2018年4月1日日曜日

3月&春休み終了!

イースター休日で今日は勉強・研究はせずにゆっくりしているので近郊報告。3月26日(月)から3月30日(金)が大学公式の春休みで、毎週授業が木曜終わりな自分は3月23日(金)から本日4月1日(日)までが春休みだった。なお、この春休みは春学期(1月初旬-5月上旬)の途中にあるもので、学期の終わりを意味しない。明日から5月上旬までこれから1ヶ月半再びコースワークとの戦いが続く。

1. 3月の山場

春休み前の一週間は結構忙しかった。以下が特に大きなイベント3つ。

(1)多変量解析の中間テスト
中間テストの範囲は線形確率モデル、プロビットモデル、ロジットモデルだった。シラバスでの進度的にはもっと進んでいてもいいはずなのだが、スノーストームで休講があったりしたのでこの範囲。予想していたよりもテスト問題は簡単で、問題文の読み間違いとか計算ミスがなければ95-100%の正答率なんじゃないかと思う。クラスの平均点も75-80%くらいではないだろうか。

(2)現代社会学理論の発表
前回も書いたように今学期の現代社会学理論のコースは主にグラムシ、フーコー、ブルデュー、ハーバーマスの四人(+黒人フェミニズムのパトリシア・コリンズを特別回で扱う)の著作複数を一学期かけてざっくり読むのだが、四人と関係がある理論家の著作も扱う。グラムシ回はラナジット・グーハ(Ranajit Guha)のDominance without Hegemony、フーコー回はパルタ・チャタジー(Partha Chatterjee)のThe Nation and Its Fragmentsで、ブルデュー回はムスタファ・エミールバイヤー(Mustafa Emirbayer)とマシュー・デスモンド(Matthew Desmond)共著のThe Racial Orderで、僕はこのThe Racial Orderを基に二人のクラスメイトとレジュメを作成して1時間ほどのクラスディスカッションをリードしなければならなかった。本の内容はブルデューの階級理論をアメリカの人種問題へ適用し、アメリカの人種研究(race scholarship)への理論的貢献を目指すものだった。2015年に書かれた本で、今後どのような評価がされていくのかはわからないが、アメリカ社会学に関心がある方は是非手に取られることをお勧めする(ただし、経験的な研究ではなく、理論研究であり、難解な箇所もあるのでちょっとした覚悟がいる)。ちなみに、僕の(未熟な)理解だと著者のエミールバイヤー(@ウィスコンシン)はジェフリー・アレクサンダー(@イェール)等と並ぶアメリカの文化社会学者/社会理論家の一人で、マシュー・デスモンドは彼の教え子で若手のスーパースター(30代後半で既にプリンストンの正教授。理論というよりは都市社会学者/エスノグラファーとして特に有名で質的調査法でも何本かデスモンドの論文を読まされている)。

(3)質的調査法の中間レポート
期末レポートの研究計画を書け、というものだった。半日で終わらせてしまい、かなりネガティブな評価が返ってくるのではないかと思っていたが、"A-"で済んだ。とりあえず、なんとか期末を乗り切りたいと思う。

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2. 春休み


春休みは以下のことをした。

(1)土日(1泊2日)のボストン旅行
モネの『ラ・ジャポネーズ』@ボストン美術館
(中学の歴史資料集を思い出した)
ボストンはプロビデンスから片道12.5ドルの電車(MBTA)で1時間で行ける(Amtrakならもっと早いが高い)。土曜日はボストン美術館を見学し、特別研究員としてハーバードに1年研究滞在(プレドク)している友人と、同じくハーバードで1年研究滞在(ポスドク)している大学院の先輩二人と牛角でご飯を食べ、日曜日はボストン日本語キリスト教会を訪問し、同じ奨学金をもらってハーバードで材料科学のPhDをやっている友人と日本の居酒屋でご飯を食べた(日曜日)。ハーバード大学周辺をじっくり歩くのは初めてだったが、日本食の多さに驚いた(ラーメン、焼肉、寿司などなど)。大学院の協定で、アイビーリーグ間の国内交換留学制度があるみたいなのだが、日本食を求めて1年研究滞在したくなってしまった。


(3)木金(1泊2日)NYC旅行
ルノアールの『ピアノに寄る少女たち』@メトロ
ポリタン
(美術の教養がない自分でも知っていた絵)
木曜の早朝にバスでニューヨークに行った。目的は現在NYCのコロンビア大留学中の友人宅を訪問することと、前回の訪問時に連邦政府の閉鎖と被って行けなかったエリス島の移民博物館に行くことだったが、今回は島へのフェリーのチケットの売り切れでまたしても行けなかった。ただその代わり今学期の人口学方法論の先生にオフィスアワーでお勧めされていたマンハッタン南東のテネメント博物館(Tenement Museum)というマンハッタンへの移民の歴史博物館を訪問した。ここは大正解で、この博物館については後日別記事として書くことにする。また、この他にNYC観光定番のメトロポリタン美術館にも行った。


(2)事務作業・課題を終わらせる(月曜日-水曜日、土曜日)
州税・連邦税返還の申請や溜まっていた課題を終わらせるためにひたすら研究室で作業をしていた。チームメンバーとして入れていただいている日本の研究プロジェクトの調査のデータクリーニングの依頼がちょうど春休みと被ったのは幸いだった。州税・連邦税の作業はかなりの時間を要したが、経済学研究科にいる日本人の先輩方と一緒に教えてもらいながらできたおかげでスムーズにできたように思う。

