2019年9月9日月曜日

今学期のコースワーク(博士課程3年目前半)

他の大学では2年目までのところもあるらしいのだが、私の所属する学部はカリキュラム設計上、博士の3年目の春までコースワークの単位を一定の範囲で取り続ける必要がある。今学期は以下のラインアップになることがほぼ確定した。全て大学院レベルのセミナー形式。

SOC 2460 Sociology Paper Writing Seminar/論文執筆セミナー [通年]

博士課程3年生向けに開講されている論文執筆のコース。修論を相互にフィードバックしながら改稿して、ジャーナル投稿までするのが目標とのこと。論文の書き方とともに、査読の仕方、査読対応の仕方等も学ぶらしい。担当教員はEmily Rauscher准教授。昨年度から院生の要望に応じて設置されたコース。

SOC 2320 Migration/移住

人口学トラックのオプションとして2年に1回程度の頻度で開講されるコース。このコースでは国内移住(Internal Migration)と国際移住(International Migration)の主要先行研究をテーマ別にサーベイする。履修者は社会学と人類学の院生7人で、ブラウン社会学らしく?、アメリカへの移民を研究している社会学徒は私だけだった。このコースは課題がかなり自由に設計できるので、博論プロポーザルの先行研究レビューに使うつもり。

ちなみに、人口学の基本原則として、任意の地域における人口変動の要因は出生(+)、死亡(−)、移住(+ or −)の3つしかあり得ないので、移住は人口研究のコアの一つである。しかしながら、出生や死亡と違って生物学的プロセスと切り離されており、「何が移住とみなされるか?」という定義問題から始まり、出生、死亡研究にはない難しさもある。担当教員はMichael White教授。

SOC 2610 Spatial Thinking in Social Science/社会科学における地理空間的思考法

このコースは研究テーマに地理空間的視点を持ち込むことを目的としてデザインされたコース。セグリゲーション、近隣効果、空間的拡散等、テーマに分けて社会学、人口学、経済学、政治学のレビューをする。なお、これはメソッドのコースではなく、それは別にある。担当教員はJohn Logan教授。ちなみに、エスニックエンクレーブやセグリゲーションの研究ではかなり有名な大御所で、Google総引用件数は3万近い。

ブラウンには人口学センターを筆頭に社会学部と強い繋がりをもつ研究センターがいくつかあり、その一つにSpatial Structures in Social Sciences(S4)という組織がある。これは20年近く前に作られた組織で、この組織を中心に社会学&人口学に地理空間分析を取り入れる研究がなされ、地理空間分析のメソッドコースも本当にたくさん開講されている。毎年新学期になる度に思うのだが、特にメソッドのコースは本家の社会学部からは履修者が少なく勿体無い気がするので、地理空間分析を勉強したい日本の学部生/院生はブラウン社会学部に出願するのは考えてみるのをオススメする。

SOC 2960S Statistical Methods for Hierarchical and Panel Data/マルチレベル・パネルデータ分析法

タイトル通りマルチレベル・パネルデータ分析法を学ぶ。特にランダム効果モデルとその発展系(e.g., 成長曲線モデル)に重きがおかれるようだ。教科書はHox (2010)。最初の授業のイントロで「今学期は色々学ぶけど、実践ではクラスタロバスト標準誤差を事後的に計算するだけで事足りることが多い」と担当教員が言っていた。確かに大抵のRQではランダム効果自体に関心がない場合が多く、その通りだと思った。担当教員はMargot Jackson准教授。

フルブライトでvisitingしている院生の方をあわせると、履修者9人のうち4人が中国人民大出身者でとても興味深い。社会科学に強い大学らしく、日本でいう一橋大だと思われる。

ちなみにこのコースは社会学部の計量メソッドシークエンスの一貫。地理空間分析の諸々のメソッドコースと、来年から新設される計算社会科学のコースを除くと、常設されている計量メソッドのコースは多変量解析Ⅰ・Ⅱ(必修)、人口学的分析法、因果推論、マルチレベル/パネルデータ分析法、イベントヒストリー分析法の6つである。私の場合、イベントヒストリー分析のコースを履修すると社会学部のメソッドシークエンスは全てとり終わる。



0 件のコメント:

コメントを投稿