帰国してから1ヶ月が経ってしまったが、以下、テゼのことを記しておく。少し細かいかもしれないが、テゼ共同体の紹介と共に、実際にテゼに滞在されることを検討している方に役立つかもしれない情報も記した。なお、以下の記事中の写真は私がとったものとフランス人の親友がとったものを許可を受けて使用している。
- テゼ共同体とは?
テゼの鐘(写真:Vincent Perraud氏提供) |
テゼの特徴は若者を受け入れ、若者が祈りの生活を共にする場所を提供していることにある。テゼには年中無休で世界中から若者が集まっており、私が行った7月末-8月初旬には3000名程度の若者が来ていた。ほとんどの若者は1-2週間の滞在であるが、何週間でもいることが可能である。出身国はフランス、ドイツ、イギリス、オランダ、スペイン、イタリア、ポルトガル、ポーランドを中心に、全世界に及んでいた。私が訪問した間に中国・韓国人の方は何人か見かけたが、日本人は私一人のようであった。なお、若者中心であるが、すべての年代層の方がテゼに年中参加しており、ご高齢の方専用のプログラム等の用意もあるようである。ホームページをみると特定の年齢層のための一週間等が時折設定されていることも記してある。
- テゼでの一週間
私は日程上、金曜の夜に到着し、水曜の早朝に帰国の途についたのであるが、テゼの一週間は月曜から始まり、日曜の聖餐で終わる。なので、日程等の制約がなければ日曜夜に到着し、次の日曜午後に去ることが推奨されている。<平日(月-金)>
08:15 朝の祈り→ 朝食
10:00 聖書メッセージ(byブラザー)& 静まりの時
12.20 昼の祈り→ 昼食
15:15 グループミーティング
17:00 お茶&お菓子
17:30 ワークショップ(選択制)
19:00 夕食
20:30 夕の祈り(金曜には夕の祈りの後、「十字架の祈り」がある)
<土曜>
15:15 ワークショップ(選択制)
17:00 お茶&お菓子
17:30 ワークショップ(選択制)
20:30 夕の祈り(復活を記念するキャンドルサービス有)
<日曜>
8:45 朝食
10:00 聖体拝領(聖餐)
13:00 昼食
19:00 夕食
20:30 夕の祈り
- テゼでの言語
テゼでは英語ができれば基本的に問題なく生活できる。ただしフランス語がわかるとテゼで起こっていることをよりよく理解できるようになると思われる。私は英語(と日本語)を使え、ドイツ語が少しばかり理解できるという状態だったのだが、親友のフランス人と一緒に行動しており、彼が説明してくれたおかげで英語やドイツ語だけではわからない情報も手に入れることができた。特に私が参加した日の聖餐はほとんどの時間がフランス語であった。
後述する朝の聖書メッセージの資料は欧州諸国の言語、アラビア語、韓国語、中国語にはすべて翻訳されていた。残念ながら日本語はなかった(日本から行かれる方が少ないのだろう)。
- 聖体拝領(聖餐)
日曜日や平日の祈りの中での聖体拝領(聖餐)で出されるパンとぶどう酒はカトリックの司祭による早朝のミサで聖別されている。ただし、テゼ共同体はカトリックでもプロテスタントでもない、ということになっている。通常、カトリックではカトリックでない者が聖体を拝領することを認めていないが、テゼにおいてはプロテスタントや正教会の者もカトリックと同じパンとぶどう酒にあずかることが事実上可能となっている。なお、テゼを創始したブラザー・ロジェはカルヴァン派の牧師家庭に生まれ、生涯カトリックの洗礼を受けることはなかったようであるが、教皇ヨハネ・パウロ2世はブラザー・ロジェのテゼでの働きを高く評価していたようである。
「和解の教会」の中の様子 (聖体拝領や祈りの時には満員になる) |
なお、オンラインで調べるだけでも、カトリックではない者がカトリックの聖体を拝領していることにカトリックとプロテスタント双方の保守勢力から様々な批判があるようである。テゼにおけるプロテスタントの聖体拝領がどのようにカトリック教会で公式説明されているのかはわからない。どなたかご存知であれば教えていただきたい。
