*本記事はベルリン社会科学サマースクールに関する二回目の記事で、一回目は前回の投稿(ベルリン社会科学サマースクール(1))を読んでいただきたい。
ベルリン社会科学研究センター(通称:WZB) |
四つの分科会は"External Governance, Europeanization, and Global Norms"、"Social Struggle and Globalization"、"Citizenship, Migration and Social Inequalities"、"Democracy at the Crossroads"である。分科会名をみてのとおり、「社会科学」といってもいわゆる「政治学」と「社会学」専攻の者が興味をもつテーマであり、それ以外(「経済学」)はほとんどいなかった。
私は"Citizenship, Migration and Social Inequalities"(シティズンシップ、移民、社会格差)分科会へ参加した。
以下、一週間の概要と感想を記す。
7月25日(月)午前:講義(Dr. Susanne Veit ドイツ社会科学研究センター)
午後:院生発表
7月26日(火)午前:講義(Dr. Jan Fuhse フンボルト大学)
午後:院生発表
7月27日(水)午前:講義(Dr. Ruth Diltmann ドイツ社会科学研究センター)
午後:院生発表
7月28日(木)午前:講義(Dr. Marc Helbling バンベルク大学)
午後:院生発表(⇦私の発表はここであった)
夕方:閉会式&パーティー
講義の中で印象に残ったのは月曜日の講師の研究チームの発表であった。ドイツにおけるトルコ系に対する就職差別とその差別の細かいプロセスを調べるために、学歴・職歴・スキルは類似させ、フォトショップで加工した顔と名前によってエスニシティ(トルコ系)を判別できるようにした偽の履歴書を様々な企業に送って、トルコ系がシグナリングされることが採用面接まで呼ばれる可能性を低減させるかの調査研究をしていた。この手の研究はこれまでにも幾つか読んだが、はるかに規模が大きかった。7000通の偽CVを産業や企業規模を変えて送付し、推薦書の内容もいろいろなものを用意し、コントロールグループとして他のエスニックグループも加えていた。
日本でこのような企業を騙す研究は倫理上許されないと思われ、もちろんドイツでも微妙なラインらしいが(裁判も想定して弁護士をつけて研究しているらしい)、偽の「卒業証書」「就業証明書」までつくりあげ、写真も同じ顔をトルコ系・ドイツ系・アジア系の肌、目の色にPhotoshopで加工する徹底ぶりには研究者の執念を感じた。
私の研究発表は最終日の28日(木)であった。詳細は省くが(いつか論文を出せた時に研究の詳細を書きたい)、計量社会学的な手法を用いて移民の帰化の問題を扱った研究を2つ発表した(それぞれ修論の章になる予定)。日本では、同じテーマを計量社会学的な手法で研究している人がほぼいない中、周りに興味をもってもらうのに苦しんでいた(いる)のだが、ドイツでは逆に同じような研究をしている人が多く、コメントもかなりたくさんいただけた。
このサマースクールがフンボルト大学の院生とポスドクの方々で運営されていたことは印象的だった。日本で学生がこの規模の予算の自主運営プログラムをはしらせている大学があるのかはわからないが(サマースクールには米国や欧州各国から2週間にわたって有名な先生を数名呼んでおり、参加学生には航空券代が支給される)、日本でもいつかこのようなサマースクールがあったら面白いだろう。
私は発表資料を他の人への「譲渡自由」という形で関心のある人に配ったのだが、私と同一のテーマを研究しているドイツの大学の先生にまで資料が渡り、後日メールがあり、やりとりが始まっている。ヨーロッパでのコネ作りという意味でも大変有益な二週間であった。
最後に、このサマースクールは数年前から毎年行われているらしいが、日本からの参加は私がはじめてだったらしく、今回は唯一の東アジアの大学からの参加であった。来年以降、修士からポスドクの方まで、是非申し込みを検討されることをお勧めしたい。
→一週目についてはこちら
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