2021年8月24日火曜日

近況0824:(来年の)就活に向けての準備開始

アメリカに戻ってきて1週間が経ち、時差ボケもだいぶよくなってきた。数日前から本格的にジョブマーケットペーパー(博論の主要な3章のうち、一番売り出すペーパー)の執筆を再開したのだが、データハンドリングのミスに気づいたり、フレーミングを大幅に変更した方が良いのではないか(今のままでは指導教員に認められないのではないか?)という気がしてきて、色々と苦しんでいる。

博論執筆(2022年冬提出、2023年春修了予定)と並行して、来年秋頃から本格的に始まる就職活動の準備にも入った。結婚したこともあり、独身の頃の目標(=研究者としての就職)を追うだけでなく、その他の選択肢(=国際機関や民間企業の事務職)も並行して考えなければならないことは自覚しているが、妻の理解もあるので、来年の就活では研究者として生き残るという目標を優先して考えていく方向性。

準備の一環として、米国博士就活あるあるの、ホームページを作った(検索上位にあげるために、一度アクセスしていただけるととても嬉しい):

www.tatekihara.com

大学が院生の就活のために一括契約していて、(ブラウンに在籍している間は)無料なのはちょっと助かった。初WordPressで、慣れるまで2-3日かかったが、自分自身をジョブマーケットどうアピールするかを考え始めるきっかけになった。まだ十分に自分のことをアピールできるものになっていない気がしているので、今後、指導教員や同期のアドバイスも受けてブラッシュアップするつもり。

また、来年、自分が応募できそうなポスドクのリストアップを始めたり、仕事の条件を考えははじめている。ポスドクだと、1)任期が2年以上、2) 年俸が現在と同等かそれ以上、3) 自分自身の研究に割ける時間が週2日以上、4)ロケーションが東アジア(日本含む)、アメリカ・カナダ、5)職場内の公用語が英語か日本語、というのが今のところの理想ではある。

現在リストアップしているものだと、一番早い公募の締め切りが2022年の6月ごろになると思うので、とりあえずそれまでに博論をできるだけ完成に近い状態に持っていきたい。

2021年8月6日金曜日

近況0806:結婚、博論進捗、アクセプト×2、リジェクト×1

またブログを更新してから2ヶ月近くが経ったので更新しておく。なお、前回の投稿で一時帰国しているという報告をしたが、まだ日本に滞在中である。再来週アメリカに戻る予定。とりあえず、この半年はこれまでの29年間の人生で最高レベルの忙しさで、時間が経つのが一瞬に感じられる。

結婚

パーソナルなことなのであまり詳しくは書かないが、結婚をした。相手は遠距離で4年間ほど付き合ってきた方で、この後もしばらくは遠距離での結婚生活が続く予定である。今回の長期帰国の唯一の目的は結婚だったので、無事に結婚できてホッとしている。

博論進捗

結婚関連準備や後述のR&Rで忙殺されており、博士論文の進捗が予定より大幅に遅れている。とりあえず9月中旬のPAAの締め切りまでは博論の2章のドラフトを完成させるために頑張るつもりだ。さまざまな事情があって、来年夏までの博士論文の完成を目指している。

論文2本アクセプト

数週間前のことになるが、3rd R&RとR&Rから再投稿していた論文それぞれが無事にアクセプトされた。どちらも単著で、一つは米国、もう一つは欧州ベース(イギリス)のジャーナルに掲載予定である。3rd R&Rの方はエディターの丁寧さと、時間のかけ方と、細かさに本当に驚かされた。レビュワー三人が1年かけてアクセプトの判断をした後、そこからさらに半年以上2回にわたって細かい表現レベルの修正を要求してくるのは有難いことでもあるが、精神的に疲弊させられた。

基本的にはどちらも「トップフィールドジャーナル」とみなされるジャーナルなので、来年秋から始まるポスドクのジョブマーケットでは一定の戦いはできそう。ただ、就活戦線が厳しい中、米国の助教授(AP)のジョブマーケットに参戦できるかは微妙で、あと1年の間にソロあるいはファーストで、トップ総合ジャーナル(SF/SP以上)でR&R以上を取るか、または、もう1本トップフィールドに掲載決定するくらいしないと書類選考さえも厳しい気がしている(ただ、一応、トライだけはするつもりではある)。