2018年2月24日土曜日

米社会学PhD出願の記録(8):出願に参考になるリンク集

1.はじめに

コロンビア大学の図書館
(先月、コロンビア大教育大学院に
留学している友人のK.Iくんを訪ねて
NYCを訪れた時の写真)
米社会学PhDコース(=博士課程)出願に参考になるリンクを以下にまとめておく。なお私の記事の参照にあたっての説明やdisclaimerはこの投稿シリーズの最初の記事を参考にしていただきたい。アメリカの主要な社会学PhD課程(USNewsRankで上位30位くらいまで)はここ10-20年ほどで、たくさん入学させ(=合格後に内部で競わせ)、一部の学生に奨学金を出すモデルから、最初の時点で少数を入学させて全員に授業料全額と生活費を5年間支給するモデルへと徐々に変化してきているということを聞いた(ソース:ブラウンの社会学の教授&准教授2人)。よって、できるだけ2010年以降の出願情報を中心に載せている。参考になると思うので、政治学や文化人類学など関連の深い分野の情報(注1)も一部載せている。なお、一部友人のF.Uさんよりいただいた情報も入っている。

注1:経済学は参考程度に二つだけ載せている。というのも、経済学とその他の社会科学(政治学、社会学、文化人類学)の日本からの出願では経験する障壁に量的・質的な違い(学問としての標準化の度合い、日米のネットワークの強さ、毎年の日本からの出願者の数 etc.)があり、経済学PhD出願の情報は政治学や文化人類学ほどには参考にならないと考えているからだ。ただ、私の1年目の経験からだけだが、アメリカでは日本よりも経済学と社会学の壁は低く、日本にいた時よりも交流の機会が多い(来年は経済学のコースワークをいくつか履修する予定)。

2. 出願に関する情報サイトへのリンク(英語)

コーネル大学社会学研究科の選考方法を具体的に説明したページ
ここまで詳細に選考方法を公式HPで明らかにしているプログラムは少ない。大学によってやり方はある程度違うだろうが、参考になる。

ミシガン大学社会学研究科のPhDアドミッションの統計
友人のF.Uさんより教えてもらったページ。ミシガン大学社会学研究科の統計ページ。選抜の厳しさをイメージするのに有効。性別やRaceなど社会的属性別にここまで具体的に公開している大学は少ないだろう。2012-2017の5年間の平均で毎年260人が応募し、12人が入学しているとのことである。ミシガンはトップスクールの一つだが、もちろん蹴る人もいると思うので毎年15-25人程度に合格を出しているのではないかと推測する。つまり、倍率は10-15倍程度ではなかろうか。なお、全在籍者の中で"International"は10%で、これには高校や学部からアメリカへ来ている留学生も含まれると思うので、米国外の大学からの出願にはさらに厳しい戦いだろう(海外の大学からミシガンの社会学博士課程に合格できるのは毎年1-2人以下だろうか)。給与等の経済条件の良い私立のトップ校(特にハーバード、プリンストン、スタンフォード)はさらに倍率が高いだろう(ソース:このリンク)。

インディアナ大学社会学研究科ファビオ・ロジャーズ教授によるPhDの選考委員の視点
これはインディアナ大学の先生がPhDの選考委員になったらどういう視点でアプリケーション書類を読むかを個人的に書いているページである。注意していただきたいのは、選考委員によるばらつきは大きいので、全ての先生がこのようにアプリケーション書類を読むわけではないということである。例えばここでは推薦状が軽視されているが、推薦状をとても大切にする先生はたくさんいるらしい。

・X大学社会学研究科の選考委員を務めた院生が事後的に匿名で選考プロセスを公開したスレ
アメリカの大学院では大学院生もPhDの選考に関わることがある。ここではその選考に関わった院生が赤裸々に内部で何が行われているかを彼女or彼の視点から書いて、質問にも答えていた(もう答えなくなっている)。なお、この院生の書き方から守秘義務には違反していないという認識のようではある。

The Grad Cafe Forum-Sociology
これは全米の大学院出願者が合否情報や出願情報を交換しあうサイトである。虚偽情報や真実か怪しい情報も流れているのでご利用は計画的に。毎年合格が出る頃になると、このResultsのページの中毒になる人が出てくる(出願を経験された方なら意味がわかると思う)。

Sociology Job Market Rumor
こちらは米の社会学界隈の2chみたいなサイト。時に虚偽情報が含まれているので閲覧には注意が必要だが、ためになる情報が載っていることもある。特に教員の異動のような日本では手に入れにくい「噂」が掲載されていることがある。このサイトはアメリカに来てから知ったのだが、出願の時に知っていれば、出願の志望理由書に「(既に異動する可能性が濃厚の)X先生と研究したいのが貴校を志望した主たる理由です・・・」みたいな愚かなことを書くのを回避して合格のチャンスをあげれたかもしれないし、出願校も変わっていたかもしれない。

3. 出願に関する情報サイトへのリンク(日本語)-個人体験記を中心に-

米国大学院生会のHP
この団体は日本全国の大学で毎年夏冬に海外大学院留学説明会を開いている。またニュースレターも発行している。ニュースレターや、各年に各大学の発表の際に配られた資料はこのHPに上がっている。ちなみに私も昨年クリスマスに東大での説明会に出たのだが、その時の資料はここから入手できる。

ブラウン大学社会学研究科博士課程のブログ管理人の出願記録
このブログの管理人(私)がまとめた9つの記事。米PhD課程の出願に関してはいろんな意見があるので差し引いて参考にしていただきたい。出願は2017年冬。

オックスフォード大学政治学研究科博士課程在学中の友人の出願記録
学部の頃からの友人のN.Mさんのブログ。同じ年(2017年冬)に彼は米英の政治学PhD課程に、僕は米英加の社会学PhD課程に出願した。政治学のPhD出願について米英の違いを念頭に13のテーマに分けて詳しく書いてある。とても参考になると思う。

