昨日(米国では本日)で29歳になりました。メールやFBでメッセージを下さった方々ありがとうございます。最近はブログを書くのが億劫になって更新していませんでしたが、読んで下さっている方もいるようで久々に更新したいと思います。ちなみに、夏は1.5ヶ月ほど日本に帰国していましたが、現在は再びアメリカに戻ってきています。以下、(1)大学のコロナ対応、(2)研究、(3)ウィズコロナライフについて書きます。
(1)ブラウン大のコロナ対応
コロナ検査
コロナは大丈夫か?という質問をよくいただきます。日本のように落ち着いてはおらず、国レベルでみると毎日4万人ほどの感染者が出ていますが、僕が住んでいるプロビデンスは比較的落ち着いております。ちなみに、私の所属するブラウン大学では、普段大学に来る全教員・職員・大学院生・学部生に対して、毎日アプリで大学に健康を報告し、さらには最低週2回コロナの検査をすることを義務付けており、3日に1度大学の体育館でコロナ検査を受けています。綿棒で鼻の粘膜をとる簡易なもので2分程度で終わり、検査キャパはかなりあるので、並んだりする必要もありません。検査会場入場から退出までだいたい5分くらいです。
以下の写真は私のiPhoneのスクショですが、このような感じで検査結果は12時間後くらいに出て、今後半年ほどは検査結果をスタンプのように集める日々が続きそうです。ちなみに検査していないと大学から個別メールがきて、場合によっては処分されます。大学のコロナ対策ホームページでは日々の検査結果がアップデートされており、情報収集と情報公開のあり方には関心させられます。ちなみにホームページによると、大学では8月24日から無症状者延べ51851人の検査を行い、陽性は26件(陽性率は0.4%)、ここ1週間に限ると延べ9363人の検査を行い、陽性は9件(陽性率は0.1%)だそうです。
博士課程の新規募集一時停止
仕方ないことなのですが、大学のコロナ対応で悲しかったのは、ブラウンの人文・社会科学系の大多数の博士課程プログラムの来年9月に入学する新入生の募集が全面的に停止され、社会学部でも募集が停止されたことです(恒久的なものではなく、再来年再開予定)。なお、これはブラウンだけでなく、全米の博士課程で同じような対応をとるところがチラホラみられます(社会学だと、プリンストン、ペンシルヴァニア、コロンビア大など)。
アメリカの人文・社会科学系の博士課程は基本的に大学院が学費と給料を支給するのですが、コロナで大学の財政が圧迫されていることと、博論の研究(特にフィールドワークをしている人に多大な影響が出ています)がコロナで中断してしまった院生に博士課程7年目への延長を認める動きがあり、「既に在学している院生にお金を回す」という大学経営側の判断のようです。理工系に関しては、教授や学部が外部資金を獲得し、その外部資金で博士課程の院生に給料を払っているところが多いこともあり、人文・社会科学系ほどには影響は出ていないようです。
なお、体系的に調べたわけではないですが、一時募集停止措置をとっているのはお金に余裕があるはずの私立大学に多い気がします(特にアイビーリーグ)。私の予想ですが、有力私立大学の人文・社会科学系は博士課程の院生の労働力への依存度が低く(例えば、私は6年間で1年だけTAをすれば良い契約で、中には1度もTAをせずに修了する人もいます)、自分の研究だけしながらフェローシップの形で給料を支給される人が多いことに起因すると思います。逆にいうと、大学側からすると、人文・社会科学系の院生は金銭面では最も負担が大きい存在で、不況時には切りたくなる存在なのかもしれません。
(2)研究
日系アメリカ人の社会移動:多分、博論
博論プロポーザルディフェンスの日程が決まり、2021年4月6日(火)EST12:00になりました。これにパスすると、晴れて博士候補(Ph.D. Candidate)になれ、博士5年目への進級(?)が認められます。まだ正式なOKは出ていないのですが、博論は19世紀末から20世紀初頭に米国に移住した日本人(aka 日系アメリカ人)と世代内&世代間社会移動について3ペーパーを組み合わせる形で書きたいと思っています。このテーマに関する研究は歴史学では多いのですが、社会人口学的な視点からのものは少なく、また学部生の頃から関心のあったことなので今のところは博論のテーマとしてしっくりきています。