私はエキュメニズムをこの地上では実現不可能であるにも関わらず口にされる綺麗事だと考えていた。だが、皆が同じパンと同じ杯に同じ時間にあずかるというクリスチャンにとって最も重要で象徴的な出来事をテゼ共同体が実現させていることを目の当たりにし、私のこれまでの見方が悲観的すぎたのかもしれないと反省させられた。(この象徴的な出来事を実現することがこれまでどんなに難しいことだったかは教会の歴史を少し勉強すればすぐにわかることである。)
- テゼの祈りと賛美
テゼで貸し出される讃美歌集 (テゼ内のお土産屋さんで購入可能) |
ここでの言語は英語が中心というわけではなく、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、オランダ語等が同じ程度の割合で歌われている。歌詞はアルファベットなので自分の知らない言語でも発音することはでき、配布されるテゼ専用の讃美歌集に翻訳されているので意味は知ることができる。以下のYoutube動画はD.ボンヘッファー作詞の”Aber du weißt den Weg für mich”というテゼの祈り(賛美)の一つだが、動画の途中に祈りの様子が映っている。
- 聖書メッセージ
テゼは瞑想的に祈る(歌う)ことが中心で、聖書を学ぶことがないという批判を目にすることがあるが、平日は毎朝10時から世代別に集まって聖書のメッセージをブラザーから聴く。メッセージは毎朝30分程度で短かったが、かなりよく準備されたものだと感じた。世代は15-24歳、25-34歳、35歳以上のような形で区切られている。ブラザーは意外とユーモラスで、話も興味深く聞けた。
- 静まりの時
静まりのための公園(中心に池がある) |
テゼでは静まりの時が重視されており、朝の聖書メッセージが終わった後は誰とも話さずにメッセージ時にブラザーから出された質問について1時間-2時間ほど考えるようにすすめられる。声を出してはいけない公園があり、多くの人が静まりの時間はその公園で過ごしている。公園の中心部には池がありその周りを歩きながら考えを巡らせている人もいる。もちろん、周囲の芝生で座ったり寝そべったりすることも可能。
テゼに何週間も滞在している人はオプションとして「A week in silence」(静まりの1週間)を選ぶことができ、このオプションを選ぶとほとんどの時間を誰とも話さずに1週間を過ごすことになるようである。
- スモールグループミーティング
興味深いのは、スモールグループは金曜(グループ活動最終日)まで自分の身分を明かしてはいけないというルールであった。これはよく考えられたルールで、牧師や神父等の聖職者、または医者や大学教授等の社会的権威のある人が、グループディスカッションの主導権を握ってしまうことのないようにするためだと思われる。私は水曜朝に帰国しなければならなかったので、火曜夜にグループメンバーにこっそり職業等を教えてもらったが、一番聖書に詳しそうであったイギリス人は聖公会の司祭となるべくケンブリッジ大学神学部在学中の神学生であった。他にはドイツの小学校の宗教音楽の先生、ドイツの社会福祉士、オランダのカウンセラー等々であった。
- テゼでの食事
テゼの夕食 |
- ワークショップ(選択制)
英国のEU離脱に関するワークショップ (非EU圏の参加者は私だけだった) |
ワークショップは選択制だが、様々なものが用意されている。私が土曜日に参加をしたのはブラザー・ロジェに関する映画をみるワークショップであり、月曜日に参加をしたのが多文化共生をゲームで考えるワークショップ、火曜日に参加したのがイギリスのEU離脱に関するワークショップであった。
ワークショップをオーガナイズしているのはテゼに1週間以上いる滞在者の方だったり、ブラザーだったりと様々である。