アメリカの大学の文化人類学研究科博士課程在学中?の方の留学指南
オンラインでネットサーフィン中に見つけた文化人類学のPhD課程在籍中の方のHP。もしかしたらもう修了されているかもしれない。中にある情報を総合すると少なくとも2010年前の出願だと思われるが、匿名HPのために詳しいことはわからない。

ミシガン大学でアジア言語・文化研究科博士課程に在学中の方のHP
オンラインで見つけたHP。ディシプリンは文化人類学とのこと。HPの記述によると、2010年代前半に何度か出願を経験されたようだ。文化人類学での渡米はあまり聞かないので、上のブログと一緒に、貴重な情報ソースなのではないかと思う。

ラトガース大学公共政策学博士課程を修了された方のブログ
オンラインで見つけて、出願中に何度か読んで参考にしていたブログ。ブログの記述によると7年の間、合計5回出願にトライされて5回目に合格されたとのこと。現在は無事博士号を取得されて仕事を探されているらしい。正確にはわからないが、最近修了されたということは、出願は2010年ごろだと思われる。諦めずに困難に立ち向かおうとされているところが格好良くて、お会いしたことはないが、とても尊敬している。見習いたい。

ライス大学政治学博士課程を修了された方の出願記録
こちらも、オンラインで見つけたブログ。出願中に何度か読んで参考にしていた。ブログの記述を読む限り、2005年冬に出願されて、修了後にイギリスの大学に無事に就職されたらしい。すごい。

追記(2018.9.08):ウィスコンシン大学社会学部博士課程在学中の友人の出願記録
全米社会学ランキングTop5スクールの一つに2018年から留学される友人のF.U.さんのブログ。あのウィスコンシンモデルのウィスコンシン。2017年全落ちから諦めずに翌年にウィスコンシン社会学部合格はさすがで、その経緯も含め詳しく書いてあるのでとても勉強になる。Statement of Purposeの項目が特に参考になると思う。

-参考(経済学)-
・UCLAのマネジメントスクールで博士課程を修了されたI先生のHP
現在イェールの経済学部の准教授をされているようだ。著者の先生は2008年冬の出願だと思われる。

プリンストン大学経済学研究科博士課程修了されたY先生のブログ
ここの記述は博士課程に出願する方一般の心構えになると思う。著者の先生は2002年冬の出願だと思われる。


4. 社会学の大学院の評価サイトへのリンク


以下で、社会学の大学院プログラムのランキングを紹介する。出願の際には10校前後出される方が多いと思うが、ランキングは出願校を絞る際の参考材料として使うのが良いと思う。特にUSNewsランキングは有名で入学してからも学部内で言及されることがあるだろう。もちろん、あまり細かいランクの違いにとらわれるのは馬鹿らしいが、日本で想像されるよりもランキングは重要で、アカデミアでの就職に大きな影響がある(ソース:このリンク)。目安としては順位で10位、またはスコアで0.4ポイント以上の違いから「実際に意味がある」と捉えたら良いのではなかろうか(1位と7位に有意味な違いはないだろうが、5位と17位には有意味な違いがあるのではないかという個人的な感覚)。

もちろん、どんなランキングにも批判はつきもので、USNewsのランキングもNRCのランキングも色々なところで痛烈に批判されている(ソース:批判の具体例はこちら)。ただし、マートンの「予言の自己成就」のような形でランキング自体が序列をつくるというのも事実で、出願するプログラムがどうランクされているかは一応知っておいた方がいい。ちなみに、日本で報道されるTimes社やQS社などのイギリスのランキングはアメリカの大学院レベルではそんなに気にされていない印象である。

USNewsの全米の社会学大学院のランキング
4年おきに公開されるUSNews社による全米の社会学大学院の格付け。最新のランキングは2017年。全米の大学の社会学学部長と大学院DGSに自分の大学以外の社会学大学院を1から5まで格付けしてもらい、その平均を取った単純な専門家評価だが(詳しい計算手法:このリンク)、とても強い影響力をもっている。このランキングで上位40位以内くらいに入っていたら大方の日本の大学院よりは良い経済的サポートを受けられる可能性が高いとだろうし、教育レベルもどこもある程度は体系化・標準化されているのではないだろうか。

もう一つ重要なのはUSNewsの社会学の下位分野のランキングである。例えば社会階層論社会人口学歴史社会学など分野ごとにランキングがあり、こちらも参考になる。各大学の社会学部長と大学院DGSが「この分野はこの大学が強い」と考えた大学の名前を自主的に記入して、一定回数以上名前が挙げられた大学しか載らないので、下位分野ランキングに大学名が載っている=その大学はその特定分野ではアメリカの専門家の間で評価されている、と考えて良いと思う。

NRCの作成した全米社会学部のランキング
USNewsのオルタナティブとして参考にされるランキングである。NRCとはNational Research Councilという日本でいう日本学術会議のような組織で、そこが主導して作成したランキングである。USNewsRankほど言及されているのをみないが、もう一つの指標として参考にされたい。

トッププログラムへの就職者数等のランキング
全米各大学の社会学PhDプログラム修了者の、USNewsランキング上位10校への就職者の絶対数や卒業生の数に対する比率などを計算したブログ。院生の就職に対する態度に影響する気がする。例えば私がいるブラウンはご覧の通りこのリストにランクインはできている(fig1やfig2を参照)ものの(言い訳だが、このリストに載るだけでかなり良い方)、ハーバード、ミシガン、シカゴみたいな大学に比べると圧倒的に弱いのがわかる。先輩をみていてもR1(注2)ではない大学や民間への就職を目指す人も多い。ハーバードやミシガンのような大学に行くとR1大学での就職一直線という雰囲気が形成されており、実際の能力や業績が高いのとともに、それらをコントロールした上でも残る威信や周囲から得られる期待など「R1大学就職に有利になる何か」があるのではないかと思う(勝手な推測)。アメリカのトップ大学に教員として残ってやろうという野望があるなら、このランキングは特に参考になるだろう(僕もちょっとはあったが、最近は「とりあえず生き残ってPhDを取ろう」と思うようになってきてしまった)。