なお、投稿していた3本目の論文はリジェクト(2回目)され、こちらは2021年後半戦でR&Rを目指していきたいところ。。。

とりあえず、以上が近況となる。

2021年6月9日水曜日

近況0609:博士候補、研究関連、ワクチン、一時帰国

 更新が途絶えてしまっていた。先輩から生存確認メールが来たので、近況を記しておく。


1. 博士候補資格の取得

先月、正式に博士候補の認定を受けることができ、無事に9月から博士5年目に進むことになった。また今月からは博士候補(Ph.D. Candidate)と名乗ることができるようにもなった。あとは博士論文を書くだけである。

2. 研究関連

再々投稿していた論文Aは3rd R&R(修正再々々査読)の返事がきた。Aは投稿してからもうすぐ2年になるのだが、まだまだかかりそうな予感がする。4月に新規投稿した論文Bは1回目のR&R(修正再査読)がきた(投稿してから2ヶ月ととても速かった)。3月に新規投稿した論文Cはまだ査読中のようだ。とりあえずどちらも早く査読対応を済ませたい。

Aは査読期間が長い(投稿から決定まで1.5-2.5年程度)ジャーナルX(米国系)、Bは査読が非常に速い(1年未満)ジャーナルY(欧州系)に投稿している。米国の社会学のアカデミックジョブマーケットでは一応X≧Yという評価になっているというのはよく言われることだが、実際にはそれほど大きく評価は変わらなく、欧州ではむしろY ≧Xらしい。博士後半戦やポスドクのタイムリミットがある時にはXに投稿するインセンティブがかなり低くなる気がした。XとYでクオリティが大きく違うかと言われるとそんなことはない気がしている。

3. ワクチン

前回3月の投稿から数週間後に大統領主導でワクチンの年齢制限の撤廃が早まり、4月末と5月上旬に無事にPfizerの1回目と2回目のワクチンを受けてきた。油断はできないが、安心感はとても高まった。

4.  一時帰国

帰国しなければならない事情があり、5月末から日本に一時帰国をしている。金曜日に隔離が終わり、現在は実家のある関西にいる。今回の帰国に当たっては日本側の対応が厳しくなっており、日本政府指定様式*の陰性証明書を用意することになった。

*厳密にいうと指定様式でなくてもOKらしいのだが、指定様式ではないと航空会社の自主判断で搭乗を拒否される可能性が高いということを航空会社に強く言われたので指定様式を用意した。実際に政府指定様式を持たない者の搭乗拒否日本国籍保有者の日本からの強制送還(!!)という事例も先月は確認されている。これから緩和されるかもしれない。

日本政府の指定する検査方法をとる病院がなかなか見つからず、困った挙句にダメ元でロードアイランド州の保健局にメールをしたところ、素晴らしく柔軟な対応で、私(と一緒に帰国したブラウンの日本人の友人)のために日本政府の求める形式の検査を実施し、陰性証明書類も無料で作成していただけた。日本政府指定様式は日本らしく印章(ハンコ)も求めてくるのだが、ロードアイランド保健局の医者同席で公証人手続きをして、日本政府指定様式に公証人の印を押していただくことで解決した。担当してくださったロードアイランド州の役人さんは日本に興味があるらしく、ハンコ等の日本の文化も好きなようだったのが、救いだった。「なぜ日本はワクチン接種が少ないのに、あんなに感染者数が少ないのか?」という質問を電話越しで聞かれたのだが、うまい答えを見つけられなかった。

2021年3月29日月曜日

近況0329:研究の進捗、ワクチン、スキー旅行等

1. 研究の進捗

久しぶりに近況をupdateしておく。まずは博論だが、来週の火曜日に博論プロポーザルディフェンスがある。とりあえず、博論審査コミティーの先生方4名には現在の方向性で承認が得れたので、博士候補資格の取得は発表でよほどの問題が発覚しない限り、大きな問題ないはずである。

博論自体の進捗だが、第1章の執筆が完了し、現在は第3章で使うデータセットの作成中である。説明すると面倒くさいのだが、第3章は4つのデータをかなりめんどくさい方法で組み合わせる必要があり、今日も家にこもってコードを書いていた。まだまだかかりそうだし、データを作ってもうまくいくかは不明なので忍耐が必要である。

難しいかもしれないが、目標としては2022年5月までに全ての章を書き上げたい。修了予定は2023年5月だが、2022年6月からは就活(米国、カナダ、香港、台湾、日本等のポスドクと民間企業で応募できるところはどこでも応募すると思う。)にあてる予定なので、博論に時間が割けなくなるだろうからだ。あとは、就職してしまうと研究ができなくなる(特にアカデミアの外で就職した場合)と思われるので、修了までに博論関係の論文は全て投稿しておきたいと考えている。

