手のAssistant Professorで、経済社会学が専門。

SOC2430 Fields and Methods of Social Research(社会学研究の分野と方法・必修)

月曜午後2-5時。位置づけがイマイチわからなかったのだが、要するに社会学の各下位分野をサーベイするとともに、主要な方法論をざっくりとつかませるための演習らしい。例えばある週は「組織論と官僚制/Small NとMiddle N」、次の週は「家族と再生産/クロスセクションデータからパネルデータへの展開」みたいな感じで進んでいく。リーディングの量は圧倒的に多いが、古典と比べると、読みやすい論文(1960年代以降から現代)が多いので苦痛ではない。

教員は結構有名でシニアな歴史社会学のProfessor。かなり実証主義的なマインドセットの先生で、手法も計量に寄っていて、おそらく歴史社会学者の中では珍しいと思う。長らく前任校で政治学とのdual appointmentを経験している模様。

SOC2010 Multivariate Analysis I(多変量解析I・必修)+Stata Lab(Stata実習)

火曜午後1-4時と木曜午後6-8時。このコースは多変量解析の基本(回帰分析の諸々)と統計ソフトStataの入門的実習である。なお来学期のⅡはもう少し高度になって、パネルデータのモデリングとかもやるようだ。かなり初歩的な演習なので免除申請しようか迷ったが、これを免除申請すると他のコースを取らなければならなくなり、リーディングが大変なことになるので思いとどまった。簡単だと思っているのは自分だけではないようで、ほとんどの同期がStataにもある程度習熟しているし、授業の内容もほとんど知っているという感じだった。LSEで社会調査法の修士号を取得している同期はさすがに免除申請していたが、シカゴで社会学修士をとっている同期などは大人しくもう一度受けることにしていた。

教員はシニアで移民の人口学の分野では有名なProfessor。授業中に使うデータがアメリカの移民研究者が用いるデータばかりなのでそこはかなり勉強になる。

【選択必修】
SOC2080 Principles of Population(人口学理論・選択必修
火曜午前9-12時。人口学理論の基礎について学ぶコース。ブラウンの社会学部は伝統的に社会人口学が強みなので、今後は人口学アプローチもしっかり学んでおこうと思って履修している。人口学の分析方法の細かいことではなく、社会学における人口研究のざっくりとしたサーベイで、来学期の人口学Methodの授業で分析方法を学ぶとのこと。

教員は中堅のProfessorで、人口学が専門。アフリカの出生率の研究をメインにしている模様である。






2017年9月16日土曜日

米生活ログ(1)新居での生活と入学式まで

これから米国での生活の定期的な記録をつけてみることにした。ブログなのでパーソナルなことはあまり書けないが、覚えておくためにも良いと思っている(自分のために日記を書いてもいつも三日坊主に終わるので)。

1. エジプト学ハウスでの生活


新居
新生活は落ち着いて来た。ブラウン大学から北に歩いて15分くらいの高級住宅街の大きな一軒家の三階の一部屋を間借りしている。家をシェアしている他のメンバーは7人ほどいて、中国人のおじさん一人を除いて、全員ブラウンのPhD課程の留学生(オランダ人1名、イタリア人1名、スペイン人1名、ロシア人1名、イギリス人2名)である。そして、自分と下の階のイギリス人女性(現代文化・メディア学専攻)以外はエジプト学・アッシリア学・考古学専攻の博士課程の大学院生であった。ちなみに家は二世帯住宅のような構造になっており、大家さん夫婦も住んでいる。旦那さんの方がブラウンの古代史専門の司書さんで、息子さんがブラウンのエジプト学・アッシリア学部で博士号を取得された繋がりで、この家にはブラウン大学のエジプト学、アッシリア学、考古学の博士課程の学生が住んでいるとのことだった。リビングはエジプト学とアッシリア学関連の本で溢れており、会話もエジプトの碑文の解読とかの話題が多い。ちなみに先日庭で開催されたハウスメイトのBBQでは近所のおじいさんだと思っていたゲストがアラン・ジェームズ教授という古代エジプト研究の世界的権威らしかったので、エジプト学者にとっては素晴らしい環境だと思う(裏をとるためにwikiで調べたら6ヶ国語でエントリーがあり、国際エジプト学会の元会長だったので誇張ではないようだ)。

2. オリエンテーションとメール作法ワークショップ


到着後すぐに参加必須の留学生向けオリエンテーション(8/24-25)と米国での生活に関する参加自由のワークショップが入学式前に数日間(8/28-8/31)ほどあった。東大では考えられないほど丁寧なオリエンテーションで、2日間毎日朝ごはんと昼ごはんが提供され、全博士課程の留学生が集められて、様々な説明を受けた。色々驚いたが、夜は電話すれば大学のシャトルがキャンパスの現在地に迎えに来て、各自の家の前まで送ってくれること、大学の保険センターは無料で、留学前に日本で接種した数万円分の予防接種も全て無料だったこと(日本で接種したのを激しく後悔)、図書館の本が無制限に借りれ、延長も何回でもでき、かつ他のアイビーリーグ(ハーバード、イェール等)の図書館の本も無料で取り寄せられることなどである。ワークショップは細かいものが多く、その中でも米アカデミアにおけるメールの作法に関するワークショップは勉強になった。かなり細かい暗黙のルール(e.g. メールで名乗る時はI am...ではなく、My name is...がベター)や、アジアからの留学生がよくやる「先生を褒める挨拶」や「謙遜する表現」がマイナス効果になることなどを注意された。例えば以下のような文章は不適切で、アメリカのアカデミアでは真摯(genuine)ではないと受け取られるらしい。

不適切事例1:I appreciate your wonderful and amazing classes.
不適切事例2:You are a kind and generous professor for taking time to meet with me.
不適切事例3:I humbly request that you meet with me to discuss my questions.

米で礼儀正しくコミュニケーション取るためには、褒めたり、謙遜したりするのではなく、wouldやcouldを多用せよとのことであった。

3. 入学式とポカノケット族


ブラウン大学入学式の様子
ポカノケット族の抗議
入学式(Convocation)はブラウン大学の芝生で9/5に行われた。Van Wickle Gateという入学式と卒業式の日にしか開かない名物の門(東大でいう赤門)があるのだが、そこから全員が入場して、Main Greenというブラウン大学の中心にある芝生の広場で学部、大学院の入学生全員が一度に集められて執り行われる(東大は人数が多すぎて学部、大学院の入学者全員が一度に集まれる場所などないので新鮮だった)。

大学の外ではブラウン大学の土地の領有を主張し、大学の土地の一部を占拠中のネイティブアメリカンのポカノケット族が抗議していた。総長演説ではポカノケット族の抗議を民主主義社会における平和的なデモ行動の良い事例として取り上げていて、対応のうまさに関心するとともに、少し上から目線だとも感じた。

以上、最初の10日間ほどのダイジェスト。また数日ごとに記録をつけておきたい。