ちなみにEU離脱ワークショップは、たまたまテゼ訪問中であった聖公会のイギリス人司祭の方が、世論調査等のデータを交えて話してくれた(司祭の方はもともと社会疫学の研究者だったらしくかなりきちんとした統計分析だった)が、残念ながら期待していたEU離脱と聖公会の立場(あるいはキリスト者)との関連は少なかった。容易く想像できることではあるが、テゼに来ていた人のほとんどはイギリスのEU離脱に失望していた。
- テゼに来る人々の宗教的バックグラウンド
(写真:Vincent Perraud氏提供) |
プロテスタントの内訳としては、やはり各国の「合同教会」(日本でいうと「日本基督教団」)のような「メインライン」の教会に所属している人が多いように思われたが、私の参加していたスモールグループにはペンテコステ派の人もいた。私自身は19世紀に聖公会から分離独立したかなり保守的なプロテスタントの一グループの中で育ったのだが、アジア地区担当のブラザーと個人面談をした際にそのことを話すとかなり喜んでくれた(逆に言うと僕のようなバックグラウンドの人は少数派なのだと思われる)。
なお、クリスチャンではないけれども、スピリチャルなものを求めてやってきた人にも出会ったので、全員がクリスチャンというわけではなさそうであった。
- テゼまでの交通
行きはベルリンからであったため、Berlin→(列車)→Frankfurt→(TGV)→Chalon-sur-Saône→(列車)→Mâcon Ville→(バス)→Taizeという経路であった。帰りはTaize→(バス)→Mâcon Ville→(列車)→Lyon→(列車)→Genevaという経路で、ジュネーブから飛行機に乗った。ヨーロッパの主要な街からの交通手段はホームページのここに細かく記載されている。
Taizé – Communautéのバス停 (写真:Vincent Perraud氏提供) |
- テゼの予約
テゼでの宿泊の予約はネットを通して行うが、当日突然テゼ共同体に現れて「泊まりたい」と言っても大丈夫なのではないかと思われる(もちろん予約されることを強くおすすめする)。宿泊費は寄付制であり、出身国と年齢によって基準が違う。日本から来る人は欧州諸国(30歳以下)と同じ1泊7.50-10.50ユーロ(食事含)を求められた。テゼに4週間以上いる予定の場合、最初の1週間は寄付を求められるが、それ以降はテゼの活動を手伝いながら滞在することで寄付を求められなくなるということである。実際に半年-1年の間、テゼで生活している若者にも出会った。人生にブランクができた場合、フランスまでの航空券さえ購入できれば、テゼで1年を過ごすのもいいかもしれない。
- テゼでの宿泊
基本的には寝袋とテントを持参することが推奨されている。ただ、私のように手ぶらでいってもドミトリー(ログハウス)に入ることができる。一つのドミトリーは10名程度収容でき、簡素なベッドが用意されている。寝袋を持ってきていない場合、ブランケットをかりることができる。シャワー等はトイレに簡素なものがついている。綺麗好きな人の場合、最低限自分の寝袋を持参することをお勧めする(ブランケットは綺麗とは言えない)。
- 日用品・お土産の買い物
テゼスタイルの十字架のネックレス (多くの人が着けている) |
なお、ポストカードやテゼのブラザーたちが作った陶器などのお土産を買う場所も教会の隣にある。人気があるのはテゼを象徴するテゼスタイルの十字架のネックレスである。値段も5ユーロ前後でリーズナブル。
- その他(Wifi等)
WifiはOyak(上記)で30分カードを購入し、指定されたスペース(小屋)で24時間使用することができる。共用パソコンが2台あり、そちらも30分カードを購入して使用することが可能である。宿泊するドミトリーには鍵等がないので、パソコン等は貴重品を預ける施設に預けておく方が良いかもしれない。
なお、Taizeは電波は良いようなので、フランスで使用可能なSIMカードを購入されたりしていた場合、問題なく使うことができると推測される。
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