その他、諸々の投稿論文や校正等、出さなければならないものは大体出した。唯一の心残りはSocial Science History Associationの年次大会に論文が間に合わなくて出せなかったことである。9月締め切りのPAA2022の年次大会でのアクセプトを目指すという目標に切り替える。

2. コロナワクチン

アメリカでは1日に200万人というすごいスピードでワクチン接種が進んでおり、他の州の博士課程に留学している日本人の友人からはワクチンを既に打ったという話もちらほら聞く。ただ、州によってワクチン接種のスピードや優先度の付け方が大きく違い、ロードアイランド州に住む私はまだワクチンを予約できない。

既にワクチンを打てている友人が住む州は、大学教員(博士課程の院生もこのカテゴリに入る)を優先接種しているらしい。残念なことに(見方を変えれば公平とも言えるのだが)、ロードアイランド州は比較的厳格に1)年齢階級と2)既往症の有無で接種の優先順位が決められており、1)16歳-29歳、2)既往症無しの私は、優先順位がもっとも低いグループにいる。あと1ヶ月は待つ必要がありそうである。

3. 機械式時計

前回の投稿で、機械式時計について調べることハマっていると書いたが、とうとう初の機械式時計を購入した。予定していたラバーバンドでダイヤルがマットブラウンのSEIKOのSPB147ではなく、ダイヤルがグレーのSPB143(日本での型番SBDC101)にした。この時計はアメリカではヒット中で、ファンが作成したくさんのレビュー動画が数多く上がっているのだが、その中で特にこれに影響された。今のところは支払った金額(1200ドル)以上の価値は十分にあったと感じている。

SPB143の中のムーブメントはSEIKOの6R35で、70時間のパワーリザーブ、秒針停止機能、日付表示機能を持つ比較的新しいムーブメントである。SEIKOが保証している精度は一日-15秒から+25秒で、自分の所持しているものに限っていえば1日に+8-10秒時間がずれる。30秒以上ずれ始めると気になるので、4日に1回時間をあわせるという手間がかかるのだが、時間を合わせたり、時計のずれを毎日調べることが研究の気晴らしになってとても良い。あと、ダイバーズ時計の回転ベゼルは日常生活の中でとても役に立つ。回し心地もとても良く、時計とのインターラクションがストレスの発散になる。

SPB143

30代に入ったら(30までもう1年を切っている!!)、より高精度のムーブメントを搭載した時計が欲しいので、パーマネントの仕事にありつけるように頑張ろうと思う。

4. スキー旅行

コロナの制限も緩和され、ルームメイトやその同僚とスキー小旅行に行ってきた。まだ筋肉痛に苦しんでいるが、良いストレス解消になった。残念なのは今週から暖かくなったので、もう11月までいけないことである。

4年ぶりだったので、とりあえず中級スロープまでにしておいた。


2021年2月20日土曜日

近況0220:博論の進捗、2nd R&R、改稿&改稿、機械式時計

二日前、博論計画書のドラフトを委員会に送付し終わって一息ついている。3時就寝、8時起きが続いていたのだが、少しずつ戻していっている。


1. 博論の進捗

博論は19世紀末から20世紀前半にアメリカへ移住した日本人移民の社会移動に関するものになる。データは80年ほど前の強制収容所のアドミンデータ、1960年代の日系人のサーベイデータ、米国国勢調査1920, 1930, 1940のフルサンプルを10年ごとに出生地と名前と年齢でリンクしてパネルデータにしたものを主に用いる予定である。

来週の金曜日に第一回コミティーミーティングがあり、コミティーの4人全員からフィードバックをいただく予定。今の進捗だと、今年の4-5月に計画書が承認され、そこから博論をひたすら執筆し、来年の夏終わり(5年目終わり)には初稿を完成させ、1年間かけて修正・審査の予定だ。ちょうどここから2年後の2023年2月から5月の博士課程修了(=博士号取得)を目指している。修了後どうするかは完全未定だが、最近は博士号取った後のことはあまり考えないようにしている。


2. 2nd R&R

昨夏にR&R(修正再査読)をもらって、10月に再投稿していた論文が、無事に(?)2nd R&R(修正再々査読)になり、対応を進めている。投稿してから既に1年を超えていて進捗がカタツムリレベルだが、第三ステージ(*)に進めたのは嬉しい。前回の1st R&Rではレビュワーの修正要求とともにエディターから本質的な修正要求がたくさんあり、レスポンスレターが論文本文とあまり変わらない長さになった。

(*)ちなみに一部のジャーナルでは第三ステージの査読をせずに、第二ステージまでで結論を出すところもあるが、私が出しているところは基本的には第三ステージまではあって、稀に第四ステージ、第五ステージもあるらしい。