注2:カーネギー財団はアメリカの大学をいくつかに分類(カーネギー分類)しており、R1大学とは博士課程を授与する大学の中でも特に研究活動が盛んな100校程度を指す。リベラルアーツカレッジを除いて、日本で知られているアメリカの大学はほとんどこのR1大学である。USNewsの社会学ランキングで上位100位以内に入っているのもほとんどこのR1大学で、研究者としてはR1大学に就職することができたらいいのだろうが、皆がR1大学に就職できるとは限らず、R2、R3大学や博士課程を授与しない無数の大学へ行く人々がほとんどのようだ。

2018年2月18日日曜日

米生活ログ(5)自家製カレーと送迎車、授業、人口学会、太った火曜日=Fat Tuesdayとパンケーキ

数週間ぶりの更新。今日は土曜日。来週の月曜は大統領の日(President's Day)で大学が休みで、火曜日も休みなので今日は少し余裕があってデパートで靴の買い物をしてきた。ちなみに、中国人の同期たちは旧正月を祝っている。最近、冷静に考えるとそこまで根拠はないのになぜか落ち込み気味なのだがとりあえず気を取り直していこうと思っている。

近況などを以下の7つの小項目にまとめて書いておく。

(1)自家製カレーと送迎車

まだ東京で趣味だったお菓子作りは再開できてないが、節約のためにカレーやミートソースを時間のある時に大量に作り、何食分か小分けして冷凍保存し、夜ご飯用に大学に持っていって研究室で食べている(最近はほぼ毎日帰りが0時近くなっているので平日は学校で夜ご飯を食べている)。

二日前に作ったカレー。隠し味はダークチョコ、ヨーグルト、
コーヒー。ワインは地元(ロードアイランド州)産。

学校の帰りによく利用しているのはブラウン大学のBrown on Callという送迎車サービスである。PM5時からAM3時までネットor電話で予約をとると市内を巡回している大学のワゴン車が予約した10-20分後には学内の自分が指定した位置(e.g.図書館の前)まで迎えに来て、学外にある自分の家の目の前まで送迎してくれる。土日祝日もこのサービスは使え、しかも無料である。他の学生と相乗りで相手の家が先になることもあるが、一人のことの方が多く、無料で使えるタクシーみたいなかんじである。ドライバーに聞いたところ、常時5-6台がプロビデンスの大学周辺を巡回しているようである。ブラウン大学周辺は高級住宅街でかなり治安の良い地域なのに、さすがは全米のお金持ちの子弟が通う学校だと感心してしまった(この記事によるとブラウン大学はアイビーリーグ8校の中でも学部生の親の所得の中央値が高く、日本円換算すると親の所得の中央値は年2000万円を上回って一番である)。

(2)現代社会学理論とグラムシ

リーディングが膨大で、二週間に一回レポートもあり、かなり大変だが最初思っていたより面白い。今学期はグラムシ、フーコー、ブルデュー、ハーバーマスが2:3:3:3の比率で扱われている。フーコー、ブルデュー、ハーバーマスは日本でも社会学理論の定番だと思うのだが、日本でグラムシを社会学理論に影響を与えた主要人物として捉えている人は少ないと思う。僕も名前は聞いたことはあったが「ヨーロッパのどこかの国の革命家」というくらいのイメージだった。このイメージは間違いではなく、彼は実際にイタリア共産党の主要リーダーで、今学期は彼が獄中から書いた膨大なメモを編集した『Prison Notebooks』と呼ばれているものを読んだ。ただ、アメリカではグラムシは共産党の運動家とともに、社会・政治理論の主要人物として認識されているようで、ブラウンだけでなく、別のアメリカの主要社会学PhDプログラムにいる友人も必修の理論の授業でグラムシを扱ったとのことだった。ここからは推測もかなり入るが、UCバークレーの社会学者でアメリカ社会学会(ASA)や国際社会学会(ISA)の会長もつとめたブラヴォイはグラムシの市民社会論にかなり影響を受けており(彼が提唱している"Public Sociology"はグラムシの言う「有機的知識人」のイメージと少し関係ある気がしてならない)、アメリカの大学院の社会学教育の中でグラムシが読まれているのはブラヴォイの影響も相当あるのではないかと思った。

ちなみに先学期の古典理論ではマルクス、ウェーバー、デュルケーム、デュボイス、ポランニがメインで扱われたが、ポランニも日本ではほとんど扱われない気がする(もちろんデュボイスも扱われないが)。ポランニもグラムシもかなり独特な市民社会論を構想しており、どちらもマルクスを批判してマルクスから距離を保ちながらも、マルクスの視点を多少受け継いでいる。二人が必修となっているのがとても興味深い。

なお、日本は20世紀の一時期に社会科学がマルクス主義の影響を強く受けすぎてその反発から現代ではほぼ完全にマルクス主義とそれに関係のあるものが追い出されているが、アメリカの社会科学は今に至るまでマルクス主義に強い影響を受けなかったがために逆にマルクス主義とそれに影響を受けている思想に寛容で「教養としては知っておこう」ということなのかもしれない、と思った。