メインのデータは強制収容所に収容された日系人全員の行政データと1960年代に行われた日系アメリカ人のサーベイで、特に前者を氏名と年齢と性別と居住地などを使って1910、1920、1930、1940年の米国国勢調査個票にリンクし、数万から十万人のパネルデータを構築しようとしています。いわゆる"Historical Census Linking"で、この夏にRAとしてやっていたことなので理論上はできるはずなのですが、当時の日系人の国勢調査上のスペリングはかなりいい加減で、これをアルファベット文字列の順番の近さ、発音した時の音声などでマッチングして、(1)どれだけのマッチング率が得られるか、(2)マッチングはどれだけ正確か?ということを丁寧に検証する作業をする必要があります。これがあまりにも残念な結果であれば、博論のメインデータ(=ジョブマーケットペーパー)には使えないことになります。
ここにさらっと書くと簡単に思えるのですが、Census Linkingは少しだけ高度なプログラミングや機械学習の知識が要求され、「伝統的な」社会人口学のトレーニングを受けていた身としては少し辛いです。現在以下のR&Rに対応中で、まだ手をつけられていません。。
なお、博論に入れるかはわからないですが、日本のデータとも組み合わせる形で、20世紀初頭にアメリカに渡った日本人の選抜性(セレクティビティ)に関しても論文を書いています。これは先日プリンストン大を中心にした若手の某研究会で発表させていただいたのですが、来年1月末までには人口学系の雑誌に投稿したいと考えています。
現代米国移民の社会移動研究:R&R対応中
現代米国の移民二世の子どもの間の学力格差をライフコース論と社会移動の観点から扱っている論文(昨年提出した修士論文)、トップジャーナル2誌(ASRとD)にリジェクトされた後、某トップフィールドジャーナルに投稿していました。投稿から半年ほど経って忘れかけていた頃、査読結果が届き、R&R(=査読者の要求にあわせて修正したら掲載できるかもしれない、というお知らせ)がもらえました。このジャーナルの掲載率は10%程度なのですが、おそらくR&Rがもらえた時点でこれを50%前後にできているという認識です。このジャーナルはフィールドジャーナルにしては査読が丁寧なことで特に有名で、エディターコメントとレビューワーコメントあわせると3600単語あり、コメントを25に細分化して対応しています。コメントの質も高く、特にエディターと副エディターには感心しました。エディターはどういうモチベーションでやるのか気になりますが、他の人の研究のための無償労働にとても感謝してます。
一応、再分析と原稿の修正は終わり、査読者へのレスポンスレターを書いています。レスポンスレターだけでシングルスペース13ページを越えていて、新しい別の論文を書いている感覚を覚えます。もちろん、どんなに頑張っても、掲載される保証はないわけで、小手先な対策ではなく(もちろん小手先の対応もしますが)、落とされて別のところに投稿しても掲載されるようにペーパーをよりよくするつもりで頑張っています。ただ、少しこの研究には「飽き」がきていて、早く手放したいです。
なお、おそらく次に来る連絡も、リジェクトか、2nd R&R(=2回目のR&Rが貰えると、掲載確率は80%くらいに上がる印象です)だと思います。ここによく載せる教員によるとR&Rが連続3回以上あることもあるらしく、今の目標では2021年12月までのアクセプトを目指したいと思います。
現代日本の移民の研究
こちらは細々と続けていて、もし将来日本に(研究者として)戻れることになったらメインの研究になるのではないかと考えています。現在は主に3年前からメンバーとして関わっている「くらしと仕事に関する外国籍調査」を基にいくつかの論文を書いています。今のところは移民研究の中でも古典的(だけど最近はあまりされていないテーマ)の(1)永住意図、(2)帰化希望に関する論文と、共著で(3)職業達成に関する論文を書いています。ほとんど英語で書いているのですが、永住意図に関しては日本語で書いており、来年中には世に出てくれるのではないかと期待しています。
(3)ウィズコロナライフ
今年のルームメイトは全員ブラウンの院生で、中国(比較文学)、韓国(経済学)、インド(計算機科学)、ペルー(生物学)、日本(社会学)とアジアからの留学生中心になっています。コロナで家にいる時間は長いので、ルームメイトは大事です。比較的仲がよく、テニスをしに行ったり、日曜の午後は毎週3時間の散歩をしてコロナ太りを抑制しようとしていて、大変ながらも、楽しいです。あと、時々一緒に天体観測をしています。
ある日撮影した月 |
散歩中に出会ったカミツキガメ |
大学のマスコット(ブラウンベアー) |
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