今回の2nd R&Rでは本文81箇所にエディターによるコメント(主に表現に関するもの)が入っており、かなり丁寧に修正すべきところを指摘された。正直、ここまで細かくするものかと驚いた。エディターはかなり有名な教授で、お忙しい方だとは思うので、大変感謝ではある。ただ、前回とは違い、修正は基本的には表現や言い回しや主張の強弱に関してで、レスポンスレターもシングルスペース1-2枚程度で終わりそうである。

なお、最近同じジャーナルに論文をアクセプトされたシニアの教授でも2nd R&Rでは数十箇所本文に細かい修正コメントつけられたらしいので、自分が院生だから丁寧に対応してくれているというわけではなさそうだ。第三ステージの査読も4ヶ月から半年かかるようなので、なるべく早く再投稿したい。


3. 改稿&改稿

二つの論文(一つは共著、一つは単著)を結構長いこと投稿準備しているが、修正点がどんどん見つかって、なかなかリビジョンが終わらない。できるだけ、両者とも3月中には投稿してしまえるようにしたい。共著の方は自分は責任著者ではなく、ジャーナル選定は責任著者の先生にお任せしているのだが、単著の方はDにまずは出してみようと思っている。デスクリジェクト( =査読にさえ回されない)される可能性も高いが、まだ博士課程修了予定まで2年はあるので、諦めずにトライするつもりだ。

ちなみに総合トップジャーナルになると自分の指導教員や、副指導教員の70代の大御所の先生でも一年に数回リジェクトされて悔しがっているレベルになる。院生中に責任著者として掲載できる人は超エリート大学(東海岸のHPや西海岸のB)に限られている印象だったが、去年は同期がD、先輩がASRとSFにアクセプトされることに成功していて、現所属先の院生でも載せれる人は載せれるんだとわかった。ただ、査読に 最低1年(長くて3年)はかかることを考えると、今年の年末くらいから投稿する分にはジャーナル選択に関して現実的な判断をしていかなければならないと思う。


4. 学会・学会発表

PAA(アメリカ人口学会)で論文が2本、口頭報告でアクセプトされたので、その準備もする必要がある。残念ながらZoomである。主催者によると「Zoom fatigueを減らすため」に報告時間が12分に短縮されたらしく(笑)、内容をかなり凝縮させる必要がありそうである。

SSHA(Social Science History Association)という歴史人口学、(計量系の)歴史社会学、経済史学、歴史学の研究者で構成される学会に加入しようと考えており、とりあえず11月の大会にエントリーを検討中だ。これは3月中旬までにアブスト提出で結構急ぐ必要がある。


5. 機械式時計

最近、趣味で「機械式時計について調べること」にハマっている(機械式時計を持っているわけではない)。特に時計業界の歴史、機械式時計の仕組み、職人養成制度について素人なりに調べて楽しんでいる。最近は、アメリカの時計愛好家コミュニティや、愛好家の方が作る解説youtube動画(例えばこのフォロワー22万人のyoutubeシリーズ)を就寝前に1.75倍最速で観ている。ちなみに日本語だと「腕時計のある人生」の動画がなかなか面白い。仕事としての研究と違い、出典の正確さとか、意義とかを一切気にせずに、楽しいから楽しめるのが良い。

もともと時計は好きなのだが、現在所持している一番高い時計でも4万円のMondaineのクオーツの時計(スイス鉄道のやつ)で、機械式時計は持っていない。ただ、現在、カジュアルで使える機械式時計を選定中である。もちろん、院生としての給料では予算も限られていて、今のところは1965年のSEIKO の初代ダイバーズウォッチ(通称62MAS)の復刻版(海外型番はSPB147、日本型番だとSBDC105)の購入を検討しているところだ。値段は1000ドルと、SEIKOのダイバーズウォッチの中では中価格帯(日本だともうちょっと高いが、アメリカの方がさまざまな事情で安い)。この復刻版は英語圏のSEIKO愛好家コミュニティで62MAS reissueや62MAS reinterpretationシリーズと呼ばれるものの一つで、とても人気があり、値段が3倍-4倍するTudorのBlackbayとクオリティを比較する動画まで複数出てきている(例えばこれとかこれ)。

2021年2月9日火曜日

博論計画書

また2ヶ月ほど更新していなかった。簡単に近況報告をしておく。

今学期も引き続き全学生・院生・教職員に対しての週2回のコロナの検査が続いている。学長からのメールによると教員の10%以上が既にワクチンを摂取済みらしいが、比較的若いPhD院生がワクチンを摂取できるようになるのはどんなに早くても4月末らしい。ただ、今週からジムやプールなども予約制で再開されている。