(3)多変量解析ⅡとGLM

多変量解析Ⅱの授業は制限従属変数の分析を一般化線形モデル(GLM)の枠組みで習っている。先週まででロジット分析まで進んだ。ちなみに、先学期の多変量解析Ⅰでは基礎統計学を一通りやった後に徹底的に最小二乗法(OLS)を用いた重回帰分析の習得に時間が割かれていた。要するに1学期目でOLS、2学期目で制限従属変数の分析、残り(階層モデル、イベントヒストリーetc.)は選択科目で2年目以降にやる、ということのようだ(聞くところによると、これは他のアメリカの社会学PhDプログラムでも同じようなかんじらしい)。

日本で受けた授業のように「従属変数が二値の時にはロジットモデルにしましょう」と言われてそれだけを習うのと、今学期の授業のようにGLMの一形態として線形確率モデル、二項・順序・多項ロジットモデル、プロビットモデル、ポアソンモデル、負の二項モデル、トービットモデル、へーキットモデル(ヘックマンの二段階推定)を並行して教えられるのとでは理解の深さが全然違う気がした(←シラバスによると操作変数法とかもやるみたいなのだが、正直今の進度で最後まで行くのか不明)。これが社会学大学院1年目の必修の入門授業で、学部生にさえ履修許可されており、彼らが今後大学院に進学すると自分と差がつくのはわかる。遅れを取り戻すために頑張ろうとも思った(ただ、これまで独学をある程度してきたので、正直同期と比べると自分はまあまあできる方だと思う)。

(4)質的調査法と返事がこない問題

質的調査法の授業が大変である。毎回課題で読まねばならない論文が多い上に、どこかで実際にエスノグラフィーをして2週間に1回フィールドノーツを提出しなければならないのだが、なかなか調査希望先から返信がこなく頭を抱えている(二度メール送ったのでそろそろ諦めて他を当たった方がいいかもしれない)。なお、エスノグラフィー重視派とインタビュー重視派の論争があるのをこの授業で初めて知った。どちらかというと前者が後者を批判し(e.g.Jerolmack and Khan 2014)、それに後者が反論する(e.g.Lamont and Swidler 2014)というかんじのようだ。もっと質的調査法にも詳しくなりたい。

(5)人口学方法論はまた別の機会に

人口学方法論は期待通り面白い。これについてはまた別の機会に書きたいと思う。

(6)米人口学会とコロラド州

四月にコロラド州デンバーで開かれるアメリカ人口学会(PAA)の報告を申し込んでいたのだが、結果が返ってきてポスター報告できることになった(口頭報告は落ちた)。口頭報告はかなり倍率は高いみたいで、一緒に出した人の中で通っていたのは1人だけ、ポスターは周りで何人か落ちていたが、8割型は通っていた。

(7)太った火曜日=Fat Tuesdayとパンケーキ

水曜日はAsh Wednesdayで、Lentが始まったわけだが、前日の火曜日にFat Tuesdayというパンケーキを皆で食べるイベントが教会であってちょうど現代社会学理論のレポートを提出した翌日で時間あったので行ってきた。日本の教会だとFat Tuesdayとか一度も聞いたことなかったが、Shrove TuesdayとかPancake TuesdayとかMardi grasとかとも呼ばれ、Lentの期間の断食をする前に行われるイベントらしい。フランスの影響を受けた地域で特にこの慣行が盛んで、ルイジアナでは一大イベントとのことだった。教会暦を含む「制度的なるもの」に対する反発から19世紀初頭に英国で興った教派の枠組みの中で育ったので僕はLentの断食はしたことないのだが、来年はLentをobserveしてみてもいいかもしれないと思った(なお、個人的には4年ほど前からある長期的経験がきっかけで教会暦はとても大事だと思うようになった)。

教会で食べたパンケーキ

参考文献
Jerolmack, C., & Khan, S. (2014). Talk is cheap: Ethnography and the attitudinal fallacy. Sociological Methods & Research, 43(2), 178-209.
Lamont, M., & Swidler, A. (2014). Methodological pluralism and the possibilities and limits of interviewing. Qualitative Sociology, 37(2), 153-171.

2018年1月17日水曜日

米生活ログ(4) 秋学期終了&冬休みもうすぐ終わり!

またまた投稿の間隔が空いてしまったが、簡単に近況報告をしておく。まず、先月12月15日に最後のレポートを提出して無事に1学期目(Fall Semester)が終了した。

ロックフェラー図書館の大学院生自習室からの眺め

冬休み中は12月23日から1月14日まで日本に帰国し、東京と京都でとにかく休んでいた。三日前に日本から戻って来てからは毎日ブラウンのロックフェラー図書館まで来て研究書を読んでいる。ちなみに上の写真は先ほどこの投稿を書きながら撮影した図書館の自習室からの写真だが、写真の右手奥に見える高い塔がある建物はFirst Baptist Churchで、アメリカ合衆国で一番初めに作られたバプテスト派の教会である。Wikiによるとロジャー・ウィリアムズはこの場所で説教していたらしい(ウィリアムズが説教していたのは17世紀だが、今の教会堂ができたのは18世紀)。ブラウンもこの教会と関係が深いようで、歴史的にはバプテスト派の学校である(ちなみにハーバードやイェールは会衆派、プリンストンは長老派、デュークがメソジスト派。日本だと関東学院がバプテスト派、同志社が会衆派、関学や青山学院がメソジスト派)。なお、南部バプテストのイメージでバプテストに神学的に保守的なイメージがある方もいると思うが、プロビデンスのバプテストはいわゆる北部バプテストで南部とは歴史的に一線を画している。塔の後ろにある(重なって見えている)大きな白い建物はロードアイランド州の州議会堂である。

