2020年2月17日月曜日

TAのトレーニング(ファカルティ・ディベロップメント)

日本でも大学院生のファカルティディベロップメントが流行りであるが、アメリカの大学(注1)でもTAのスキルアップを目的として様々なプログラムが組まれている。私が所属するブラウン大学社会学部博士課程の大学院生が最低限しなければならないのは、Ph.D.取得までに大学が運営する1学期分のトレーニングプログラムに参加して、Teaching Certificate Ⅰ を取得することである。なお、ブラウンでは、この資格は社会学部を含む多くの学部で「必修」(但し、罰則なし)扱いとなっている。

ブラウンのTeaching Certificate Ⅰ を修了するためには、(1)4回のオンライン講義の受講、(2)4回の課題の提出、(3)4回のセミナー(1回1.5時間程度)への参加、(4)TAとして授業をしているところを1回「授業参観」されてフィードバックを受ける必要がある。オンライン講義、課題、セミナーは毎回テーマが決まっており、テーマに合わせた論文等も読まされて、割と気合いを入れてプログラムが練られていた。特に印象に残ったことの一つが、大学における教育実践事例の報告サイトから、他分野(e.g., 物理学)の教育実践で、自らの分野(e.g., 社会学)の授業に取り入れたいアクティビティを選んで、授業への組み込み方をチームで検討するというものであった。上記サイトはアイデアの宝庫なので、大学関係者の方は参考になるアクティビティを探してみると良いと思う。

私は、先学期に(1)オンライン講義、(2)課題、(3)セミナー参加は既に終わらせてあり、残りの(4)TAとして講義しているところを「授業参観」されてフィードバックを受ける、というのも最近終わらせた。今学期は大学院生の多変量解析のコースのTAを担当しており、担当教授の3時間の授業とは別に、TAとして週1.5時間程度の授業(主に実習)を担当しているので、その私の1.5時間の授業を「授業参観」され、フィードバックを受けた。フィードバックはとても丁寧で、具体的には以下のプロセスで行われた。

2週間前:シラバスを送付(TAでも1人で毎週セクション等を担当する場合はシラバスを独自に作成している)
1週間前:事前面談(フィードバックが欲しい点を事前に申告できる)
当日: 授業参観される(かなりじっくり「参観」され、希望があればビデオ撮影もされる)
翌日: 良かった点 &悪かった点のフィードバック

授業翌日のフィードバックの際には図1と図2のようなメモ(エスノグラファーのフィールドノーツのようだった)を基に、次のTA講義での改善点を指摘された。特に有り難かったのは質問に答えるのが一部の学生に限定されていたことを指摘された上で、全員の発言を促すための具体的アドバイス(案)を複数いただけたことだった。

図1:クラスの座席配置と発言回数に関するフィードバック

図2:フィードバックフォーム
(何時何分に私が何をして、その行動のどこが良かったかor悪かったかが記されている)

丁寧なフィードバックはとても役にたった。特に人前で話すことに苦手意識を持って生きてきたので、今回のフィードバックをきちんと生かしてさらにより上手く教えることができるようにしたい。

なお、TAにフィードバックをする仕事をしているのは特別なトレーニングを受けた大学院生であった(これをすることで大学から給料を支給されているらしい)。私の担当の方は某外国文学の専攻のD6の方で、博士号取得後は大学のファカルティディベロップメントに関わる仕事につくことを検討しているらしかった。私もさらにトレーニングを受けてこの仕事をするのも良いかもしれないと思った。

(注1)ほとんどの大学で何らかの形でのTAトレーニングは行われているであろうが、大学によって事情は大きく異なる。ここに書かれているのはあくまでブラウン大学というアメリカの一大学の事例で、過度な一般化はしないで欲しい。

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