最近はひたすら4月上旬にディフェンス予定の博論計画書(Dissertation Proposal)を書いていて、精神的にとてもしんどい。博論計画書ディフェンスは、ブラウンの社会学部では4年目の終わり(=私の場合2017年秋入学なので今年の4月になる)にあり、社会学部の全教員20名程度+院生の前で博論構想を発表し、コメントをいただく、というパブリックな会である。もちろん、今年は全てオンラインで行われる。

「ディフェンス」といっても、この日に落ちたり受かったりするわけではなく、この日にもらったコメントを基に計画書を修正し、8月1日までに提出し、博論委員全員が合意すると晴れて博士候補(PhD Candidate)になれるという制度である。博士候補になると、TAやRA等の義務が全て免除になる(=研究だけしていれば給料がもらえる)というメリットが存在する。委員間の合意がとれない場合もたまにあるらしく、その場合無給になるのではないかと心配していたのだが、12月までに書き直すという前提で、給料は支給されるらしい。少し安心ではある。

「博論委員」は日本の大学院でいう主査と副査にあたるが、日本でいうニュアンスとは少し違い、博士課程後半戦3年間は指導教員が4人いるみたいな状態になる。博論提出まで、委員から常時助言をいただくという建前になっている。また就職の時の推薦状もかなり重要らしい。私の場合、中堅の先生2人(うち1人は指導教員)、シニアの先生2人にお願いした。中堅の先生2人は社会階層論・教育社会学寄りで、シニアの先生2人は移民研究・歴史人口学よりの人たちである。

なお、わかってはいたのだが、比較的審査が厳しい方が一名おられ、その対応が大変ではある。ただ、厳しい=細かく計画書をみてくれている、ということなので、有難いことではある。

色々書きたいことはあるのだが、今日はここまでにしておく。

2020年12月20日日曜日

今年面白かった社会学論文10選(2020)

昨年も 2019年に出会った論文で面白かったものの10選を載せたが、今年も独断と偏見で選んだ2020年版の10選を紹介することにした。2020年に出版されたものではなく、あくまで私が今年読んだものの中で、「面白い!」と思った論文である。なお、10選の中には最後に一冊だけ本が入っている。紹介の順番に特に大きな意味はない。

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Legewie, J. (2018). Living on the edge: neighborhood boundaries and the spatial dynamics of violent crime. Demography, 55(5), 1957-1977.

地理空間における社会的境界 (e.g., 黒人が多く住んでいる近隣と白人が多く住んでいる近隣の境)は物理的境界(e.g. 幹線道路)や政治的境界(e.g., 州境)とは異なることがしばしばある。エスノグラファーたちの数々の調査では社会的境界が存在し、社会的境界線上での生活が社会的境界の中での生活と比較して特殊な可能性を示唆してきた。にも関わらず、これまでの社会人口学研究では近隣(neighborhood)を独立した個々のユニットとみなし、近隣と近隣との社会的境界の特殊性について考えることは稀だった。

社会的境界を定義(測定)することは可能だろうか?また社会的境界上では争いごとや犯罪が起きやすいのだろうか?論文ではアメリカの大都市における人種・エスニシティごとの住み分け現象を事例に、地理空間上での人種・エスニシティ間の社会的境界の測定をし、社会的境界上では犯罪が起きやすいことを実証する。具体的にはAreal Wombingという地理空間分析の手法を用いて、シカゴの約4万の国勢調査細分区(Census block)と隣接細分区との人種・エスニシティ比率の差から、細分区レベルでの社会的境界値(Boundary likelihood value)を算出する。細分区レベルでの2011年の犯罪発生件数データを従属変数とし、社会的境界値を独立変数として、負の二項回帰モデルを推定する。分析結果として、社会的境界値は犯罪件数に正に関連することがわかった。またこの犯罪との正の関連は黒人と白人の社会的境界で最も強く、黒人とヒスパニックの社会的境界では弱く、白人とヒスパニックの社会的境界では確認されなかった。

この論文はイントロと先行研究レビューが素晴らしくうまく書けていて、惚れてしまった。ちょっと私の紹介の仕方では面白さが伝わらなかったと思うので、是非上記リンクをクリックして読んでいただきたい(論文はオープンアクセス)。

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Skopek, J., & Passaretta, G. Forthcoming. Socioeconomic Inequality in Children’s Achievement from Infancy to Adolescence: The Case of Germany. Social Forces.