成績も出て、全て最高評価のAがもらえた(ブラウンは他の多くの大学と違いGPAがなく、ABCの三段階評価もしくはPass/Failである)。また、昨日、社会学研究科からの僕のこれまでのパフォーマンス(成績や研究等の総合評価)の中間評価も送られて来て、"good standing"(四段階中で一番高い評価)とのことであったので、来学期も問題なく博士課程を継続できるとのことであった。ちなみに学期ごとに個々の授業の成績とは別に全体パフォーマンスの評価があるのは初めて知ったのだが、こちらの方が重要なようで、good、satisfactory、warning、terminationの4段階評価のうち、satisfactoryを取り続けるとwarningとなり、warningをとると給料(奨学金)が減額され、terminationで退学になる模様だった。なお、ここでの退学はパフォーマンス不良による退学であって、不正行為等によるものとはまた別概念である。ただ、おそらく1年生の段階ではほぼ全員が"good"なのではないかと思う。

来週から春学期(Spring Semester)が始まる。来学期のコースワークはもう確定していて以下を履修する予定である。

SOC 2050 Contemporary Sociological Theory(必修・木曜9時-12時) :現代社会学理論。先学期のClassical Sociological Theoryの続き。担当教員は学部長で、シニアの教授。先学期は主にマルクス、デュルケーム、ウェーバー、デュボイス、ポランニだったのだが、今学期はフーコー、ハーバマス、ブルデュー、グラムシらしい。主に言語的問題(英語読むの遅い)で、先学期は苦労した。今学期も一番苦労しそうな授業である(+一番興味がない)。

SOC 2020 Multivariate Statistical Methods Ⅱ(必修・火曜9-12時  Stata実習 火曜16-17時30分) :多変量解析。先学期のⅠの続き。先学期は基礎統計学を一通り勉強した後、重回帰分析の諸々とそのStataでの応用にひたすら時間が当てられていてとても簡単だった(ただし、日本で受けていた授業よりもしっかり体系化されていて将来社会調査を教える可能性を考えるととても役立った)。まだシラバスが出ていないので詳しいことはわからないが、おそらく今学期のⅡでは制限従属変数を用いた諸々の分析とそのStataでの応用をやるようだ。要するに二項・順序・多項ロジスティックモデルや、プロビットモデル、トービットモデル等を一通り学習するものと思われる。欠損値の処理の方法(多重代入とか)もやるっぽい。先学期に比べると少し重い内容になりそう。先学期も移民研究で比較的有名な教員が教えていたが、今学期は移民研究でさらに有名な教員が教える。

SOC 2210 Qualitative Methods(必修・月曜14-17時) :質的分析の方法論を教える授業。体系的に質的分析の方法論を勉強できた記憶がないので、期待しているが、まだシラバスが出ていないので何をするのか不明。リーディングがたくさんある模様で、若干不安。担当教員は若手の助教。

 SOC 2230 Techniques of Demographic Methods(選択必修・火曜13-16時) :人口学の分析の技法を教える授業。僕はブラウンの人口学研究センターの研修員としての身分も持っているので事実上の必修となっている。生命表の作り方とか、将来人口推計の手法等を実践的に学ぶことになる模様。一番面白そうな授業である。担当教員は先学期に多変量解析Ⅰを教えていた移民研究のシニアの教授。

以上、近況と今学期の予定。また時間ある時に更新します!

2017年11月19日日曜日

米生活ログ(3) 徒然なるままに

最近更新が途絶えていたのだが、生存報告。ひたすらコースワークのリーディングをこなしていく毎日である。最近の出来事や思っていることを徒然なるままに箇条書きで以下に記しておく。

・日本から送った荷物(箱2つ)が届かない。8/15に東京から船便で送ったものである。3ヶ月経ったので、さすがに痺れを切らして日本へ電話して調べてもらったところ9/26に米に到着しているが、その後の行方がわからないらしい。調査請求をする予定である。専門書がたくさん入っているので紛失となるととても残念である。あないみじきことである。

・コースワークの面白さは人口学>多変量解析>社会学諸分野のサーベイ>古典的社会学理論。多変量解析は教員が数学的な解説も丁寧に加えてくれるのでこれまでふわっとしか理解していなかったことがよりしっかりと定着してくる気がする。Waiveしなくて本当に良かった。

・中間テスト、中間レポートのシーズンが終わり、期末に向けて一直線。中間テスト、中間レポートは一応全て問題なくPassした。社会学の諸分野をサーベイする授業の中間レポートが担当教員に気に入ってもらえたようで、とても肯定的なコメントがしてあり、嬉しかった。一番苦しんだのは古典的社会学理論の中間レポート。それだけで丸三日費やし、他の授業の課題がおろそかになるほどだった。マルクス、デュルケーム、ウェーバーをそれぞれ比較しなければならなかったのだが、英語で彼らを読みこむのにとてもとても時間がかかったからである。今週からはデュボイスという黒人社会学者に突入なのだが、原典が英語で翻訳ではないことや、時代が比較的近いこともあり、とても読みやすくて嬉しい。

・トランプ政権下で与党の下院共和党が大学院生の学費免除を課税対象から外す特別措置の撤廃を検討しているらしく、当該税案が下院を通過してしまった。これが来週以降に上院も通過するとアメリカの高等教育は大打撃を受けることになる。特にアイビーリーグは名目上の学費が高い(年5万ドル前後が学費として計上されて、PhDのほとんど学生は自動的に全額免除される)。これまでは生活費として支給される年3万ドル程度だけが所得とみなされ課税されていたのだが、下院共和党案では所得とみなされる額が8万ドル(=5万+3万)に増えるので、課税額が大幅に増えそうだ。1ドル=100円として計算すると、これまでは年間所得300万円として課税されていたのが、一気に年間所得が800万円あるものとして課税されることになるということだ。上院でなんとか修正されることを願っている。