親の社会経済的地位に基づく学力格差(SES学力格差)はいつ生じるのであろうか?この論文では、ドイツの教育パネルデータを組み合わせて擬似コホートを作成することで、生後6ヶ月から15歳までのSES学力格差の推移を推定している。もちろん、全ての発達段階で同じテストをしても意味はないので、例えば生後6ヶ月のwaveでは感覚運動機能の発達を測定し、小学校以降のwaveではより高度な学力テストをし、各waveでスコアを標準化する方法をとっている(論文のほとんどが方法論に割かれている)。分析結果として、SES学力格差は幼稚園に入学する5歳までの間に開き、幼稚園に入学してからは安定して推移することがわかった。著者らは幼稚園を含む学校が、学力格差拡大を抑制しているという解釈をしている。

米国と英国を中心にSESに基づく学力格差の推移に関してはたくさん論文が出ている。私も一本米国のデータを使った研究を投稿中(セカンドラウンドの査読中)である。ただ、私の論文も含め、ほとんどの研究が幼稚園入学以降(5歳以降)の学力格差の推移の研究となっており、幼稚園入学以前とをカバーする研究は少ない。この論文の一押しポイントは幼稚園入学以前も射程に入れて、学校教育開始以前に学力格差が開くことを明らかにしたことだ。

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近年は「環境難民」などの用語がセンセーショナルにメディアで語られるが、地球温暖化と移住はどうリンクしているのだろうか?著者らはタイ北東部のナンロン地域における51の集落の住民の移住パターンを、同地域の気候データや土地利用のデータと紐付け、気候変動、土地利用、移住、帰還移住の関係に関するAgent Based Modelをたててシミュレーションする。分析の結果として、気候変動による干魃、洪水等の環境変化は移住(out-migration)自体には大きな影響を与えないが、移住後の帰還移住(return-migration)を低減させることで人口減(depopulation)につながることを明らかにした。

この論文は移住を研究することを主目的とした調査としては最大規模のナンロンプロジェクト(Nang Rong Project)の研究代表チームの論文である。ナンロンプロジェクトは1984年から2000年まで続いたナンロン地域の51の集落の5万人を超える住民の悉皆調査・縦断調査で、家族ネットワークに関する情報も集められ、住民が移住した場合、移住先でのフォローアップ調査も行われている。さらには、衛生写真を利用した農地利用の地理情報、気候に関する情報とも結び付けられているので、気候変動と移住に関する様々な研究が可能となっている。

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Catron, P. (2016). Made in America? Immigrant occupational mobility in the first half of the twentieth century. American Journal of Sociology, 122(2), 325-378.

20世紀初頭に米国に移住した南欧・東欧系移民のサクセスストーリーを説明するにあたっては、当時拡大しつつあった製造業の内部労働市場での上昇が暗黙の前提とされてきた。論文では、この暗黙の前提を検証するため、20世紀前半に東欧・南欧系の移民を多く雇っていた3つの大・中小の製造業企業(その一つはあのフォード社)で20世紀前半に雇用されていた従業員の企業内で職歴データが分析され、東欧・南欧系の移民の内部労働市場での上昇は実はほとんどなかったことが示されている。

20世紀の前半に米国に移住した低スキルの移民の「同化」には製造業の拡大という時代効果(period effect)が強く想定されてきており、逆に現代の低スキルの移民の「同化」の失敗を説明する際には20世紀前半との産業構造の違いが挙げられることが多いが、これらのストーリー自体が正しくない可能性を検討するべき時にきている。

この論文で一番気に入ったポイントは既存の移民統合の理論(特に「新しい同化理論」と「分節化された同化理論」)の暗黙の前提を明らかにし、その前提が成り立たないことをデータを用いて批判していることである。また、たった3つの製造業系の企業のケーススタディーから、このような理論的インプリケーションを引き出すのは、とても深い先行研究の理解が必要だと思った。

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Connor, D. S. (2019). The Cream of the Crop? Geography, Networks, and Irish Migrant Selection in the Age of Mass Migration. The Journal of Economic History, 79(1), 139–175. 

19世紀半ばから20世紀初頭にかけてアイルランドから米国へは400万人ほどが移住したとされ、この間にアイルランドの人口は大幅に減少した。米国へ渡ったアイルランド人はどういう人たちだったのか?この疑問に答えるため、著者は1901年のアイルランド国勢調査を、1910年の米国国勢調査および1911年のアイルランド国勢調査にフルネームと年齢を使ってリンクし、アイルランドから米国への移住における社会経済的セレクションを分析した。分析結果として、1901年の時点で父職農業、農業生産性の低い地域に居住、父が非識字者、アメリカに既に移住がそれまでに多かった地域に居住していた者がアメリカに移住しやすいことを示してある。