・所属する教会を探して2ヶ月ほど日曜日ごとにいろいろな教会の礼拝に参加してみた。もちろん、アメリカのキリスト教のことをもっと理解したいという知的欲求も背景にあった。米国聖公会2つ、米国長老教会(PC(USA))、米国合同教会、クエーカーの集会、Non-Denominationalな福音派の教会2つである。ちなみにクエーカーの集会はかなり熱心なクエーカーの大家さん夫婦に誘われて出席した。大家さん夫婦はアメリカ国旗への宣誓は偶像崇拝だと考えているようだった。日本のキリスト教の歴史的文脈では珍しくない考えかもしれないが、アメリカだとかなり珍しいと思われる。さすがクエーカーである。

結局、最近は家から一番近い長老教会に落ち着いている。黒人の牧師先生だからか、黒人の方が多い。またブラウンの教職員・学生も多く、今日は昼食時にブラウンの歴史学の教員が隣の席に座っていた。私はプロテスタントのとある教派の家庭で育ったのだが、多くの若い世代と同じく、祖父・親世代のようには特定の教派への拘りを強くはもっていない(拘りを持ちたいと思うことはあるが、強い理由が見出せない。)。もちろん、自分のパターンと真逆で、Non-Denominationalな教会(特定の教派に拘らない福音派の教会)で信仰をもったが、現在ではかなり明確に改革派神学を支持しているというブラウンの中国人大学院生と仲良くなった。プロテスタントの若い世代が全て教派に拘っていないというわけでもない。




2017年9月24日日曜日

米生活ログ(2)コースワーク開始とその他諸々

入学式の次の日の9月6日からコースワークが開始され、現在は3周目に終わったところである。

1. オフィスの様子


オフィスの机
自分のオフィスは社会学部の建物の一階にあり、他3人のPhD1年生とシェアしている。机はこんな感じで仕切られている。勉強・研究はなるべく仕事と割り切って、オフィスでするようにしたい(ちなみに本日は休日だが、午後から大学に来て課題を終わらせる予定)。

PhD1年目は全員このようなオフィスと机が社会学部にあてがわれるが、2年目以降はそれぞれの社会学部以外の所属先(人口学研究センターなど)にも机がもらえて、そちらに移る人も多いらしい。

2. 同期


ブラウンの社会学研究科は通常毎年約10名以下の入学者なのだが、今年は15名の入学者がいて、ここ数年では最大級のコーホートとのこと(毎年200名程度が出願、20名程度に合格を出して、約10名が来るようなのだが、今年は想像以上に蹴る人が少なかった模様。おそらく今年からFundingの条件が大幅に改善したことが関係している)。

留学生は自分を含めて7名いて、メキシコ1名、中国3名、インド1名、日本1名、ケニア1名。ただ、7名中5名が学部か修士で英米の教育機関(MIT1名、コーネル1名、LSE2名、シカゴ2名)を出ていて、純粋に非英語圏の学位持ちなのは僕ともう一人の同期(学部も修士も中国人民大)だけである。留学生の同期の英語力だが、一番英語で苦しんでる同期でもTOEFL110は持っていたので、英語でのCut offは大学公式HPに書いてあるものよりもかなり高いところでなされている気がした。

全体では学部卒と修士卒で半々だった。年齢は22から30代前半くらいまで。修士課程を経ないで学部卒で入学してきているのはハーバード、コーネル、コロンビア等のアイビーリーグ卒の学生だけだったのも印象的だった。やはり大学ブランドは大きく物を言うらしい。


3. 履修登録決定


履修登録が決定した。基本的には1つの学期には4つのコースの履修が求められる。ブラウンの社会学PhDプログラムでは1年目は秋学期も冬学期もほぼ必修で固められており、それぞれの学期に選択できるのは1つだけである。経済学PhDでは1年目は全て必修らしいので、それに比べると自由度が高い方かもしれない。ちなみにコースは以下の通り。


【必修】
SOC2040 Classical Sociological Theory(社会学の古典理論・必修)

月曜午前9-12時。名前からわかる通り、社会学理論の古典を学ぶ。課題文献が毎回膨大で、しかも古典(17c-19c末くらいまでが中心)で、かつ毎回リアクションペーパー提出の必要があるので今学期最も苦しめられるコースだと思う。とりあえず先週まではロックやホッブスやスミス、今週はひたすらマルクスを読んでいる。予習に予想される時間は毎週8時間くらいだろうか。再々来週くらいからはデュルケームのようだ。

教員は3年前にブラウンに来た若手のAssistant Professorで、経済社会学が専門。

SOC2430 Fields and Methods of Social Research(社会学研究の分野と方法・必修)

月曜午後2-5時。位置づけがイマイチわからなかったのだが、要するに社会学の各下位分野をサーベイするとともに、主要な方法論をざっくりとつかませるための演習らしい。例えばある週は「組織論と官僚制/Small NとMiddle N」、次の週は「家族と再生産/クロスセクションデータからパネルデータへの展開」みたいな感じで進んでいく。リーディングの量は圧倒的に多いが、古典と比べると、読みやすい論文(1960年代以降から現代)が多いので苦痛ではない。

教員は結構有名でシニアな歴史社会学のProfessor。かなり実証主義的なマインドセットの先生で、手法も計量に寄っていて、おそらく歴史社会学者の中では珍しいと思う。長らく前任校で政治学とのdual appointmentを経験している模様。

SOC2010 Multivariate Analysis I(多変量解析I・必修)+Stata Lab(Stata実習)

火曜午後1-4時と木曜午後6-8時。このコースは多変量解析の基本(回帰分析の諸々)と統計ソフトStataの入門的実習である。なお来学期のⅡはもう少し高度になって、パネルデータのモデリングとかもやるようだ。かなり初歩的な演習なので免除申請しようか迷ったが、これを免除申請すると他のコースを取らなければならなくなり、リーディングが大変なことになるので思いとどまった。簡単だと思っているのは自分だけではないようで、ほとんどの同期がStataにもある程度習熟しているし、授業の内容もほとんど知っているという感じだった。LSEで社会調査法の修士号を取得している同期はさすがに免除申請していたが、シカゴで社会学修士をとっている同期などは大人しくもう一度受けることにしていた。

教員はシニアで移民の人口学の分野では有名なProfessor。授業中に使うデータがアメリカの移民研究者が用いるデータばかりなのでそこはかなり勉強になる。

【選択必修】
SOC2080 Principles of Population(人口学理論・選択必修
火曜午前9-12時。人口学理論の基礎について学ぶコース。ブラウンの社会学部は伝統的に社会人口学が強みなので、今後は人口学アプローチもしっかり学んでおこうと思って履修している。人口学の分析方法の細かいことではなく、社会学における人口研究のざっくりとしたサーベイで、来学期の人口学Methodの授業で分析方法を学ぶとのこと。

教員は中堅のProfessorで、人口学が専門。アフリカの出生率の研究をメインにしている模様である。






2017年9月16日土曜日

米生活ログ(1)新居での生活と入学式まで

これから米国での生活の定期的な記録をつけてみることにした。ブログなのでパーソナルなことはあまり書けないが、覚えておくためにも良いと思っている(自分のために日記を書いてもいつも三日坊主に終わるので)。

1. エジプト学ハウスでの生活


新居
新生活は落ち着いて来た。ブラウン大学から北に歩いて15分くらいの高級住宅街の大きな一軒家の三階の一部屋を間借りしている。家をシェアしている他のメンバーは7人ほどいて、中国人のおじさん一人を除いて、全員ブラウンのPhD課程の留学生(オランダ人1名、イタリア人1名、スペイン人1名、ロシア人1名、イギリス人2名)である。そして、自分と下の階のイギリス人女性(現代文化・メディア学専攻)以外はエジプト学・アッシリア学・考古学専攻の博士課程の大学院生であった。ちなみに家は二世帯住宅のような構造になっており、大家さん夫婦も住んでいる。旦那さんの方がブラウンの古代史専門の司書さんで、息子さんがブラウンのエジプト学・アッシリア学部で博士号を取得された繋がりで、この家にはブラウン大学のエジプト学、アッシリア学、考古学の博士課程の学生が住んでいるとのことだった。リビングはエジプト学とアッシリア学関連の本で溢れており、会話もエジプトの碑文の解読とかの話題が多い。ちなみに先日庭で開催されたハウスメイトのBBQでは近所のおじいさんだと思っていたゲストがアラン・ジェームズ教授という古代エジプト研究の世界的権威らしかったので、エジプト学者にとっては素晴らしい環境だと思う(裏をとるためにwikiで調べたら6ヶ国語でエントリーがあり、国際エジプト学会の元会長だったので誇張ではないようだ)。

2. オリエンテーションとメール作法ワークショップ


到着後すぐに参加必須の留学生向けオリエンテーション(8/24-25)と米国での生活に関する参加自由のワークショップが入学式前に数日間(8/28-8/31)ほどあった。東大では考えられないほど丁寧なオリエンテーションで、2日間毎日朝ごはんと昼ごはんが提供され、全博士課程の留学生が集められて、様々な説明を受けた。色々驚いたが、夜は電話すれば大学のシャトルがキャンパスの現在地に迎えに来て、各自の家の前まで送ってくれること、大学の保険センターは無料で、留学前に日本で接種した数万円分の予防接種も全て無料だったこと(日本で接種したのを激しく後悔)、図書館の本が無制限に借りれ、延長も何回でもでき、かつ他のアイビーリーグ(ハーバード、イェール等)の図書館の本も無料で取り寄せられることなどである。ワークショップは細かいものが多く、その中でも米アカデミアにおけるメールの作法に関するワークショップは勉強になった。かなり細かい暗黙のルール(e.g. メールで名乗る時はI am...ではなく、My name is...がベター)や、アジアからの留学生がよくやる「先生を褒める挨拶」や「謙遜する表現」がマイナス効果になることなどを注意された。例えば以下のような文章は不適切で、アメリカのアカデミアでは真摯(genuine)ではないと受け取られるらしい。

不適切事例1:I appreciate your wonderful and amazing classes.
不適切事例2:You are a kind and generous professor for taking time to meet with me.
不適切事例3:I humbly request that you meet with me to discuss my questions.

米で礼儀正しくコミュニケーション取るためには、褒めたり、謙遜したりするのではなく、wouldやcouldを多用せよとのことであった。

3. 入学式とポカノケット族


ブラウン大学入学式の様子
ポカノケット族の抗議
入学式(Convocation)はブラウン大学の芝生で9/5に行われた。Van Wickle Gateという入学式と卒業式の日にしか開かない名物の門(東大でいう赤門)があるのだが、そこから全員が入場して、Main Greenというブラウン大学の中心にある芝生の広場で学部、大学院の入学生全員が一度に集められて執り行われる(東大は人数が多すぎて学部、大学院の入学者全員が一度に集まれる場所などないので新鮮だった)。

大学の外ではブラウン大学の土地の領有を主張し、大学の土地の一部を占拠中のネイティブアメリカンのポカノケット族が抗議していた。総長演説ではポカノケット族の抗議を民主主義社会における平和的なデモ行動の良い事例として取り上げていて、対応のうまさに関心するとともに、少し上から目線だとも感じた。

以上、最初の10日間ほどのダイジェスト。また数日ごとに記録をつけておきたい。