この論文のすごいところはやはりアイルランド国勢調査と米国国勢調査をリンクして国をまたぐパネルデータを構築したことだろう。10年ほど前から、技術的な革新(OCR、機械学習的マッチング手法の導入 etc.)で、デジタル化されておらず、かつスペルや年齢で誤差が多い国勢調査、税金の記録、船の乗客名簿をデジタル化し、名前や年齢の情報を使ってリンクして、パネルデータを構築する試みが急速に増加していて、この論文も数あるそういう論文の一つではある。とはいうのものの、国をまたぐデータの構築は珍しく、おそらくデータ構築だけで死ぬほどの努力が必要だったものと想像される。

なお、この論文の著者は地理学者(地理学PhD)で、ジャーナルは経済学である。なので社会学の論文ではないが、著者の方は社会学系のジャーナルにも出していて、とても尊敬しているので、ここで紹介することにした。

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Lu, Y., Liang, Z., & Chunyu, M. D. (2013). Emigration from China in Comparative Perspective. Social Forces, 92(2), 631–658. 

中華人民共和国福建省は歴史的に大量の移民を世界各地に送り出している地域として知られる。本論文は1970年代後半から2000年代前半の福建省からの国際移住における移民のセレクションを調査・分析している。特筆するべきは欧州への移住が主流の福建省明渓県と、米国への移住が主流の福建省福州市という同じ福建省の二つの異なる地域からの移住を比較していることである。分析結果として、移住に関する理論が指摘するように、欧州と米国どちらへの移住でも家族や村の移住ネットワークが重要なこと、政治的資源(村や家族での地方共産党幹部との繋がり)へのアクセスが正に効くことが示されている。また、移住への制約が小さい明渓県からヨーロッパへの移住では学歴によるセレクションが皆無なのに対して、移住への制約が大きい福建省福州市から米国への移住では逆U字型の学歴選抜(中学歴が最も移住しやすく、低学歴者と高学歴者の移住確率は低いこと)があることが示された。

この研究の貢献は移民送り出し地域を世帯レベルでサンプリングし、移住した家族について聞きとるMexican Migration Project調査(ここでは詳しく説明しないが、移民研究界隈では最も有名な、メキシコからの移民に関する調査)と同じ設計の調査を中国で実施したことにある。また米国への移住だけでなく、欧州への移住に関しても調査していることも大きな貢献だろう。いつか日本への移住も対象にいれた中国での調査を誰か企画してほしい。
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感染症の発生源からの人口移動は、感染症の拡大をうまく予測できるか?論文では、コロナウイルス発生地とされる武漢を2019年の12月から2020年の2月までに経由して、他省・県へ移動した人口を携帯電話の位置情報データから計算し、その後の移動先の省・県での感染者数を予測できるかを検討した。分析結果として「とても綺麗に予測できました」という結論になっている。

「面白い!」というわけではなかったものの、2020年はコロナ抜きには語ることはできないので、10選の中に入れてみた。移民研究の端くれとしての理解だと、通常、このようなタイムセンシティブな研究では、データが揃っていないため、データが整備されている数年前の同年同時期の人口移動(例:1年前の同月の武漢から他地域への人口移動)の情報が現在にも当てはまると仮定して、感染症の拡散を予測するモデルを作るのが普通であろう。この研究がすごいのは、ほとんどリアルタイムで、しかも個人レベルの情報を用いて、人口移動とコロナウイルスの拡散をモデリングしていることだと思う。もちろん、中国のデータということで、プライバシー関連は少し気になる。

なお、自然科学系のNatureに載っているということで、「社会学なの?」と思われる方もいるかもしれない。この論文チームの責任者(いわゆるラストオーサー)は社会ネットワーク論のニコラ・クリスタキス氏で、社会学PhDを持ち、イェールの社会学部で教えていることから、社会学論文とカウントすることにした。クリスタキス氏は社会学者としての顔とともに、医師でもあり、かつ公衆衛生学でも有名であるスーパーマンである。

なお、社会科学系のジャーナルは生命科学系に比べると査読が長い(1−2年ほど)ので、まだコロナ関連論文は社会学の主要ジャーナル(AJS、ASR、Demography、SF)にはほとんど出ていない。来年、再来年はコロナに関する論文がとてつもなく増える予想をしている。

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Berger, T., & Engzell, P. (2019). American geography of opportunity reveals European origins. Proceedings of the National Academy of Sciences, 116(13), 6045-6050.

米国の世代間社会移動の開放性(親から子へ社会的地位が継承される度合い)には地域差がある。その地域差はどこに由来するのだろうか?著者らが出した答えはヨーロッパである。

欧州から米国へは19世紀から20世紀初頭にかけて大量に移民が渡った。著者らは722のCommuting Zone(CZ)レベルのデータを用いて、歴史上の移民の出身国別の米国内の定住先と、現在の米国内の社会移動の地域差には関連があることを明らかにした。例えば、北欧やドイツ出身の移民が多く定住した中西部のCZは社会移動の開放性が高く、イタリア系が多く定住した東海岸のCZでは開放性が低いという具合だ。なお、この関連は人種エスニシティに関係なく成り立つため、「人」に起因するのではなく、移民が地域ごとに作った「社会制度」の違いによると著者らは主張している。

この論文の面白いところは「巷」(=非学術的な文脈)では受容されているが、学術的な文脈では検証が難しくなかなか認められづらいストーリーをうまく実証したことにあると思う。論文中でもイントロでジャーナリスト兼作家のコリン・ウッダードが提唱する、現代アメリカを11の下位文化に地域区分する議論が引用されている。

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Gerhards, J., & Hans, S. (2009). From Hasan to Herbert: Name-giving patterns of immigrant parents between acculturation and ethnic maintenance. American Journal of Sociology, 114(4), 1102-1128.

移民が受け入れ国で自分の子供(移民二世)につける名前にはどういうパターンがあるのだろうか?著者らは移民の名前のドイツ化の指標(後述)を作り、南西欧(イタリア、スペイン、ポルトガル)、旧ユーゴスラビア、トルコ出身でドイツに居住する移民が、子供につける名前がドイツ社会への統合とどう関連しているかを分析した。分析結果としてはドイツ社会に統合(ドイツ人とのネットワークや社会経済的地位達成)されていればいるほど、ドイツ化された名前をつけるという結果になっている。

10年以上前の研究というのもあって、2020年の今から見返すと細かい分析の方法論では少し残念な点があるものの、Stanley Liebersonが1990年代に勢力的にやっていたファーストネームの研究を、移民統合研究の文脈に拡張したことが大きな貢献である。なお、私が一番感銘を受けたのは膨大な名前に関する情報を(1)ドイツでしか通用しない名前、(2)ドイツと出身国言語両方で通用する名前、(3)出身国でしか通用しない名前に分類した努力にある。論文中の注記によると固有名詞学(onomatology)という学問があるらしく、その研究者との共同作業らしい。

私も、戦前生まれの日系人の数万人のファーストネームに関する論文を書こうとしていて、(1)アメリカでしか通用しない名前(例: Theodore)、(2)アメリカでも日本でも通用する名前(George/貞治/丈治)、(3)日本でしか通用しない名前(例:Mitsuo)というような形で名前を3分類にしたいのだが、この作業をシステマチックにやる方法を思いつかずにいる。もしどなたか良い方法思いつく方いたら連絡をいただけると飛んで喜ぶ。

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Mohr, J. W., Bail, C. A., Frye, M., Lena, J. C., Lizardo, O., McDonnell, T. E., Mische, A., Tavory, I., & Wherry, F. F. (2020). Measuring Culture. Columbia University Press.

これは論文ではなくて本。文化の測定に関して、社会人口学者、文化社会学者、政治社会学者、社会ネットワーク研究者が共同で書いた本である。共著なのに全体にとてもまとまりがあって、おそらくこれまで読んだ社会学の本の中でも「面白さ」トップ20には入ると思う。イントロの章での社会学における文化の測定の歴史があるが、とてもよくまとまったレビューである。

ASR編集長のリザルド氏や、私がとても尊敬している若手人口学者のフライ氏(去年のこの記事で論文を紹介した人)なども執筆陣に入っている。なお、「測定」という言葉が使われていることで、日本でいうところの「計量」社会学の人のための本なのか?と聞かれたことがある。「計量」の人にも、「質」の人にも同じくらい有益だと思うし、執筆陣にもどちらもいる。特に文化社会学の領域は、計算機社会科学の台頭もあり、「計量」と「質」という区分は意味がないように思う。著者らもイントロでそういうことを述べている。

もっと紹介を書いてもいいのだが、私は文化社会学はど素人で、あまり変なことを書いてこの本の価値を損ねたくないので、これ以上は書かないでおく。

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以上である。見返すと、博論の先行研究となる移民研究(migration studies)関連の論文が多い。指導教員の先生にはもっと広く先行研究を読むように言われ、特に社会的不平等(social inequality)の先行研究(literature)のフレームワークを博論に取り込むように言われるのだが、どうしても移民研究の先行研究に引っ張られる気がする。元々の自分の関心なのだと思う。